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それでも、彼は憧れる  作者: 鋼鉄製ハンマー
ヒーローの定義
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敗れし恋愛と犯されし贖罪 その四

お久しぶりです。

 それから一時間ほど捜索したのちに、何やら疲れた様子の立華を見つけることができた。


「ああ~!立華っちいた~!大丈夫?怪我無い?ごめんね守ってあげれなくて次こそ、絶対守っちゃうからね!」


 採苗が告げたのはあまりにも軽やかな重い覚悟の言葉であった。


「申し訳ありません、お嬢様。桃井家の執事でありながら、この体たらく。なんとしても、次こそお守りいたします」


 隆司が告げたのはあまりにも重苦しく固い信念の言葉であった。


 そんな二人に対照的に疲れた様子ながらもどこか晴れ晴れとした立華はこう告げた。


「いえ、わたしには何の問題も無いですよ。それに、守るにしたって、肩ひじ張らない方が結果が出るはずでしょう?なので、隆司さん、採苗もう少し力を抜いてください?これは、命令ですよ?」


 きっと、ここだったのだろう。最初からずっと隠されてきたヒビが露見し始めたのは。




~~一か月後~~


 この一か月間、三人は遭難セットに入っていた食料と店にある長期保存用の食べ物等を食べてしのいでいた。拠点はあまり動かさず、国の救援を待つ方が確実だと考えたためである。しかし、当然、救援を待つにしても、救援を求めていることは示さないといけないため、可能な限り広域にSOSを求めていることを報せるマークを記していった。


 しかし、運悪くそれらが功を奏することは無かった。


 当然、その間にも、怪物たちは襲い掛かってくる。最初の内は隆司が討伐していたが、最近では主に採苗がその役割を担っていた。


 採苗は自分の能力は四つの能力が組み合わさったものだと偽っていた。


 一つは軽い身体強化。一つは少量の水の操作。一つは空中に強度の低い透明な板の生成。一つは能力の解析。


 実際には大量の怪物から能力を奪っているため、それよりも遥かに強いのだが、父を警戒しての事だった。


 能力の解析(能力を一瞬だけ奪って、自分に能力の権限が渡る前に返してるだけ)を使って、立華の能力を調べたところ、どうやら「自分の能力を限界まで強化させる能力」を持っているようだった。


 名称は萌芽(ジャーミネーション)昇華(オブベルセポネー)


 採苗は隆司の能力の名前やほとんどの怪物の能力の名前が端的でそれだけでおおよその内容がわかるものばかりであったのに、不自然に長くそれだけでは能力がどのようなものかわからないという事に違和感を持った。


 ……それでも、その日まではなんだかんだでうまくいっていたのだ。


 その日、立華は再び行方不明になってしまった。


 それは黒い怪物が突如として現れた事に端を発した。


 その怪物は不意打ちとは言え一瞬で、採苗と隆司を気絶させてしまったのだ。


 唯一無事であった立華は当然のことながら、怪物に目を付けられ、即座に逃亡を選択したのだ。


 それからは目覚めた二人が焦燥に駆られつつも、立華を捜索することとなった。


 前回とは異なり今回は夜になるまで、二人は立華を見つけることができなかった。


 立華と再会した二人は事情を聞き、一先ずは納得し、夕食を摂って、休眠を取る事となった。



~~その日の深夜~~


 立華の影に何かが落ちる。それはゆっくりと立ち上り、立華を包み込んでいく。


 しかし、そこで立華が気づき、叫んだ。隆司と採苗はその悲鳴に体を起こし、すぐさま駆け付ける。見てみると、立華を黒い何かが覆い包んでおり、中で立華はもがいているようだった。


 隆司はすぐさま黒い何かを手刀で切り裂こうとしたが、それはどうやら不定形のようでまるで水を殴ったかのように感触が無い。


 採苗は水を操って黒い何かと立華の間に入り込ませ、引きはがそうとしたが、当たり前のように水だけを外に出されてしまった。


 それからも様々な手を講じたが、どれも成功することは無く、その黒い何かが自ら立華から離れるまでどうすることもできなかった。


 二人は息苦しそうな立華に駆け寄り、応急処置と再度の攻撃に備え、構える。


 すると、黒い何かはゆっくりとその身を変えていく。


 黒は少しずつ、白や赤、肌色に変色していき、スライムのようなそれは徐々に自立していく。


 白は少しずつ固体のように振る舞い始め、その配置を人の骨組みと相似にしていった。


 赤は元と同様に液体のように振る舞うが、臭いを放ち、人の神経系や循環器系、消化器系等を生成していく、それらが作られたのちに、筋肉のように骨へと纏わりつき始めた。


 肌色はそれらを包み込み、静かに静かにそれを明確に人足らしめようとしていた。


 先ほどの人というには余りにもグズグズな姿を見ていなければ、その完成した姿を多くの人は愛でていただろう。


 だが、今この場にいるのは残念かな。先ほどの未完成を見た者のみである。彼らには、今目の前に完成した主人の模倣を異質な目でしか見ることができなかった。


「あー、あー、ふむ。一回変身したことあるからな。ちょっと能力が変わったせいで、手間取りはしたけど、かなりスムーズに変身できると。まぁ、もう変身することは無いんだけどな。えっと、二人とも、俺の事を見逃す気ってあったり?」


 目の前のそれは主人を苦しめた。

 目の前のそれは主人を苦しめた事を謝らない。

 目の前のそれは主人を愚弄するかのような言動をとっている。

 目の前のそれは主人以外の人間にも同様の苦しみを与えたらしい。



 目の前のそれは怪物である。

この過去語りで真に語りたいところになってまいりました。

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