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お笑いヤンキー  作者: oga
俺は向日葵
5/25

余韻

(全然わっかんねぇし……)


 俺は放課後、教室に残って小田の追試を受けていた。

赤点はたった一人で、クラスには頭を抱える俺だけが取り残されていた。

すると、ガラ、と扉が引かれ、小田の奴が教室に入ってきた。


「進んでないな。 諦めるか?」


「……」


 考えたって、分からねーもんは分からねー。

元々頭空っぽなのに、粘るだけ無駄だ。

俺は小田に用紙を渡した。


「……チッ」


「これでまた赤点なら追試の追試だな」


「……一人の生徒に構って、お前、忙しいんじゃねーのかよ」


 背もたれに背を預けて、俺は手を頭に組んだ。

はぁ~、せっかく渋谷まで出向いて漫才までやったってのに、踏んだり蹴ったりだ。

実はあの後、古川のやつは病院に搬送されて、俺はショーをぶち壊したっつーことで、トマト館を出禁になった。


(でも、ちょっとだけ楽しかったかもな……)


 この感想は、自分でも意外だ。

あの時、俺はただツッコミを入れただけだったが、確かに笑いを取った。

何か、認められたみたいな、そんな感じか。

あの手応えは、ケンカじゃぜってー得られねぇモンだった。

もし、もう一度ステージに立てるんなら、俺は立ってみてぇ。


「でも、やらかしたしなぁ~……」


「……初めてにしては、良くやったよ」


「……な、何がだよ」


 小田に俺の独り言を聞かれ、思わず小っ恥ずかしくなる。

小田は立ち上がると、採点の終わった用紙を渡してきた。


「25点。 惜しかったな」


「……クソが」


 俺が用紙を受け取ろうとすると、空振り。

用紙が宙に浮いた。


「あ?」


「あと5点欲しいか?」


「……またかよ。 今度はどーすりゃいんだ?」


「お笑いを続けろ」


 小田が口にした、予想外の言葉。


「お前にはツッコミの才能がある。 正直、このまま埋もれさせるには惜しい」


 小田が適当なことほざいてやがる。

俺は、ハッ、と自虐的に笑った。


「俺の殺人ツッコミのどこが埋もれさせるには惜しいんだよ」


「何もツッコミは後頭部を叩くだけじゃ無い」

 

 小田は唐突に、何でやねん、とその場でツッコミを入れた。

だが、俺のやったのとは違う。

手の甲を、外から出なく、内側からそっと繰り出す。


「こういうツッコミなら、まかり違っても病院送りにはしないだろう」


 目から鱗とはこのことか。

俺は、思わず倚子から立ち上がった。


「そ、それか!」


「……ふっ、試してみたくなったか?」


「……ばっ、バカヤロ、んなわけねーだろ!」


 小田はまぁ、検討してみてくれ、と言い残し、教室から出て行った。


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