少年は未来を想う
ちなみに、察していると思いますが、この章は恋愛成分多めです。
そして、私はもう一度目覚めた。
現在時刻は午前十二時十五分。これは昼食を食べてから、行動を開始することになるか。
「起きたわね~。昼食なんだけど~、何がいいかしら~?」
「そうだな。今作れればでいいのだが、冷やし中華などどうだろうか?」
こういった質問は何でもいいから提案したほうがお互いのためになるからな。できるだけ季節感のあって、作るのが簡単な料理を提案するのが正解だ。
「わかったわ~。流石ね~、普通の答え方とは~少し違うわ~」
「それは誉め言葉でいいのか?」
「好きな解釈で~いいと思うわよ~?」
さっきの私の提案の話とは真逆の返しをされたな。まあ、誉め言葉として受け取っておこう。
「あら~?キュウリがないわ~。キュウリが無くてもいいかしら~?」
「私は構わないが…。そういえば父や結実はどうしたんだ?」
「憧叶さんは~公園の遊具を操作して~子供たちにキャーキャーされに行ったわ~。結実ちゃんは~二階で寝てるわ~」
「何故私は二階に運ばれなかったのか…」
「流石に三十路の男性を持ち上げるのはつらかったって言ってたわよ~?」
「それ、地味に気にしているんだが…」
そんな下らない会話をしているとあっという間に冷やし中華が出来上がった。
「はいこれは~結実ちゃんに~渡してあげてね~。そろそろ起きたと思うから~」
「わかった」
母から冷やし中華を受け取り、階段を上がる。そして、結実の部屋をノックする。
「どーぞー!」
中からはそれなりに元気な声が聞こえてくる。まあ、気絶しただけだろうから。変な倒れ方でもしない限り、問題は無いだろう。
「はいるぞ。冷やし中華だ。体調は問題なそうだが、昼からあの子の記憶を探るのと普通に思い出探しに町を回りたいのだが、ついて来てくれるか?」
「うん!いいよ!アイス奢ってね?私も手伝えることは手伝うからさ!」
「そんな事でいいのならもちろん奢ろう」
「それと持ってきてもらってあれなんだけど、一階で食べるよ?」
「別にそれならそれで構わないが」
冷やし中華を持って階段を下る。
「なあ、結実」
「なに?お兄ちゃん?」
「普通食べる人が持つんじゃないのか?何故私が冷やし中華を持っているんだ?」
「…えっとなんとなく?」
「なんとなくで兄を使うな…。別に私は構わないからいいが」
「あはは、だったらダイジョブじゃん?」
リビングの扉を開ける。母が待っていてくれた。
「やっぱり~二人仲良く~降りてきたわね~?それじゃ~、席に~つきなさい~」
「そうだな。結実はこの席でいいよな?」
「うん!いいよ!」
「普段は~その席じゃなくて~憧ちゃんの席に~座ってるのに~、遠慮して~憧ちゃんに席を譲る結実ちゃん~。きっと~いいお嫁さんに~なるわ~。でも~別に結婚するときに~苗字を~改めなくても~いいと思うわ~」
「だったら相手を婿に貰うだけだよ?まあ、お兄ちゃん以外に恋愛対象いないけど」
「二人ともその話を堂々と当人の前でするの嫌じゃないか?その当人は嫌なんだが」
「全然~?」
「むしろ、好きってばれてるから、直接言えるのは楽かな?それにこれまで口に出せなかった分を出したいからね!たとえその想いが叶わなくても!」
「すまないな」
「いいよいいよ!それよりも!早く食べよ?麺伸びちゃうよ?」
「そうだな。それでは「「いただきます」」」
流石は母だ。普通においしい。インスタントの物は超えてくるが、流石にラーメン屋などのそれを生業とするものには敵わない。そんな普通においしいという感想がぴったりのものだ。
テレビを見て笑いあったり、途中で父が子供たちを数人連れてきて、冷やし中華をご馳走したりした。
そして、十三時になった。昼食も食べ終わったし子供たちも帰った。そろそろ出発するか。
「それでは、結実。そろそろ行こうか」
「そうだね!」
両親がニヤニヤしている。言いたいことを察したので先回りしてつぶしておく。
「なあ、憧成、これってデー「デートではない」
「あら~?そうなの~?まあ、だけど~私はもう~つやつやだから~いいわ~」
「くそ!一対二なんて卑怯だぞ!俺は逃げる!」
「そうか。振ってきたのは自分だからな?」
「まあまあ、キリないよ?それじゃいってきます!」
「そうだな。では、いってくる!」
小学校の周辺を適当に歩く。何か手掛かりがあるかもしれない。小学校の近くは一通り回ったんだが、特に何かが見つかったという事は無かった。
コンビニの近くを通ったので本日二回目の来店をする。ああ、そういえば買った麦茶、家に置いてきてしまったな。もったいないが、もう一つ買おう。
「アイス~!アイス~!」
「もう高校生になったんだから、アイスぐらいではしゃぐのは卒業したらどうだ?」
「ん~?アイスだけじゃこんなにははしゃがないよ!お兄ちゃんが買ってくれるから、うれしいの!だって、昔から誕生日ぐらいしか物はくれないじゃん?」
「そうだな。何故だったかな。誰かに物をあげることが二十歳になるまで嫌いだったんだ。確か…」
この記憶の靄は…あの子関連か。何が嫌だったんだ?記憶を掘り返す。
――――『これ!要る?』
そうだ。私は昔あの子の好きなものが飛行機だって知って、飛行機のプラモデルを買って自分で組み立てたんだ。そして、私はあの子に渡すのが気恥ずかしくて、欲しいと言うと思って質問した。だが、あの子は
――――『いらない。だって、それ飛べないでしょ?それにそれは君が買ったんじゃなくて、君のご両親が君のために買ったんだよ?それを人にあげちゃダメ。それを受け取ったら私は君のご両親を傷つけちゃうかも。だから、いらない。それに欲しかったら、自分で買えるからね』
この時の私にはその理屈がよくわからなかった。だが、明確に拒絶の意思だけは伝わってきて、なんだかやるせなかった。流石を愛召を一緒にいたから、泣くに泣けず家に帰ってから、こっそり一人で泣いていた。結局それを夏休みの自由研究にした。
――――『だけど、いつか自分の力で得たお金でプレゼントをくれるなら、貰ってもいいかもね?それもあんまり高価だと、流石に断るけど』
それを聞いてその頃の私は舞い上がったものだ。大人になってからも一緒に居られるんじゃないかって、結果はまあ、この通りだが。だけど、それでも、私は誓いを立てた。彼女に絶対にプレゼントを受け取ってもらうんだと。その時の飛行機のプラモデルは一人で作ったタイムカプセルに入れて、どこだったかよく覚えていないが、埋めたのだ。
彼女の言葉を思い出した。彼女の声を思い出した。だが、話した場所も話す表情も声を紡ぐ口も思い出すことはできなかった。
あの子!大人すぎん!?あれで小3だからな?すごくね?




