麦茶覚醒 其の三
長めです。
とても…眠い…です…。(´Д⊂ヽグゥ…
〜麦茶サイド〜
よし、じゃぁ、作戦を開始しよっか。まず、スパークプラグとはエンジンを着火する為の部品なんだ。同じ役割にグロープラグが使われる物もあるけど、2つの違いはスパークさせて火種を作るか電熱線で高熱にして発火させるかで結果は同じだけど、かなり過程が違うんだ。今は憧さんのバイクの点火プラグがスパークプラグであってくれた方が作戦がより楽になってくれる。
まず、スパークを連続で発生させる。それで奴が感電した素振りを見せたら、超獣化したのは樹木ではなくその中の何かってことになる。感電しなかったら、超獣化したのは樹木って訳だ。
そこから、それぞれの場合ごとに決めた作戦で俺も憧さんも動く。
今、俺は奴を広い場所に誘導する必要がある。一本道だと当然、自分が動ける場所が少なくなっちゃうし、討伐後に奴が光の粒子になる前に倒れるだろうから、そのスペースも確保したいっていうのが、理由かな。だから、ゆっくりでも確実に少ない被害で誘導する。
場所は近くの横断歩道が三角形を形作っているポイント。そこに向かうまでも大きめの道路を通る。奴の攻撃を回避するためのスペースを取るためと建物への被害を減らすためだ。
俺の麦茶は少なくとも一つ目の大男を体勢次第で転ばせる程の水圧を出せる。
頑張れば自身の体を反作用で浮かせれた。流石にその水圧をずっとは無理だから、移動したい方向とは逆方向に麦茶を噴出させて機動力を上げるという使い方をする。速度は時速70km程は出てると思う。
この機動力で奴の攻撃を避けて、移動する。できるだけ建物に攻撃がいかないように動いてはいるけど。全てをあてないように動くのは到底不可能なわけで。建物にあたった際には瓦礫が飛んでくるので、そっちにも気をつける。
ときどき、蹴りを入れたりはしているが、こちらの脚が痛くなるだけで奴にはダメージはいってなそうだ。
だけど、ダメージが与えられないだけで回避はそこまで難しくなく少し余裕があった。憧さんが来るまでの時間稼ぎと移動が今の仕事だしそれだけでもできれば上等だろ。
……麦茶だけど、まるで元から俺の体の一部だったかのみたいに自然に使える。更に多分だが、麦茶を出している際中は若干だけど、身体強化が付与されている気がする。そんな考え事ができる程度には余裕だった。
……余裕だと思っていた。だから、俺は油断したのだろう。
唐突に鋭い攻撃が5発同時に放たれる。3発はかろうじて回避できたが、1発は頬に傷を作り、
もう1発は腹を激しく打ち据えた。
「カッ……ハ……」
その後もこれまでと違い間を置かずに3本の根を地面から持ち上げこちらにゴウッという風切り音と共に振るった。
その時、俺は走馬灯のような物を見ていた。
――――「さっくん!あーそーぼ!」
……さっちゃんを置いて逝けない。
――――「戦うにしても二人でに決まっているだろう」
…憧さんと戦うんだ。あの人は何でも一人でやろうとする。緊急事態の誘導も、現状を飲み込めない青年の説得も、死ぬ可能性の方が高いような戦闘でさえもあの人は一人でやろうとした。
誰かがすぐ側に居たのに力を借りようとしなかった。
そんなの寂しすぎる……。何様だと言われかもしれない。けれど、俺はそれが嫌で嫌で仕方なかった。
そんなエゴとも言える動機だったけど、あの人を変える事ができた。あの人から頼られる事ができた。あの人は知らないだろう。
「麦茶、麦茶をくれ」
そんなダジャレみたいな言葉に俺がどれだけ喜んだか。
たった一日だけの付き合いだったとしても俺はあの人がどれだけカッコイイのか知った。前は自分で否定したけど、今なら胸を張って堂々と言える。憧さん、あなたは誰になんと言われようと俺の中でだけは
英雄っす!
そんな人の信頼を裏切る?俺が?あの人に一人で戦わせる訳にはいかない。たとえ、俺が死ぬとしても、それは今じゃぁない。あの人が俺以外の誰かを信頼したのを見届けたときだ。
さぁ、起きろ。麦畑茶起。その名の由来は何だ?茶柱がどんな状態からでも起き上がる。つまり、どんな時も諦めず幸運を掴む!そうだろ!
〜視点変更・第三者サイド〜
麦茶は目を覚ます。
周囲からは、ただ瞬きをしただけに見えただろう。その在り方は、一瞬だけとはいえ、二人分の感覚を完全に制御するあの能力に余りにも酷似していた。
〜視点変更・麦茶サイド〜
目を覚ますと異常なまでに自身の身体が重い。そして、数瞬後に気づいたが、目の前に止まったた状態
の動く樹木がいた。
この状態がいつまで続くかわからない。すぐに根の射線から脱しなきゃマズい。
麦茶・バスター!
特に叫びに意味はない!まぁ、世界が止まって口もまともに動かないから心の叫びだけどな!
世界が止まってても麦茶は出た。出せる限りの最大出力で麦茶を噴射!世界が動き出した瞬間に動けるように!
て、あれ?身体が動いた?
……てことは、まさか、止まってんじゃなくてスローになってるだけ?しかも、この状態で動くとか水圧ヤバッ!
もう少し動いて避難したらと、奴に最大出力で麦茶を噴射ぁ!
そして、何の前触れもなく世界遅滞が終わった。麦茶の最大出力がガクッと落ちた気がした。噴射をやめる。
うわ!派手に抉れてる!つよ!
よし、まだ腹は痛いけど、それは奴もだ。まあ、木に痛覚あるかは知らんが。
あと少し移動させたい。それまでの辛抱だ!ガンバレ!俺!やれるゾ!俺!
集中する。俺は動物だから、痛くて動きが鈍るけど、奴が植物だったら、痛くて動けないなんてことにはならないんだ。それ以前にさっき俺、油断を突かれて大ピンチだったんだ。余裕かましてんじゃねぇぞ。
ふぅ~。うし、行くか。もしかしたらの期待も込めて、最大出力麦茶砲を奴の身体の抉れてる部分にぶつける。……あの出力だったら、技名つけなきゃ失礼ってもんでしょ。
……流石にあの出力が常時打てるようになるってのはないか。チート過ぎるし。
奴の前に躍り出て、中指を立て言う。
「ラッキーパンチが決まって嬉しかったか?バーカ、この通り、効いてねえぞ!」
嘘だよ!多分、肋骨一、二本イったと思ってビクビクしてて、この麦茶流高速機動も少し、いやかなり辛くて!意味がないと分かっていながら僅かな可能性に賭けて煽って!少しでも早く終わらせようとしてる!だけど、もう少しなんだ。もう少しであの交差点に着く!
あと少し!その時に肋骨が痛んだ。
「グ、グゥ……!」
こんな時にッ!
それと同時にこの一瞬の隙を好機と見た動く樹木が大量の根を一気に動かし、勝負を決めにかかる。その時、俺も叫ぶ。
「俺が痛い程度で動けねぇとか思ってんじゃねぇ!」
全力でもって、麦茶を噴出する。痛みで目が涙で滲む。顔が歪む。呼吸が荒れる。それでも、目を見開いて冷静に攻撃を避ける。16発、避けた。だが、まだ一割も奴は放っていない。まだだ。思考を加速しろ。さっきの世界に至れ。アレのキーはなんだ?わからない。ないものねだり程無駄なことはない。
集中しろ。ノイズを排除して、無駄を殺せ。究め、極め、窮めろ。限界は超えられない。ならば、100%に至れ。奴の攻撃を掠らせろ。出血を限界までしろ。
そして、二人で戦うんだ!!
その時、パンッと乾いた音がして、奴の動きが止まる。世界がスローになったわけではない。音源を見る。
はは、
「やっ……と……す……か……」
そこには、四茅野憧成がいた。身体から力が抜け、視界がブラックアウトした。
麦茶、
キミがヒロインだ‼(違います)
2020/06/08 全体的な表現を修正