ヒロイン登場!
ちょい長いかもです。
尾を引いた流れ星は今も尚、視認することができる。
これは……マズくないか?隕石にしろ。宇宙ゴミにしろ。強い発光の時以外でも、はっきりと視認できるサイズ。……あれでは落ちてくるまでに燃焼しきらないのでは?それも、かなりの大きさの状態で落ちてくる恐れもある。
だとしたら……!
最悪の事態に思い至った瞬間、誰もいない虚空から父の声が響いた。
『聞こえてるよな?返事は要らない。あの隕石については夢乃と俺に任せてくれ。余裕ないから、もう切るぞ』
本当に真面目な時の声のトーン。それの意味を飲み込んだ直後、空が歪む。
見るだけですさまじい熱量なことが本能的に伝わる。空気中に存在した原子は全て電離し、かつて宇宙が作られた時と全く同じ姿に還る。しかし、その膨大なエネルギーは父の手により、地上には影響がないよう、抑え込まれていた。
恐らくほぼ全てのエネルギーがシャットアウトされているのだろう。不思議とその歪んだ空を見ても、目が潰れたり、焼けたりすることは無かった。
歪みが維持されている時間は極僅かだった。徐々にその歪みは戻っていき、歪んでから一分も経たない内に元の夏空となっていた。
……これは国のトップが私に『家族を紹介してくれ』等と頭を下げるのも納得だ。私の家族はどうやら、一人一人が世界を滅ぼしたり、世界を護ったりできる神話クラスの超人らしい。
先ほどの光景を見たら、もう隕石など消えているに決まっているだろう。……そう、思っていた。だから、思考を放棄していたのであろう。
父からの声が響く。今度は私と結実だけでなくこの町全体に。
『あー、あー。マイクテス、マイクテス。ま、聞こえてるか!まずは、だ。皆、知ってはいると思うけど、自己紹介だ!俺は、四茅野憧叶だぜ!そんで、話を変えて、本題だ。さっきの空の変化は俺と俺の妻の仕業だ。あー、うん。予め、言えなくてすまなかった。みんな、不安になっちまったよな。巨大隕石が落ちてきてよ。それを排除するための方法が少ない時間ではあれしか思いつかなかったんだ。それで、結果はどうだったかって?ああ、成功だったぜ!この町にあの隕石が落ちてくることは無い!安心してくれ!あー、そっかー。これ、広報扱いだから繰り返さなきゃなんねえのか!めんどくさいな!あー、繰り返す……』
父の町民全体に対する報告が終わった後、父が今度は私と結実だけに対して、空気を震わせた。
『あー、コホン。憧成、結実聞こえてるか?急ぎじゃないし、返答してくれ』
「大丈夫だ。聞こえている。それに、音量も調整できているから、安心してくれて問題ない」
『お、なんで音量小さくしてるのかはわかってるっぽいな。……えーっとだな。さっき、夢乃と俺で空が凄い事なってたろ?それでもう隕石は完全に消滅したーって思ってたんだがな?実は、なんかカプセル的なのが残ってたんだが、……ありゃ、どうすればいいと思う?』
私が反応するよりも先に結実が驚きを明らかにする。
「は~?どうゆう事?見るからに六千度超えてたと思うんだけど?なんで、物質が残るの?」
『いや~、さぁ?何か、能力が働いてたと思うんだが、さっぱりわからん』
一先ず、率直な疑問を父にぶつけることにしよう。
「……ところで、そのカプセルとやらは回収したんだろう?」
『いやな?それを相談しようと思ってたんだ。そのカプセルを捕まえようとしたら、何か避けるような挙動をしたんだよ。何度か試したし、能力を使って行動を制限したりもしたんだけど、やっぱり、俺の手に当たらないような、挙動をするんだ。速度はかなり遅いから心配はしなくても大丈夫だけどよ』
「……そうか。……ところで、そのカプセルを放置した場合、どのあたりに落下しそうなんだ?私もそこに向かいたい」
「あ、そっか。普通に考えて、タイミング的にさっき、流石さんが言ってたあの子関係……」
……気づきそうなものだが、気づいていなかったのか。少なくとも、人の記憶に干渉できるような人なんだ。脳も宇宙も完全に解明されていないという点で言えば、同じようなものだ。だったら、宇宙から落ちてきたってなんの不思議も……あるか。
『あ~、んと?大体、裏山くらい……あ~いや、ちげえか。これ一点を目標に進んでるわ。裏山の頂上だな。……んじゃぁ、俺はどうする行った方がいいか?俺的には割とどっちでもいいが?』
「あ~いや、結構だ。気を使わせてしまったな、ありがとう」
『はは、気にすんなよ。若いうちから、そんなこと考えてっと、禿げるぞ?それじゃ、急ぎな。遅いっちゃ遅いけど、それでも、山登りだ。時間が掛るだろ?到着予定時刻は約十五分ってところだ。それじゃ、切るぜ?』
……隣の結実に視線を送る。その目は暗く淀み、据わってしまっている。
「あ、あはは……。ほら、行くんでしょ?お兄ちゃん……?行こっか」
体が少し強化されているからと言って、結実は人間である。山を下りたり、登ったりを続けるのははっきり言ってキツイのだろう。だがしかし、能力が制御できずに、冷気が出ているのは少々いただけない。
「……結実……?冷気が漏れていて、少し寒いのだが」
「ほら行くんでしょ?行こっか?ほら行くんでしょ?」
……そこまでか?流石の『気をしっかりな』はこれの事ではなかろうなと思ってしまう程に結実の体は白い狂気に包まれていた。
「行こっか。ほら行くんでしょ?」
~~十分後~~
私たちは、山を登った。それはもう急いで。山を登る前、白い狂気に呑まれていた結実はどうやら、体を動かしたことで目を覚ましたようだ。結実は隣で倒れている。後、五分。コンディションを今の内に整えておこう。
山の頂上には先ほど、父が作っていた機動要塞(?)があった。中を覗いてみると、どうやら、かなり簡単なつくりのようだ。外をのぞくために、複数の穴が開いているだけでそれ以外これといって何もない。
穴を何となしに覗いてみる。空を見るための穴、裏山を見るための穴、一つだけ不思議で、一昔前に子供たちの遊び場となった場所を見るための穴もあった。
子供たちの遊び場以外ははっきり言って、今の私の興味を引くことは無かった。
しばらく、穴を覗き暇つぶしをしていると、とある場所を見つけたそこには大き目の小学生が運んだのなら大変だったに違いないと思えるようなサイズの石が大量に置いてある。そして、その中心部分に元は看板か何かだったのだろうか?大き目の木の枝が突き刺さっている。
何かを思い出す。これは少し前まで覚えていた記憶。不自然に消去された記憶。世界の観測者達しか覚えていない遠い約束の記憶。その記憶は以前の記憶より鮮明に、克明にその脳裏に蘇った。
『ああ、なるほど。冬芽。お前、私の記憶を盗んだな?』
口の中にその言葉を抑え込んだ後、外からガシャン!という山にはあまりふさわしくない音が鳴った。
父のカプセルという言葉を思い出し、外に出る。そこには、白い肌と白い髪、紅い瞳と朱い唇。私の記憶にあるあの子が大人になったのであろうその姿。それは私が数分前まで描いていたあの子の想像を無価値のように感じさせ、私が数秒前まで描いていたあの子の大人になった姿の予想を置き去りにしていた。
あの子……いや、この人の名は白石嶺亜。
私が好意を抱いていると言って憚らない人物である。
ようやく、ようやくだ。メインヒロインを入れることができた!設定的に早々に入れるのもなぁと思っていたんです。




