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それでも、彼は憧れる  作者: 鋼鉄製ハンマー
忘却の更に先へ
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一つは覚悟の中

お待たせしました!

 私の能力は危険の回避は得意ではあるが、危険の排除にはほぼ関係ない。使い方次第ではできないわけではないが、そのためには十分な思考のための時間が必要だ。故に、このような突発的な危険に対しての対処は私がトップクラスで苦手とする分野なのだ。


 落下中に未来予知を連続発動させる。



 体をひねった際に回転し、360度全方向の風景が見える。空を飛ぶ人はもういない。



 未来予知中も私は体を動かせるので、空を飛ぶ人を確認することに集中した。まともな人ならば、今自分が生き残ることに力を掛けるだろう。だが、私は何故かその瞬間だけはそちらを意識していた。


 居た。……誰だ?何処かで、確かに……。それもつい最近。あの子ではない。空を飛ぶ人は男だ。


 ふと、意識が落下に引き寄せられる。生存本能だろう。私は未来予知の感覚を()()()記憶することができる。未来予知中に視界に入った風景で掴めそうな枝を選ぶ。6本もあるな。


 体をひねり、枝に少し接近する。未来予知の風景はこれか。枝を掴み、少しだけ落下の速度を落とす。枝が折れる。落下は止まらない。しかし、少しだけだが、方向転換することができた。異なる枝に近寄って、先ほどと同じ工程を三度ほど繰り返す。


 そして、合計で五度繰り返した。最後の一本!しかし、手が届かない。


 マズイ!!体が大地に引き寄せられる。地面を確認する。


 落下予想地点は……、傾斜があって、私の落下の方向と同じ方向に傾いている。


 これなら上手くやれば、助かるか?


 落下の瞬間に前転をする。落下の勢いそのまま乗った前転は止まらない。更に傾斜がついていることも相まって、一層止まる気配がない。少しずつ体を広げていって、勢いを殺す。


 そうして、ようやく止まった。


「た、助かった……のか?」


 全身が痛い。体中に小さな傷ができている。その瞬間凄まじい寒気が体を襲う。


「お兄ちゃん!大丈夫!?……って、傷だらけじゃん!今日の所はもう帰ろ?ねっ!」


 地面の水分を冷気で凍らせて、その上を傾斜を生かして、滑り降りてきたようだ。その際には、当然膨大な量の熱を周囲から奪い取っているだろう。その熱はいったいどこに行っているんだ?エネルギー保存則全否定……。……今更か。


「いや、大丈夫だ。傷はどれも軽い。確かに量は多いが、出血するほど深い傷もあまりないしな。続行しよう」


「で、でも!」


 そう、もうあまり時間が無い。残りの時間はもう僅か。帰る日を省けば、もう半分もないのだ。ゆっくりしている暇はない。


 一歩前に進むと、結実が声を張り上げた。


「じゃあ!……せめて、応急処置させて。ほら、ついて来て」


 ついて来てとは言われたものの首根っこを掴まれる形になっているのはいかがなものだろうか。そして、三十代ともなろう男がJKにたじたじというのも少々情けないが、結実には力でも能力でも負けているので、こういう事をされるとどうしようもない。大人しく応急処置を受けることにした。





「はい!応急処置終わり。流石に大人だね~。全然痛がらない」


「ここ一か月と少しはずっと激痛やら怪我やらが伴う環境にいたからな。消毒液の痛みにはもう慣れた」


「う、うわ~。そんな環境なの?首都だよね?完全に機能停止してるじゃん」


「案外そうでもない。首都陥落しても、超獣は人間しか積極的には襲わないからな。電線やアンテナ、水道などのライフラインも超獣の対象ではないから、田舎から遠隔で首都のサーバーを操作できる。携帯会社に至っては本社が首都にあるというだけで電波を飛ばすアンテナは各地にあるからな。首都に所々電波の穴ができたというだけでほとんどの場所で携帯は使える。だが、ここ最近だと超獣に対して、超人や超獣以外の者が五名以上の徒党を組んで戦闘すると、対象の超獣が強化されてしまうことが判明した上に軍人及び元軍人は一人残らず超人になっていないらしいからな。政府は一般の超人に助力を頼むしかないんだ」


「なるほどね~。それで、避難所兼軍事拠点として、お兄ちゃんがいる場所みたいなところが設けられたと。……異様に政府の対処速くなかった?」


「そうだな。だが、そこに触れることができる人は本当に少ない。早いに越したことは無いからな。普段、遅すぎると言っている野党が、早くなったら、早すぎると文句を言う。流石にこれはメディアに叩かれるんじゃないか?だから、精々、都市伝説的に話されるだけにとどまっているんだ。決定的な証拠がなければ、発言者が潰されるだけだからな」


「へ~、それにしても、軍事拠点って言っちゃってるけど、いいのかな?憲法的に」


「あ~、そちらでは議論が続いている。()()拠点は憲法違反だと主張する野党と日本の首都を護るために必要最低限の人員に協力を()()()しているだけだと主張する与党でな」


「あはは、この状況でも政争は続くんだね」


「まあ、それは仕方ないだろうな。意外と国の存続のピンチという訳では無いからな」


「ふ~ん、そっか~。じゃ、行こっか」


「そうだな。ああ、言い忘れていた。恐らく子供の遊びをしても記憶が戻ることは無そうだ」


 結実は多分だが、私により現実的に行動しろと言いたいんだろうな。だから、現在についてを説明させたし、私が頭を冷やす時間を作るために、何度も質問を返したのだろう。


 ありがとう。おかげで頭が冷えた。さてと、今やるべきは裏山で記憶探し何て言う当てのない事じゃないもっと確かな確実に情報を得られることだ。


 さぁ、流石(るい)愛召(あめ)、私は覚悟を決めたよ。君たちはどうだい?

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