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それでも、彼は憧れる  作者: 鋼鉄製ハンマー
間章 超能躯洋水族館
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『男女が二人で遊べばデート理論』は一部の女性に嫌われるのでやめましょう!

お待たせしました。先週は死ぬほど忙しかったので、投稿ができませんでした。

 ……つい先ほど自分が吐いた告白まがいの発言に、思考が一瞬の間だけ停止する。


 ほんの数瞬の思考で聡明な彼女は私の意図を汲んだのか、慌てたように返答した。


「あー、もしかして、今後の事かな?ほら、わたしは憧成のおかげであの家に泊まれるわけだから、その後は憧成と一緒に行動をしよう、みたいな」


「……すまない。言葉が足りなかったな。今後も行動を共にしてくれるなら、そちらの方が私としても嬉しいが、そういう意味ではなくてだな。あー、その、なんだ……この水族館、二人で回らないか?」


 私の言葉を聞いた白石はほっと一息を吐いた後に


「あー、そっか。そうだよね。それじゃあ、一緒に回ろっか?一人よりも二人の方がきっと楽しいしね」


 そう言うと、彼女はパンフレットを取り出し、私と肩を並べて、地図を指さしながら、


「行きたいところってある?」


 と、華やかな笑顔を浮かべたのだった。



 一先ず、どこにあるかがわかりやすく、どんな関係性でも盛り上がることのできるという事でジェットコースターに乗ることになった。



 入口からも目に入ったイルカのジェットコースターに乗る直前に彼女は小声でこんなことを呟いた。


「……そういえば、わたし、ジェットコースター乗ったこと無いんだよね……」


 さて、入り口からも見えるようなサイズのジェットコースターである。当然、それはこのアトランティスの目玉の一つであると考えられる。どんな遊園地であったとしても、目玉でないジェットコースターは手抜きのような地味なものでも、注目されることを目指して建てられた目玉のジェットコースターにはすさまじい急降下やカーブ、果てには回転すら入っていても、不思議ではない。


 ……つまり、何が言いたいかというと、白石、下手したら気絶するんじゃないだろうか?


 そんなことを考えている間にも、ジェットコースターは最初の上り坂にゆっくりとその身を添わせて、その角度を急にしていく。しばらくその緊張が続くと、ジェットコースターの先端が突如水平方向に戻り、ジェットコースターに邪魔され窮屈だった視界が晴れる。そして、私は一瞬の開放感と共に、これから味わうであろう内臓が浮くような感覚に備え、体を力ませた。


 落下を開始する。


 このジェットコースター最大の特徴はイルカがジェットコースターを引いていることだ。私はそれが意味することを深く考えていなかった。


 急降下。空気が全身を打ち付ける。内臓が浮く。


 ここまでは普通のジェットコースターであり、そこまでの衝撃は無かった。


 突如、イルカが跳躍した。ジェットコースターもそれに追従するように跳ねる。本来、あるべきルートから離れた恐怖。自分の命が他者の行動に左右される不安。


 そして、何よりも、恐怖、不安、悲観、そんなマイナスを吹き飛ばす程の高揚感。


 強い衝撃にイルカがレールに着地したことを知り、安堵したのだが、それよりも、『先の興奮を今一度、得たい』と思ってしまった。すると、その願いが届いたのか、百八十度の急カーブ地点でイルカは跳躍した。


 だが、跳んだ方向は下り坂でのような目前のレールではなかった。つい先ほど通ったレールへと跳躍したのである。浮遊感。体が警告を出す。だがしかし、人間には、未知に対して恐怖よりも好奇心の方が抱きやすいという生物として致命的な欠陥が備わっている。


 イルカは先ほど通ったレールを逆走する。先の下り坂を今の上り坂とし、一気に駆け上る。だがしかし、摩擦力により、上り切る事は叶わず、その運動エネルギーはほぼ全て位置エネルギーに変換されてしまった。今度はイルカが先頭ではなく最後尾に着き、変換された位置エネルギーは打って変わって、運動エネルギーに変換されていく。


 先ほどと全く同じ道のりである。しかし、自分がどちらを向いているかによって、大分その印象は変わっているように感じた。そして、直線に進むだけのレールに入った時、イルカは自分に水平方向の回転を加えつつ、跳躍する。視界が百八度回転し、本来向くべき方向へと体が戻された。


 すると、徐々にイルカは減速していき、ゴールが目前に迫る。そして、ゴール直前に差し迫った時である。


 イルカが再度跳躍した。イルカとジェットコースターがゴール地点の屋根に乗ったのだ。そこにはレールがあり、こういうものだったのだろうという事が察された。


 今度こそイルカは停止し、このアトラクションの終わりが暗に告げられた。


 名残惜しく、安全ベルトが外れたことを確認して、降りようと後ろを振り返ると、白石が案の定ぐったりとしていた。すると、どこからともなく声が聞こえてくる。


「いやー疲れましたわ!ほれ、ワシに乗っとる兄貴と姉貴。早う降りてくだせぇ。次のお客が待っとるんですわ!」


 ……イルカがしゃべっている。


 だがしかし、私は二足歩行をして、剣を振り回す大型犬とこの一か月間ずっと一緒に居た。こんなことでは、大して動揺しない。


「あー、いや、すみません。少し、連れが衝撃でぐったりしてまして。少し待っていてくれませんか?」


「ありゃりゃ、そうですかい?ちょいとお待ちを。ワシの仲間を呼びますわ。そいつらに乗っけるなりなんなりして、そっと降ろしてやってくだせぇ。乗り物酔いちゅうんは厄介なもんさかい。無理させちゃいかんのですわ。――――――!」


 ……空気の震えは感じ取れた。だが、音を感じ取ることはできずに何を言っているのかもわからなかった。


 すると、宙を泳いで、先ほど話していたイルカよりも一回りとはいかないまでも、見るからに小さいことがわかるイルカが三匹ほど泳いできた。


「親分!何ですかい!?さっさと来いなんて、おいらたちを呼ぶなんて、珍しいじゃないですかい!?」


 元気よく、快活な声で右側のイルカが叫んだ。


「おうよ。よぅ来たな。ワシの上にぐったりしとる姉貴が乗っとるやろ?」


「そーですねー。もしかしてー、それで、呼んだんですかー?」


 少しボーッとしたような声で、左側のイルカが呟いた。


「おうよ。よぅわかっとるやないか!ほれ、その姉貴をそっと降ろしてやれ」


「了解しました!親分が一番弟子!イルルカにお任せください!」


 遠くまで響き渡りそうな大きな声で、真ん中のイルカが申し出た。


 すると、三匹、いや三人のイルカは白石に近づき、器用にヒレを使い、丁寧に白石をジェットコースターから降ろした。感心しつつも、丁寧な作業をしてくれたイルカ達に感謝を伝える。


「皆さん、ありがとうございます。仕事、頑張ってください」


 この四人を代表して、親分と呼ばれていたイルカが返答した。


「なぁに気にするこたぁねぇですよ。ワシ等ぁ、自分の仕事をやっただけですわ!ま、今後もアトランティスで楽しんでってくだせぇ。それじゃぁ、ワシは次のお客んところに行かなきゃならんさかい。こんな所で、失礼しますわ。」


 親分イルカが行った頃に、白石も目を覚ました。


「うう、じぇっとこーすたーがこんなにきついなんて……」


「……すまない。白石がジェットコースターに乗ったことないなんて思わなかった。後、このジェットコースターは他の所と比べてもかなり激しいものだから、尚更だろう。……ここだと、次の人たちの迷惑になる。移動しないか?」


「そうね……」


 白石をおぶり、ジェットコースターの終点を後にした。



 ジェットコースターの近くにあった椅子に腰かけ、白石の背中を撫でる。


「……ありがとう。楽になったと思う。……よし、次の所に行こうかな?」


「そうだな。大丈夫なら、行こうか」


 その後、沢山のアトラクションに行き、それぞれの素晴らしい出来に感動したり、驚嘆したりした。



 そうして、それなりに仲良くなれたと感じた私は今後の話にもちょうどいいと思い、観覧車に乗ることを提案した。白石も一瞬、考えたのちに、了承してくれた。


 気合いを入れろ。ここで、話し合う機会を逸したら、そのまま、なあなあで別れてしまうことになる。それはいただけない。折角会えたんだ。


 もう二度と手放したりしない。

次で、間章は終了かなぁ。

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