表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/95

麦茶覚醒 其の二

ちょい長めです。

 …マズイな。私の住むアパートは目前なのだが、周囲に緑色の小鬼(ゴブリン)が多数いて、正攻法では、バイクを持っていけそうにない。超獣も群れを形成するのか。


 …計画を立てよう。確か、私の部屋のすぐ下には公園と駐車場(目的地)があったはずだ。それを上手く活用しようか。


 そうか。奴らを討伐する必要性は皆無なのだから、見つからずに玄関にあるバイクの鍵を回収して、そっと脱出できればそれでいい。バイクは必要だがな。


 部屋の下に移動したいなら何ができる?床を抜く?流石に無茶が過ぎるか。飛び降りるにしても、流石に足が痺れてしまうだろう。よく考えるんだ。今の私は身体能力が30代のオッサンとは思えない程度にはある。だから、自分の身体能力を低く見積もり過ぎて視野が狭くなっていないか?そうだな。流石の私も2階とはいえ飛び降りたら、先も言った通り足が痺れる。ならば、クッションがあればいいのだから。ゴブリンを一体討伐して、それを地面に置いて着地するならどうだ?そもそもゴブリンの上に着地できない可能性もかなりある上に、ゴブリンとの戦闘はできれば避けたい。それに飛び降りるより先に光の粒子に変化されると何の意味もなくなってしまう。


 むむ。そうだな。公園には確か動かせるトランポリンがあったはず。ならば、それを移動させて着地すればそれでいいんじゃないか?アパートの周りをぐるりと回り、公園を見る。そして、トランポリンの位置をずらす。大体4メートルほど頑張って動かしたら逃げる。見つかることも考慮していたのだが、運よく見つからなかったようだ。近所の子供たちが遊具の下に隠した鉄パイプやいい感じの木の棒を拝借し両手に持っていたのだが。


 そうだな。私の部屋に侵入した時に上手く忍び込む途中でバレてしまった時のために鉄パイプは持っていこうか。…温存したかったが、


 未来予知!

ツ!私の部屋の玄関の光景が見える。


 だが、…何故だ?鍵がなかった。記憶違いか?いや、間違いなく置いたはずだ。


 ならば、奴らが盗ったのだろうか。流石に早合点か?だが、いずれにしても自分の部屋に入るのは必要だろう。


 …観察していると、奴らの先程から一つの部屋に出入りしている緑色の小鬼(ゴブリン)は全て同一の個体なように見える。このことから、奴らには同じ群れの中で個体ごとにそれぞれ異なる部屋が与えられていると見るべきだろう。


 であるならば…私の部屋にも緑色の小鬼(ゴブリン)は多くて二匹程いると言ったところだろうか。盗まれたとするならば、そいつが鍵を持っている可能性が高い。依然、作戦は変わらないが鍵を持っている奴は倒す事が目標に加わったな。


 部屋の出入りが止まった。気づかれたか?いや、気づかれる様な真似はしていないはず。相手の能力が索敵の恐れはあるが、これは好機到来と考えておこう。そうでないといつまでも突撃できないからな。


 静かにしかし迅速に身を屈め移動する。私の部屋は2階の5号室だ。2階には来たが、こちらは一階とは異なり、奴らが居るであろう部屋の真横を通らなくてはならないため更に細心の注意を払わなくてはならない。


 つまり、2階では更に遅い足取りとなり、こうなる可能性も必然的に高くなる訳だ。


 目の前の3号室の扉が突如開いて、緑色のなにかが視界に広がった。


「なッ…!」

「ゴブッ!」


 反射的に鉄パイプで顔面を強打してしまった。上手くキマって緑色の小鬼(ゴブリン)が倒れ込むのを急いで抱えて部屋に戻す。


 …コイツが扉を開けたのだから、足音がしないのは逆に不自然か。5号室(私の部屋)…の隣まで、足音を立てて移動したら、足音を消して、一部屋戻り、そっと入る。


 隣まで移動したのは中に緑色の小鬼(ゴブリン)がいた場合、自分の部屋の前で足音が消える事に疑問を持たれ私に気づくという可能性を減らすためだ。


 そっと部屋に入り、念の為、鍵を置いた場所を確認する。やはり、ないか。


「グギャギャッ!」


「ふっ!ふぐぅ…!」


 緑色の小鬼(ゴブリン)の鳴き声は先程の個体から『ゴブ』かと思ったが、違ったらしい。


 そして、その直後の声は人…か?覗いて確認するか。


「グギャ!グギャッギャ!」

「ん~~!」


 そこには手足を縛られた上に、猿ぐつわを噛まされ、スカートが派手に巻き上がった金髪碧眼の高校生ぐらいの美少女と緑色の小鬼(ゴブリン)唯一の装備、腰蓑を捨ててバイクの鍵に紐を通しネックレスにしている緑色の小鬼(ゴブリン)がいた。


 流石にこの子を放置は余りにも哀れで心が痛むな。


 腰を揺らしているこの残念な緑色の小鬼(ゴブリン)にはそっと後ろから近づき…。


 その時、少女が気づき何か反応しようとしたが、空気を読んでやめてくれた。


 会釈しておく。


 そして、そのまま接近して、鉄パイプで殴る。気絶したようだ。二体目ではっきりしたな。緑色の小鬼(ゴブリン)は弱い超獣のようだ。その時、部屋の扉が開いた。


「「「グゲ?」」」


 あの緑色の小鬼(ゴブリン)、どうやら仲間を予め呼んでいたようだ。…この少女、本当に哀れな事になるところだったらしいな。


 さて、逃げるか。


 倒れている緑色の小鬼(ゴブリン)の首から鍵を引き千切り、少女をお姫様抱っこすると、


「ん……」


 少女の顔は何やら顔が紅くなっている。


 流石に全盛期ぐらいの身体能力と言っても、そこまで発達した体はしていないので、助走をつける。そして、振り子の法則を活用して、恐らくこの短い時間で出せるだろう最大のエネルギーを込める。そして、腕の中の美少女を…


 ベランダから放り投げる。


「ん~~~!!??ふぐぅ!」


 よし、上手くいったな。私も少女にぶつからないように上手く着地する。


「よっ!」


 横に1メートル程跳べば、丁度トランポリンの上に落ちれるくらいの場所に配置した。


 そのままトランポリンで跳ね続けている少女をキャッチしやすいお姫様抱っこでキャッチした後、


「ん~!ふっふひひふぁひふぁ!ふぇふふぁ、ふぉふぇふぁふぁふふぁふぃーへふふぇ……」


 運び易いように横に抱える。


「ふぁへ!?」


 猿ぐつわをしているのだから、喋らなければ良いと思うのだが…。


 その状態で全力のダッシュをする。ゴブリンたちが一斉にアパートから出てくる。く、この少女を放置しておけばこんなピンチにはならなかったというのに…!だが、あそこで見捨てるのもどうなんだ?と叫ぶ私がいるのも事実。


 バイクに跨り、そのまま、バイクのエンジンをつける。


「………うふぉふぇふほへ?」


 視界の端に大量の緑色の小鬼(ゴブリン)が写った。少女の安全のために少しずつスピードを上げる。ゴブリンまであと5メートル。4メートル。3メートル、2メートル1メートル奴らの指先が少女の足を掴む。鉄パイプを後ろに投げて、少女の足を掴んだそいつの顔面に強打させる。そいつは一瞬クラッとして足から手を離し止まる。先頭の者が停止したことにより。行列の走行が一瞬だけだが停止。その瞬間にさらに速度を上げる。バイクに奴らはもう追いつくことはできないだろう。


「ふぇぇぇええ!?」


 うるさい。何なのだ。この少女は。



 ふむ、1キロメートルも移動したのだ。流石にもう安全地帯だろう。ひとまず、少女を解放するか。む、意外としっかり結ばれている。


 ~~3分後~~


「ふぅ、解けた」


「………ぷは!え~と、言いたいことが多すぎて、ちょっと待ってください?…まず、ありがとうございます。…そして、一言文句を言わせてください!あなたねぇ、なんで女の子をベランダからポイッてすんですか!?鬼畜ですか!?というか、女の子じゃなくてもダメですからね!そ・れ・にぃ~!なんで横に抱えるというチョイスなんですかねぇ!?非常識という次元を3個ぐらい超えてますよ!?」


「一言ではないのだが「あ?なんですか?ニコニコ」


「…怖い笑みを浮かべる人は知っているが、

ニコニコと自分で言う人は初めて見たな。

…あの状況だとあれしか思い付けませんでした。

…が、レディへの扱いがなっていなかったのは

謝罪します。すいませんでした」


「分かればいいのです。分かれば。そしてですね。最初の喋り方の方が楽なのでしょう?

是非、そちらでお話したいです!」


「…そうか。ならば、こちらで話そう」


 なんだか、不思議と言葉に従いたくなるな。なんと言えば良いのだろうか。カリスマ性の片鱗?そう言ったものが今の少しの会話からでも窺えた。


「はい!」


「いきなりだが、これからの話だ。個人的にはここで別れるべきだと思うのだが」


「う~ん、そうですかね?私としては移動手段を手放したくないのですが」


 人を移動手段呼ばわりか。まあ、だが、気持ちはわからない事もないし、言っていることはまともなのだがな。


「いや、今私は動く樹木(トレント)との交戦中でそのための道具を取りに家に戻った。その時にお前がああなっていたのだ」


「あ~!あ~!聞こえない!あの時の事は忘れて下さい!ですが、そうですか。でしたら、ここで別れた方が良さそうですね。次、会った時のために、名前、共有しませんか?」


「そうだな。私の名前は四茅野憧成だ。もしかしたら、その内、力を借りるかもしれないその時はよろしく頼む」


「私の名前は桃井立華(ももいりっか)です。次はもっとじっくり話せる時である事を期待していますよ?」


「ああ、ではな」


「ええ、それでは」


 そして、私は再びエンジンを起動させ麦茶の下へと帰るべく移動を再開した。


「ああ~!立華(りっか)っちいた~!大丈夫?怪我無い?ごめんね()()()()()()()()()次こそ、絶対守っちゃうからね!」


「申し訳ありません、()()()。桃井家の執事で

ありながら、この体たらく。なんとしても、次こそお守り致します」


「いえ、わたしにはなんの問題も無いですよ。それに、守るにしたって、肩肘張らない方が結果が出るはずでしょう?なので、隆司(りゅうじ)さん、採苗(さいな)もう少し力を抜いて下さい?これは、命令ですよ?」


 そんな会話が聞こえてきた気がした。

麦茶の回なのに、麦茶の出番ないまま終わった。可哀相に。


2020/06/04 全体的な表現を修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ