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国王達の反対

「ミーア、アカデミーに通いたいかい?」

 お父さんの問いかけに、私は大きく頷く。

 学費の心配をしなくて憧れのアカデミーに通うチャンスがあるならば、通って勉強がしたい。

 折角強い魔力を持っているのだから、より高いスキルを身に着けたいし。


 アカデミーに入学すれば、就職先にも有利になる。

 私は予知夢を視る事ができるだけで、特にこれといって手に職がないから、アカデミー卒業というブランドを使って良い所に就職して実家に仕送りをいっぱいしたい。

 下の妹達は育ち盛りだから食費もどんどん膨れ上がるから。


「……そうか、なら是非行きなさい」

「でも、国王様達の許可を貰わないと駄目かな? 一応、未来視の巫女って呼ばれているし」

 給料などは一切貰ってないけど、国を出ることになるし。


「許可は不要よ。私が伝えてくるから行きなさい。テシス様が城に着き状況を説明すれば、陛下達の耳に伝わるでしょうし。その前に出発するのよ、ミーア」

 玄関の扉が開けられ、お母さんとおばあちゃんが入ってきた。

 そして、私の方へ来ると、「さぁ、荷づくりを」と私が妹達と一緒に使っている部屋へと通じる扉の方へ私の体をぐいぐいと押す。

 どうしてこんなに急いでいるのかわからず、ただ困惑してしまう。


 ――もしかして、入学式に間に合わないとか?


「もう遅い。あつらが来たぞ」

 シオン様が弾かれたように顔を窓側へと向ければ、外に淡い光の球が現れ出したかと思えば、霧のようにゆっくりと拡散する。

 光が消え残されたのは、国王様と王妃様、それから王宮魔術師団長と護衛の騎士達の姿だ。


「転移魔法で来たな。ミーア。君は俺の傍にいるんだ。いいか、絶対に離れるな。アカデミーに行きたいと伝えろ。それ以外はしゃべるな」

 がしっと両肩を掴まれた上に早口だったため、私は圧力に負け首を縦に動かす。

 疑問点がいっぱいあるし処理しきれないけど、無表情な彼に言われると危機感を覚えてしまう。


 みんなと共に外に出ると、険しい顔をした国王様達と視線が交わる。


「ムーランアグア国のゴルジュ公爵からの使いと伺っているが、一体どういう要件でミーアの元へ? まさか、未来視の巫女の能力が欲しくてか?」

 国王様はシオン様の方に近づくと、挨拶もこちらの話を聞く間も待たずに強く口調で言い放った。


「ゴルジュ公爵はご存じの通り、アカデミーの出資者であり創設者の一人です。ミーアはSSクラスに入学できる魔力を持っていますので、アカデミー側から入学の誘いをしただけ。彼女はずっとアカデミーに通いたがっていたそうですが、学費の問題があって断念しかけていました。それがゴルジュ公爵の耳に入り、能力も問題ないため特例の推薦ということで誘っただけですよ。彼女も了承し、アカデミーに入学することになりました」

「誰の許可を得てやっているの!? ミーアは絶対に渡さないわ」

「悪いが、許可は出せない。ミーアは我が国に必要な人材だ。他国が口を挟むことではない」

 国王様も王妃様も私の入学は反対のようで、シオン様に噛みつくように厳しい口調で責めている。

 私がアカデミーに通うだけなのに強い反対をされると思わなかったため、私は自然と顔が歪んでいく。

 今までのことを思い返しても、大切にされたというわけでもないし。


 シオン様は攻撃的な国王様達に対しても、相変らず表情一つ崩さず。

 彼が唇を動かして詠唱を紡げば彼の前に淡い白銀の光の球が現れだす。

 やがて光が弾け飛べば、ふわふわと二つの書簡が浮かんでいた。書簡は丸められ赤い紐のようなもので結ばれている。


「残念ですね」

 とても残念そうには見えない顔をしているシオン様が書簡へと触れれば、紐が解けて紙がひとりでに動き開かれた。


「今後サルター国内からのヴァネッサ・アカデミーの入学者希望者がいても入学は禁止。ムーランアグア国とサルター国との国交も断絶します。それだけじゃない。ムーランアグアの同盟国にもサルターとの取引禁止を通達。こちらがムーランアグア国の陛下とヴァネッサ・アカデミーの理事長からの書面です」

 シオン様の台詞を聞き、国王様を始めとした人々が顔面蒼白になってしまっている。

 それもそうだろう。ヴァネッサ・アカデミーだけの入学禁止やムーランアグアとの国交断絶だけじゃなくて、ムーランアグアの同盟国もとなると被害は甚大だ。

 ムーランアグアのような大国ではない小国のサルターでは太刀打ちが出来ない。


「どうしてそこまでミーアを……脅迫じゃないか」

「優秀な人材の育成がしたいだけですよ。彼女は未来視の巫女としての能力を持ち、更に高魔力保持者ですから」

 でも、そうまでして私を入学させるメリットが全くないんだけど。しかも、『反対するのをわかっていた』ように準備が良い気がする。


「問題はありませんね?」

 シオン様が強い口調で訊ねれば、国王様達は頷く以外の道はなかった。




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