向かった先は……
更に翌日の放課後。
俺は校舎の裏で一服してから、よし、と気合いを入れた。
「行くか」
俺がこれから向かうのは、校長室。
やっぱり、お笑いのことは諦めらんねぇ。
小田から教わったツッコミも試してーし、さて、どうしたものかと考えた結果、一つの答えに辿り着いた。
それを説明する為、これから校長室に向かうが、
確か1階の職員室の隣だったか。
俺は廊下を歩いて職員室を横切り、その前までやって来ると、扉をノックした。
「はい」
すぐに返事があって、俺は扉を押して中へと入った。
「……ッス」
机にどかり、と腰掛けているのは校長の安西。
貫禄太りっつーのか知らねーけど、すげーデブだ。
「ほっほぉ、珍しいですね。 3年2組の桜木君ですか」
「いちいち覚えて無くていーって。 ちょっとアンタに話しがあんだ」
「何ですか?」
俺は昨日の夜、風呂ん中で閃いたことを話した。
その内容は、卒業式の日、出し物で漫才をやること。
それが出来るか否か、校長はすぐに返事をくれた。
「……確かに、君も知っての通り、卒業式には申請を出せば出し物を出すことが可能です」
「俺の記憶じゃ、吹奏楽部が卒業式の定番ソングとかを演奏してたよな。 あと、映研か?(映像研究部) 」
「ええ。 ただし、学校の決まりで出し物を出すには個人では無く、部であることが条件になります。 君の場合は、漫才研究部を発足した後、私にその申請を出す必要があります」
……面倒くせー条件だな。
つか、部なんてそんなのすぐに作れんのか?
校長は話を続ける。
「もちろん、すぐには作れません。 初めは同好会を発足し、8人以上の部員を確保した状態で3年が経過することが条件になります」
「ふ~ん…… って、卒業式まで後2ヶ月じゃねーか!」
物理的に無理な条件を提示されて、俺は安西の胸倉を掴む勢いで詰め寄った。
「何とかなんねーのかよ、なあ!」
「ほっほ、それは自分で考えなさい」
ちくしょ……
俺はイラついて地面を蹴り飛ばした。
安西をチラ見するも、表情は一切変わらない。
生徒が善意でお笑いをやろうとしてんのに、決まりがどーのと手を貸す気配はない。
(使えねーな、このクソ校長)
はぁ、とため息をついてその場を去ろうとすると、安西がこんな事を呟いた。
「……そう言えば、漫画研究部がどこかの不良に乗っ取られた、という噂がありましたね」
「……ン?」