守り神三人衆の超戦力 其の一
先ほどの言葉の続きを語る。
「それで、記憶が戻る当てを今思い出した。そのために電話をしたい。一旦、下山しないか?ここは電波が悪い」
「ほんと?だけど、もう一回山登るの?」
「そうなるかもしれない。悪いが、付き合ってくれ。今頼れるのは、結実しかいないんだ」
そう言ったら、結実はため息を吐いて、
「……それ、私以外には言わない方がいいよ。というか、私にも言わない方がいいよ。寧ろ言わないで?」
気温が下がっていないので冷気を出している訳では無いはずなのだが、何故か体がブルりと震えた。
「……わかった」
「よし!それじゃ、下山しよっか!」
切り替えの速さが一週回って怖いな。
電話で何から切り出すかを考えながら、下山の一歩を踏み出した。
下山後、少し歩き、電波の良い場所を探した。
いよいよ、電話を掛けようとした時だった。
結実が体を弾ませる。何事かと振り向き、訪ねようとして顔を見たら、面倒くさいを言いたげな顔をしている。
「どうした?」
「あ~、お兄ちゃんごめんね~。超獣が出たっぽいから、行ってくるね?」
「は?いや待っ……!」
返答をしようとした次の瞬間には、凄まじいスピードで走り去っていた。走った跡では、小さな氷の結晶が空気中を舞い、キラキラと太陽光を反射している。気温が一気に下がる。確かに寒いが人間は案外、急に暑い場所から寒い場所に移動しても短時間なら耐えることができる。ここから早々に退却すれば問題ないだろう。
少し歩けば、もう先ほどまでの炎天下に戻った。そして、少し乾いた喉に再び冷えた麦茶を流し込み、水分を得る。こまめな水分補給は必須である。
携帯を手に取り、お気に入りに登録された番号へと電話を掛ける。まずは、愛召からである。
『prrrr……prrrr……、おう、どうした?憧成?こちらは流石だぜ?』
「私が掛けたのは愛召の携帯だったはずなのだが」
『あってるぜ?だけど、生憎今は業務中でな、サボり中の俺が電話に出たってわけだ』
「……まぁいい。さてと、愛召にも流石にも聞きたいことがあったんだ」
『折角だし、もう少し旧交を温めようぜ?』
「それも悪くないかもしれないな。だが、本題に入らせてくれないか?」
『……まあいいぜ。……なんだ?』
「この間も聞いたが、小学校三年生の夏休みが終わった頃に何かを聞いただろう?それについて、教えてくれないか?」
『前も言ったが、俺らは何でも知ってるわけじゃあないぜ?正真正銘、知っている事だけだ。だから、残念ながら、俺に教えられることは無いかな』
ここからだ。引き出せるかはわからないし、もしかしたら引っ掛けでも何でもないのかもしれない。だが、可能性は確かにある。だったら、賭けてみよう。
「……前とまた同じか?嘘を吐いていないだけで、虚実を見せる。時々そうやって誤魔化す癖みたいなものがある。気づいているだろう?前もそうだった。『知らない』『思い出せない』と明言せずに、適当な文句を並べて、嘘にならないように取り繕って、偽物の本物を騙る。流石、本当は知っているのだろう?私はあの時二人に何を聞いたんだ?」
数秒の間が空く。時間が流れる。突如空気が冷えたものに移り変わる。空から声がする。
「お兄ちゃん!ヤバい!逃げて!」
遠くで空飛ぶマンホールに乗った結実が声を出している。
『……どうしたんだ?結実の声が聞こえたぜ?物騒な事を叫んでるじゃないか。バーサーカーの派遣はいかがですか?』
「すまない。流石、こちらからかけておいてなんだが、少し電話を切らせてくれないか?」
『いいぜ?幾らでも時間を費やしてきてくれよ』
その言葉を聞いて、電話を切る。結実に返答をする。
「どうしたんだ!?結実!」
「ヤバいのが来たの!ていうか、マジでアレ、何!?最初の一週間から初見の超獣とかなかったんですけど!?」
「もしかしたら、首都で超獣と戦ってきた私は知っているかもしれない!私にも見せてくれないか!」
「そう!?じゃあ、そのマンホールの上に乗って!」
「これか?」
すると、マンホールが浮かび上がり、その高度を徐々に上げていく。
「は!?ど、どういうことだ!?」
「お父さんの能力の効果!一度触れた非生物を自由に操作することができるって言ったでしょ!」
「そうは言っていなかったけどな!確か、其は我が意の儘に、だったか?」
「そう、それ!何故か知らないけど、能力の発動中は能力に関する情報は完璧にわかるんだって!だから、空気を操作している時には射程内ならどんな小さな声でも聴きとれるらしいから、私達が行きたい方向とかしたい操作を言うとその通りに操作してくれるってわけ!」
ふむ、なるほど。強すぎないか?
良い高さまで上がったな。
「十分だ。止まってくれ」
凄いな。本当に止まった。
「はい、これ。コマンド表」
「なんだこれは」
「一々、よくやる動作を全部声に出すのも面倒じゃん?だから、よくやる動作に名前を付けたの」
「なるほど。わかった。これを言えばいいんだな?……本当にこれを言うのか?」
そこには、
敵の周囲を水平方向に回転する=ホライズンリング
敵の周囲を鉛直方向に回転する=ウラヌスリング
体がマンホールから離れるようにする=ブレークアウェイ
等など、恥ずかしくなってしまうような、アレな操作名がたくさん書いてあった。
「……これを本当に言うのか?」
「……まあね。言っとくけど、考えたのはお父さん一人だよ?作ってから提案して、お母さんと私が賛成してから、実はもう作ってあるんだ……って取り出したんだよ。反対しにくい空気を作らされたから、渋々やってるの。……実際、覚えやすいんだけど」
……そうなのか。
「それで、ヤバいというのは、どれの事だ?」
「ああ、あれの事だよ」
指をさしたその先に居たのは一か月前の麦茶に押しつぶされた動く木の約5倍だろうかという異常なサイズをした。木、否、大樹の化け物であった。
あれの後ろの裏山と勘違いしていたのだが、というか裏山よりも大きいな。もう少しバランスというものを考えたらどうだろうか。
核家族が核なんて目じゃないほどに強いってところ見せてあげましょう。……メド〇ーア。




