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今話に『麦茶』と何回でたでしょうか?

 さて、家族や会社の現状確認もできた。麦茶に言った通り、後のディスカッションのためにも行動方針は決めておかねばいけない。その細かい内容を決めるためには、能力の有無の重要性は当然ながら高い。現状確かめられる範囲で構わないから、検証しよう。


 まず、体外操作系の確認だな。軽い物か。ボールペンでいいだろうか?ボールペンに何かをぶつけるイメージをしてみる。


 …特に何も起こらない。


 次は自己干渉系だ。全身に力を入れてみる。


 ……ッ!一つ目の大男(サイクロプス)がこのビルの中を歩いている光景が見える。もしも、これが私の能力だった場合……。


 今すぐ、麦茶と共に移動しなくては。


「麦茶!超獣がここに来るようだ!すぐ移動するぞ!」


「あ、憧さん!俺のこと、麦茶って呼んでくれるんすね!というか、超獣ってなんすか?」


「超獣は例の化け物達の総称だ。茶起は既に調べたと思っていたが…」


「ふぇっ!憧さんが行動方針考えとけって言ったんじゃないすか〜。茶起はやめてくださいっす。麦茶でいいっす。麦茶がいいっす」


 これは若者に対する偏見のようなものがあったな。当然スマホを持っている若者もいれば、持っていない若者もいるだろう。


「正しい行動方針を練るためには、正しい情報は必要だろう?若者はスマホを使っていると言う先入観があったな。気を悪くしたのなら、済まない」


「いえいえ!全然悪くなんてしてないっすよ!」


「そうか、茶起これから「あ、やっぱり悪くしたっす。機嫌を直して欲しかったら、麦茶って呼んでくださいっす」


 そこまで嫌か?悪い名前には思えないのだが。


「はぁ、そうか。麦茶、ここに超獣が来るようだ。すぐに移動するぞ」


「はいっす!」


 よし、もう既に中にいる可能性も考慮して、この会社の社員食堂と思われる場所の包丁を拝借して、慎重に進もう。


 そして、2階から降りて1階へ階段を下りて移動した。1階から、跳び下りるという案もあったが、音が鳴って超獣を呼んでしまう可能性を考慮して実行しなかった。


 今、目の前に大きな棍棒を引きずる人型の超獣一つ目の大男(サイクロプス)がいる。


 ――どうする?どうする?どうする?あれは今、こっちに向かって来ている。考えろ。打開策を。ひらめけ!このタイミングで最良の戦略を!


 意識のスイッチが切り替わる。


 ああ、そうだ。これだ。物理法則を無視した超獣には通用しないかもしれない。

俺の能力は実は未来予知ではないのかもしれない。だけど、やらずに死ぬより、やって死ね。手傷の一つでも与えて、麦茶(未来の可能性)を生かせ。俺は知っている。俺の憧れを。俺の名前はなんだ?憧れたものに成る、そうだろ?俺の憧れ、それは


 英雄(ヒーロー)だ。


「麦茶」


「はいっす。なんすか?何か思い付いたっすか?」


「俺が死んだらの話だけど、憶えといてくれ。俺の死に様は若者を救ったんだってな」


「ハハ、もう一回言うっすよ。いい歳したオッサンが俺が主人公だ~なんて思ってんの?」


 俺はニヤッと笑って


「ああ、そうだよ」


 そう言い、一つ目の大男(サイクロプス)に突貫した。


 その時、後ろから、


「なんでっすか……」


 そんな声が聞こえた気がした。

 それと同時に、一つ目の大男(サイクロプス)はその棍棒を、振り被った。


 今だ!未来予知!

棍棒を真っ直ぐ振り降ろす一つ目の大男(サイクロプス)が見えた。


 俺の能力はやはり、未来予知みたいだ!よし、第一関門突破だ。スピードを下げて、棍棒の射程外の位置をキープする。俺が射程距離にいないにも関わらず、棍棒を振り降ろす。


 やはり、奴は遠近感が無いのか!第二関門突破!


 ふぅ~、集中しろ。俺なら、やれる。俺しかいないんだ。やりきれ!奴は棍棒を振り降ろした後で、体勢が低くなっている。あれなら、とどく。全力で走る。


 テンプレートがあっているなら!


「古今東西それこそ、神話の時代からなぁ!()()()()()()()()()()は目だって、決まってんだよ!」


 これで!


 全力で跳ぶ。


 その時だった。奴の顔が愉悦に歪む。


「な!嘘だろ!?」


 奴は顔を上げ、その大口を開き、

 

―――包丁を噛み砕いた。


 驚きで、身体が硬直する。そのまま地面に着地する。跳躍時の体勢のままだったため、着地は辛うじて成功する。(絶望)が動き出す。そして、その左腕を振り被る。


 ……ッ!未来予知!

しかし、何も感じることはなかった。


「なんで……!」


 左腕()が迫って来る。クソが!手傷の一つも与えられず、俺は……!


 茶色い液体が強い勢いで奴にぶち当たる。棍棒を振る関係上でバランスの悪かった奴は地に体をつける。よくわからない液体が俺の開いていた口に入る。どこかで知っている飲み物のような味がして、反射的に飲み込んでしまった。


「これは……麦茶?」


「はいっす、麦茶っす!」


「麦茶の麦茶?」


 駄洒落だろうか?


「そうっす!憧さんを助けようと思ったらなんか出たんす!それにしても、らしくないっすよ?ぜーんぶ、一人で抱え込むなんて、効率よく、二人で分けるっすよ!ほら、そっちの方がキャラ的に憧さんに合ってるすよ!」


 そうか。いや、そうだろう?俺は…いや、私は四茅野憧成、しがないただのサラリーマンなのだから。カッコよくなんてなくてもいいだろう。卑怯でも、ズルくても、ひた向きに気持ちの良い結果、それを真っ直ぐと求める。


 それが、サラリーマン四茅野憧成だ。


 だから、確実な勝利のために転げた一つ目の大男(サイクロプス)の目を折れた包丁で突くとしよう。む、折れたせいで中々刺さらない。ならば、何度も突こうか。


「あ、あの〜?しょ、憧さ〜ん?」


「どうした?」


「えっと、もういいんじゃ無いっすか?……な~んて」


「そうか?」


 では、死亡確認だな。心臓は……止まっている。呼吸……もない。瞳孔も……開……いや、ない。


「う、うわー、こいつの顔、血塗れになっちゃってるじゃないっすか」


 戦闘が終わったことで、脳内麻薬の効果が薄れ、死生観が正常に戻っていく。……吐き気がする。


「うっ、い、いや、何でも無い。それにしても、よくこのスプラッタな光景を見て、平静を保てるな」


 少なくとも、麦茶の前で弱い所を見せてはならない。今、私は麦茶の保護者なのだ。不安にさせてはいけない。強引にでも吐き気や引きつった顔を表情筋で押さえつける。それでも、自分がやったという事実は意識に重くのしかかる。


「あ~いえ、こういった光景の前で気持ち悪がったり吐いたりするのはっすね、死者への冒涜ってとられかねないじゃないっすか。あ、でも俺はそんな事思わないっすよ!」


 そういう考え方がこの歳で出来るのは、凄いな。単純にゲームでスプラッタを見慣れているからではという安易な思考を恥じる。


「そうか、麦茶、麦茶をくれ。飲みたい。これから、やらなくてはならない事をしたら、行動方針を決めるとしよう」


「はいっす!」

サイクロプスの強さは今の麦茶でも頑張れば、ソロでもいけるぐらいの強さです。


2020/05/28 全体的な表現を修正

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