↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/29

死亡フラグ回収

 翌日。

 カルドとヴィヴィの婚約発表は大国同士ということがあって盛大に開かれ、城の大広間には着飾った人々が楽しそうに談笑している。

 カルド達は多くの人々に囲まれ、お祝いの言葉をかけて貰っているため、なかなかタイミングがつかめず近づけない。

 なので、私は後でゆっくりとお話をしようと考えていた。


 ――ドレスもアクセサリーも可愛いなぁ。


 私は振り返ると、後方にある窓を眺める。

 ガラスに反射しているのは自分の姿。映し出されている私を見て、まるでお姫様みたいだなぁって思った。

 レモンイエローのドレスはワンショルダータイプのもので、裾が右腰からフリル生地で切り替えがされている。

 下半身がフリルで印象が強くなっている分、上半身は飾りも何もないシンプルにしてバランスを取っていた。


 髪には宝石店で選んだ花の髪飾りを付けていて、首元にはネックレスも付けている。


「ミーア、どうした?」

 ぼーっと窓ガラスを見ていたせいかシオン君に声を掛けられたため、私は左側にいるシオン君へと体を向けて口を開く。

 シオン君も私や周りの人と同様に正装をしているんだけど似合っている。


「なんか、お姫様みたいだなぁって」

「ミーアは俺のお姫様だよ」

「そう言ってくれるのはシオン君だけだよ」

「そんなことないって思うけど。あぁ、そうだ。ミーアと俺で使う大きい物を買っちゃったんだ。気に入ってくれると良いんだけど」

「もしかして公園で前に言っていたやつ?」

「そう。ミーアに決めずに買っちゃったんだ」

「何?」

「パーティーが終わったら教えるよ」

「うん」

 私が頷いて微笑めば、彼が私を抱き締めてくれたんだけど、いつも優しく抱きしめてくれるのに今日は窮屈に感じるくらいの強さだ。


 どうしたのだろう? と思ってシオン君の顔を見たけど、彼の表情には苦しみと悲しみが含まれていた。

 いつもと様子が違うため、私は妙に胸騒ぎを覚えてしまう。


「知人がいるから、挨拶に行ってくるよ。一人でいれる?」

「大丈夫。子供じゃないから」

 シオン君は体を離すと私の頭を撫でて、頬にキスを落とすと人の群れに溶けるように消えて行く。


「おっ、ラブラブだな」

「声をかけるか迷ってしまいましたよ」

 聞き慣れた声が届いてきたので振りかえると、想像通り声の主は本日の主役であるヴィヴィとカルドだった。


「二人とも婚約おめでとう」

「ありがとう。貴方の婚約も楽しみにしているわ」

「わ、私達はまだそういうのでは……」

「でも、指輪」

 ヴィヴィが私の薬指へと視線を向けたので、私は一気に顔が真っ赤になっていくのを感じてしまう。

 指輪を貰った時に、プロポーズに近いことを言われたのを思い出したせいだ。


「今すぐじゃないよ。まだ学生だし」

「おめでとう」

「お前らが結婚したら盛大に祝ってやるよ。料理も酒も用意してやる。そういえば、あいつは?」

 カルドは私の周りを見回してシオン君を探し始め出す。


「知り合いがいるからあいさつに行ったの」

「そうか。イザベラは?」

「料理を食べに行ったよ」

「料理の量って足りるのか……一応、多く作るように言ってあるけどさ」

 カルドが苦笑いを浮かべながら料理が並んでいる方へと顔を向けたが、人々が集まっているためイザベラさんの姿が確認できない。

 ドレスを汚すのが怖くて料理を見に行ってないけど、ちょっと気になるので後で見に行ってみようと思う。


「カルド様、ヴィヴィ様」

 料理の方へと意識を向けていると、左手よりカルド達を呼ぶ声が届き、私達は一斉にそちらへ体を向ける。

 私の両親くらいの年齢をしている男性と女性が穏やかな笑みを浮かべつつ立っていた。

 もしかしたら、お祝いの言葉をかけに来た方達かもしれない。


「私はいいから行って」

「わかったわ。では、また後で」

「じゃあな」

 小さく手を振れば彼らは私に背を向けたけれども、足を踏み出すことはなく再びこちらに体を向け、腕を伸ばして私に抱き付く。

 あまりにも突然の出来事に対して、私は目を大きく見開いてしまう。


「俺達はずっとお前の友達だからな」

「終わったらいっぱいおしゃべりしましょうね。絶対よ」

 そう告げると、二人は私から体を離す。


「どうしたの? 二人共。シオンも様子が変だったけど……」

「ちょっと感傷的になっちゃったのかも」

「そっか……」

「じゃあ、また後で」

「うん」

 私が手を振れば、今度は二人とも背を向けて足を踏み出していく。

 彼等の背を眺めながら、私は死亡フラグのことがふと頭に過ぎる。

 それがあるせいか、カルド達の様子もシオンの様子も変に感じてしまっているのではないだろうか。


 ――飲み物さえ飲まなければ大丈夫。


 別に気にすることはない。無理やり自分に言い聞かせていると、「よっ、ミーア」

 と、肩を叩かれたため弾かれたように顔を上げればテシス様とバイオレット様の姿が。

 テシス様の手にはグラスが握られ、バイオレット様の手にも二つのグラスが握られている。


「テシス様とバイオレット様」

「久しぶり」

「お久しぶりです! って、大丈夫ですか? バイオレット様」

 バイオレット様は前回お会いした時と違って表情がかなり曇っている。

 見た目は綺麗に着飾っているというのに、喪服でも纏っているかのように沈痛な表情をしていた。


「体調でも悪いんですか……?」

「えっ」

 ぼんやりとしていたのか、バイオレット様が裏返った声を上げる。


「バイオレット。今日のお前、やっぱり変だぞ。ミーアでもそう思うんだからさ。やっぱり部屋に戻ろう」

「ご心配には及びません。少し人酔いしてしまったようでして」

 バイオレット様が曖昧に笑う。


「二人で一緒に来られたってことは、国王様達は納得して下さったんですか?」

「父上は説得出来たんだが、母上がどうしても駄目でさ。目を離すとバイオレットの屋敷まで行って抗議して困っているんだよ。聞く耳を持たなくてさ」

 テシス様は大きなため息を零しながら、げんなりとしている。

 どうやら、かなり厳しい状況らしい。


「あの……喉が乾きませんか? お飲み物をさっき頂いたのでよかったらぜひ」

「ありがとうございます。でも、今日は飲まないつもりなんです」

 私はバイオレット様が差し出してくれたグラスを受け取らず、首を左右に振る。

 今はそんなに喉が渇いていないし、もし喉が渇いたとしたら会場では絶対に飲まない。

 予知夢通りの未来には突き進むわけにはいかないのだ。


「なんだよ?」

「予知夢で視ちゃったんですよ。私がここで飲み物を飲んで死んでしまう瞬間を」

「それ本当に予知夢なのか? ただの夢じゃないのか。お前、自分の事を予知夢で視られないって言っていたし」

「そうなんですよ。でも、視ちゃったんです」

「気のせいじゃね? 考えてもみろよ。こんな大国同士の結婚式で毒殺なんてするわけないって。ましてや、なんでお前を殺すんだ。メリットねーだろ」

 確かにテシス様のいう通りだけど、この会場内だけで我慢をすれば良いだけなので苦にはならない。

 もし違ったら、それはそれで良かったっていうことだし。


「私が毒味をしますわ」

 バイオレット様は手にしていたグラスを口に付け傾けると喉を動かす。


「私が口をつけてしまいましたが、この飲み物は安全です。どうぞ」

「いや……その……」

 飲むつもりはさらさらない。だが、わざわざバイオレット様が毒見役をしてくれたため、受け取らざると得ない状況に。

 私がお礼を告げながらグラスを受け取れば、彼女はにっこりと微笑んだ。


 ――仕方がない。飲んだ振りでもするか。


 私は手にしているグラスを彼女の口紅が付いている場所とは反対側に口を付けてグラスを傾けた振りをする。

 うっすらと唇に付いたものを舐めれば、喉にピリッとした痛みが走り急に息苦しくなってしまう。

 するりと手からグラスがすり抜けて、床に打ち付けられたグラスの割れる音が響き渡る。


 まさか飲み物ではなく、グラスの方に毒が? 

 夢ではそこまでわからなかったため、完全に私の落ち度だと後悔が過ぎってしまう。だが、全てが遅かった。

 意識が段々と遠くなっていき私の体から力が抜け、崩れるように床に倒れ込んでしまった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。