根城
校長室から出ると、俺は安西の言った言葉を思い返した。
(漫研の不良…… 野バラか)
漫研の野バラといやぁ、この高校でも中々の有名人だ。
あまりの素行の悪さに教師も手を付けられず、現在、漫研(漫画研究部)を潰してその部室を根城にしている。
本名は血飛沫野バラ。
3-4組の女番長だ。
(安西の野郎、俺をぶつけて共倒れさせんのが狙いか?)
……だが、漫研を狙うのは悪くねぇ。
頭の野バラを倒せば、漫研は俺のもの。
漫画研究部から漫才研究部に変えようが、文句は言われねーハズだ。
そうと決まると、俺は早速、本館の校舎から北側に位置する文化系の部の集まる建物へと向かった。
部室として使われている校舎は2棟あり、向かって左が漫研のある棟だ。
3階まであって、それぞれの部屋の数は10。
漫画研究部はその3階の一番角部屋にある。
校舎に入り、階段を一段飛ばしで駆け上がると、俺はダッシュでそこへ向かう。
「あっ! そっちは行かない方が……」
生徒の一人が俺を引き留めようとするのを無視して、例の部室へとやって来ると、思い切り扉を開けた。
(おえっ、煙っ……)
タバコの煙が辺りを覆い、卓を囲むように生徒が4人。
どうやら、麻雀をしている最中らしい。
その中に、黒髪を後ろに結って、タバコをくわえている女を発見した。
野バラだ。
「……あ?」
俺は廊下で新鮮な空気を吸い直してから言った。
「……よう、野バラ。 ちょっと顔かせよ」
すると、卓の囲ってた一人の男子生徒が立ち上がる。
「……」
俺を睨みつけた後、男が野バラに耳打ちする。
「コイツ、3-2組の向日葵ッスよ」
「おお、かわいい名前のひまちゃんか。 ウチに何のようだよ」
「道場破りだよ。 漫研の看板かけてタイマン張れや。 嫌とは言わせねぇぜ」
「ふ~ん。 ……可愛がってやんな」
野バラが指示を出すと、横の男が拳を振り上げる。
それをかいくぐり、俺は男の後頭部にツッコミを入れた。
「何でやねん!」