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プロローグ:始まり

遅筆な為不定期投稿となる事をご理解の上、宜しくお願い致します。

――2020年8月12日正午――


「何時頃こっちに来るの?」

「明日の昼にはじーちゃんの家に着く予定だよ」

「私もお父さんもおじいちゃんの家にもう着いてるからあんたもちゃんと来るのよ!」


長野謙信(17歳)は高校の夏休みを利用して実家の東京から自転車で祖父の家まで一人旅をしていた。


「今国道402号のコンビニを出る所だから……プツッ……」

「プップッププーーーー」

(あれ?電話切れちゃったよ。もう一回掛けてみるかな。)


スマフォを見るとスマフォの電源が切れている。

(電池の充電80%以上あった筈なんだけど……。)


謙信はスマフォを手に持ったまま、ふと目の前にあるコンビニに目を向ける。店内は暗くなり閑散としていた。店内に入り、店員に電気が消えている事を尋ねると店員も何が起きているのか理解できていない様だ。


「すいません。携帯の充電できますか?もしくは充電器売っていますか?」

謙信も何が起きたか理解していない為、とりあえず母に連絡を取ろうとしていた。

「申し訳ありません。ブレーカーが落ちたみたいなので少しお待ち頂けますか?」


中年の店員は待つように言ってからバックヤードに入りブレーカーを確認しに行った様だ。謙信はどうしたものかと周囲を見ていると国道に乗用車やトラックが止まっている事に気づいた。(あれー?車が皆、止まってる……。)


バックヤードにいる店員に一声かけてから国道に出て様子を見てみる。道路の上で車が完全に停車している。それも一台では無い……。道路上にいる全ての車が不自然に止まっていた。事故か何かで止まっているのかとも思った。

社内ではクラクションを鳴らす――音は出ていない――様子やスマフォを見ている運転手の様子が窺える。


「お客さーん!お客さーん!」


先程の中年店員から呼ばれコンビニに戻ると店員が独り言を言いながらスマフォの充電器をいくつか持ってきた。


「ブレーカー落ちてなかったよ。何かあったのかねぇ?とりあえず、充電器はいくつかあるから選んでください」

「あ、ありがとうございます」


渡された充電器の種類を確認して自分のスマフォに対応している物を選びレジに置いた。だが、買おうとして財布を出した時にレジを見ると、勿論レジも機能を停止している。謙信は充電器を買うのを止めた。

(この状況可笑しいよな?スマフォは電源落ちるし、車はみんな止まってるし……。只の停電じゃないよな……。)


利発と呼ぶほど頭の回転が速い訳ではないが、ここ数年続く災害で何をするべきか日常で学んでいた謙信は食料と水を買ってから祖父の家に向かう事にした。そうなると無駄使いは極力避けなければならない。


「すいません。レジ動いてないみたいですけど買い物して平気ですか?折角出してくれたのに、すいませんが充電器どれも使えないみたいなんで返しますね」

「買い物?えぇ、かまいませんよ。充電器が使えないんですか。今あるのはそれだけなんで申し訳ありません。此方で戻しておきますのでレジの上に置いておいてください」


店員に充電器を返した謙信は買い物かごを持って水やレトルト食品、インスタント食品をどんどん入れていった。会計中に背負っているリュックの中からお土産用に持ってきていた大容量のスポーツバッグを出し清算が終わったものから順番に詰め込んでいった。


「全部で14530円になります」

「え?あ、はい(うわぁ、土日バイトしといて良かったー。)」


謙信は突然の大出費に驚きはしたがバッグの重さに納得し支払いを済ませてから急いで祖父の家に向かう事にした。


国道は車が一台も走っていなかった為、予定より早く翌日の昼前には祖父の家に着く事ができた。


ガラガラッっと音を立て、勢い良く引き戸を開け声をかける。


「ただいまー!」

「おー!やっと来たか、心配してたんだぞ」


謙信も不安な気持ちを抱えていたが両親と祖父母も本当に心配していたようだ。居間に上がりコンビニで買ってきた物を渡してから家族で机を囲み、何が起きているのか話あった。


結局、分かった事は何一つない。分かった事は両親の乗ってきた車のエンジンがかからない為、直ぐに東京に帰る事はできない、と言う事だった。


「とりあえず今日は謙信が買ってきてくれた食料もあるし、明日は様子を見て明後日の朝から俺と謙信で役所の方に行ってみようと思う」

「そうねぇ。隣の宮下さんに、さっき電気の事を聞いてみたけど何も分からなかったし、そうした方が良いわね」

「了解。大きな災害とかじゃなければ良いけど……。スーパーとか街に行った時に寄った方がいいよね?」

「そうだな。水は井戸があるし米、野菜はなんとかなるから塩とか砂糖とかは無駄にはならないだろうから少し買っておこうか。謙信は旅の疲れもあるだろうし今日は風呂入ってさっさと寝ろよ」

「はーい。(ってかスマフォ使えないから何もやる事ないな………。)」


大規模停電から二日目は安全を考え家で待機をしていたが何も起こらず、何も分からずに時間だけが過ぎていった。


大規模停電から三日目に謙信と父は、予定通り西区の区役所から中央区の県庁、市役所まで行ってみたが、何処も真面に機能すらしていなく何の情報も得る事が出来ずに結局スーパーで調味料や肉などを買って帰って来た。


 祖父の家でお茶を飲みながら謙信と父は今日の成果を家族に報告していた。


「全然ダメだったねー」

「謙信の言う通り何にも分からなかったよ。それ以前に役所はどこも機能すらしてなかった。(溜息)」

「困ったわねー。東京に帰るのは当分無理そうね……」


夕暮れ時が近づき小さな庭がオレンジ色に染まり始めた頃それは突然やってきた。





ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ






物凄い地響きの音が数十秒程続いただろうか、地の底から何かが這い上がって来るような突き上げる揺れが来る、家中の物がひっくり返る。


「ガシャーーン!ガタン!ガガガガ!」


父は隣にいた祖父母を守るように被さり、母は謙信を守るように被さった。


それは数十秒いや数分、天地がどちらか分からなくなる程、脳が麻痺し呼吸さえ上手くできない。実際の震動時間以上に長く感じた揺れがやっと収まり始める。


「大分、落ち着いてきたな。皆大丈夫か?」

「……あ、あぁ凄い揺れだったのぅ」

「ま、まだ揺れてる気がするよ………」

「クラクラするわね………」

「なんとか皆無事で良かった、家の中は危ないかも知れない。一旦庭に出よう」


揺れが治まり安否の確認をしていた時、祖父が鬼気迫る顔でテレビに向かってリモコンを向け電源を入れようとしていた。


「ふー。凄い揺れだったな……まずいっ!くっ…テレビ。ダメか!」


しかし、テレビは点かなかった。突然、立ち上がって玄関を出ていく祖父を家族で追った。家の外は電柱が傾き、屋根瓦が其処ら中に落ちていた。


先が開けた場所で立ち止まった祖父は南西に向かって立っていた。


「父さん、どしたんだ突然。まだ安全とは言えないぞ?」

「原発は。だ、大丈夫だろうか?」

「原発?柏崎か?!ちょっと見てくるからお前達は庭にいろ!」


見てくると言い残し父は走って行った。近所の安否も大事だが最寄りの原発の安否も同じ位に大事だと思うのは祖父が新潟県民だからかも知れない。

その後、余震が何度か続いたが父は無事に戻ってきた。





原因もわからない大停電は後に言う『 暗黒時代 』の始まりであり、三日後に起きた地震は人類の生存競争の始まりであった。


本編に入る前に過去編から始まります。

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