旧魔導書図書館
ヴィヴィとカルドが無事付き合うことになったそうで、翌日カルド達から報告があった。
丸く収まったのでほっとした所で、私達はテスト期間に突入。
シオン君達に勉強を教えて貰ったため、テストの結果が予想していたよりもかなり良かった。
廊下に貼られたテスト結果で八位に入っていた。ちなみにシオン君とイザベラさんは首席と次席。あの二人は凄すぎる。
テストが終わったので、私達はいつもの日常に戻ることに。
放課後、私はシオン君に誘われてアカデミーの本館傍にある旧魔導書図書館を訪れていた。
アカデミーの図書館は元々離れに作られていたのだが、今は本館内に五年前に作られたものがあり使用されている。
そのため、ここを利用する生徒達はあまりいない。
館内は壁に嵌め込まれた大きな窓ガラスから注ぐ日の光によって明るく照らされ、館内の様子がはっきりと窺える。
二階建てになっており、艶々とした蜂蜜色の梁に支えられているのはクリーム色の壁と天井。
普通の図書館と同じように閲覧用のテーブルと椅子の他に等間隔に本棚が配置され、ぎっしりと本が収納されていた。
本棚と本棚の間には一人掛け用のふかふかのソファが設置されているため、座ってゆっくりと本を読むことが可能。
「ねぇ、シオン君。この体勢で本を読めるかな?」
私は首を傾げながら体を軽く後ろに捻り、自分が座っているソファの背もたれ――ではなく、シオン君へと顔を向ければ、彼の澄んだ灰色の瞳とかち合う。
本棚の間にある真紅の一人掛け用のソファにシオン君が座り、その上に私が彼に抱き締められて座っている状態だ。
「ミーアは本を読みたいのか?」
「シオン君が読みたいんじゃないの? だって、図書館だよ」
「旧魔導書図書館は、別名・恋人たちの憩いの場所だ」
図書館と恋人達って全く結びつかないのだが、どんな関係性があるのだろうか。
「旧図書館は人があまり訪れないから、恋人達の逢引の場所になっているんだ」
「えっ!?」
私は立ち上がると、辺りを見回す。
……ということは、館内には他にも恋人同士が?
急激に恥ずかしくなり、私は顔を覆ってしまう。
「生徒のほとんどが寮生だから、二人きりになれる場所なんて学校くらいだよ。だから、学校も大目に見ているんだ。ちゃんと見回りが来るから、担任に節度あるいちゃいちゃをしろって言われたけどな」
「先生が情報源なのっ!?」
「そうだよ。ミーア、今日はイザベラもカルド達もいない。だから、俺とミーアだけ」
シオン君が立ち上がると、私を本棚と自分の体で挟むように追い込む。
左右に逃げようと思ったけど、シオン君が腕を伸ばしてしまい、閉じ込められてしまう。
「ミーアは俺と二人きりになりたくなかったのか? 俺はミーアと二人だけになりたかったんだけど。ミーアを抱き締めたり、キスしたかった」
両想いになってからシオン君のクールキャラはどこに行ってしまったんだ? というくらいに恋愛に対しては情熱的だ。
二人きりになるとこうして甘々になってしまう。
「わ、私もシオン君と同じだよ」
腕を伸ばしてシオン君にしがみ付きながら告げれば、彼は喉で笑った。
「じゃあ、早速キスしよう」
シオン君が私の耳朶に触れるように唇を近づけ囁いたので、私の全身の血液が沸騰したかのように熱くなった。
「ミーア」
彼に名を呼ばれ、私がゆっくりと瞳を閉じた時だった。
ガチャっと近くで扉が開く音が聞こえたのは。
――えっ!?
大きく鼓動が高く飛び跳ね、私は咄嗟に瞳を開けて音のした方へと顔を向けてしまう。
ここからは死角になっていて窺えないが、おそらく奥にある扉が開けられたのかもしれない。
「……素敵ね。古い魔導書が沢山あるわ。全部を読むのにどれくらいの時を必要とするのかしら?」
「あのさ、魔導書も貴重かもしれないが、ここは恋人達の憩いの場所なんだ。一端勉強から頭を離そうぜ」
――カルドとヴィヴィだわ。
「憩いの場所?」
ヴィヴィも知らなかったようで、私と同じ反応をしている。
「恋人達の逢引場所」
「えっ!?」
わかるよ、ヴィヴィ。
ついさっき私と同じリアクションをしたため、気持ちを察することが出来た。
「俺達、なかなか二人きりになれないだろ。寮生活だし。だから、お前と二人の時間を過ごしたかったんだ。い、いっ、言っておくけど、節度は守るぞ!」
「節度!?」
「ここは先生達も見回りに来るんだよ。だから、過度のいちゃつきは無理だからその……節度あるいちゃつきを……」
図書館だから節度あるいちゃつき大事! と頷きかけたが、そもそも図書館といちゃつくって関係ないんじゃないのか? と首を傾げる。
「ん?」
なんかさっきから頬に何か弾力のあるものが当たるなぁと思って、意識を向ければ、シオン君が私の頬に唇を落ちしているのを確認。
そのため、私が声を上げてしまいそうになるが、悲鳴を上げることは阻止することが出来た。
彼の唇によって。
シオン君が私にキスをしたため、叫び声が広がることはなかった。
ゆっくりと唇が離れると、シオン君は自分の唇に人差し指をあてる。
「静かに」
「シオン君のせいでしょ!?」
私が小声で反論すれば、彼は笑いながら私を抱き締めた。
「ミーアがカルド達の事ばかりに気を取られて、俺のことを忘れるからだよ。ミーアの頭の中を俺で埋め尽くしたいのに」
「ごめん、カルド達が気になっちゃった」
死角だから聞き耳立てるのに集中してシオン君の事を忘れてしまっていた。
五人で行動するのも楽しいから好き。
でも、シオン君と一緒にいるのとはまた別なので彼の言いたいことも理解出来る。
「じゃあ、これからの時間は俺のことだけ考えて?」
「……うん」
私が瞳を閉じると、キスが落ちてきた。
+
+
+
窓ガラスがオレンジに染まり、どこからともなくカラスの鳴き声が届き、私達に帰宅時間を告げている。
そろそろ図書館も施錠されるため、私達は帰宅することに。
手を繋ぎながら扉の方へと向かえば、顔見知りの人達と遭遇してしまう。
「「あっ」」
四人で顔を見合わせながら声が漏れてしまった。
カルドとヴィヴィだ。二人は私達と同様に手を繋いでいる。
ちゃんと風紀を守るいちゃつきだったが、お互い気恥ずかしくなり、シオン君以外の顔が真っ赤に染まっていく。
「シ、シオン達も来ていたのか」
「……う、うん。ヴィヴィ達は今帰り?」
「夕方だからな」
「そうだよね。鍵閉まっちゃうし」
「あっ、そうだ。ちょうどいいから、シオンとミーアに渡しておくよ」
私とシオン君は顔を見合わせあうと首を傾げる。
何を渡されるんだろうと思っていると、カルドが鞄を開けて封筒を取り出した。
シンプルな真っ白い封筒で宛先が私とシオン君の名が書かれている。
「私達、婚約することになりました」
「婚約!? 早くない?」
「俺達もそう思ったんだけど、父上達がなぁ……お互い国益も見込めるし、早い方が良いんじゃないかって」
「そっか、カルド達は王族だから国同士がどうしても関わっちゃうよね」
「そうなんだよ。まぁ、認めて貰ったのは良いんだけれども、婚約パーティーを開くって話になったんだ」
「そっか。おめでとう!」
「おめでとう」
私とシオン君がお祝いの言葉を伝えれば、二人は嬉しそうに笑った。
「絶対に行くよ。なぁ、ミーア」
「うん!」
シオン君の言葉に同意するように頷いて気づく。
予知夢に段々近づいていることを。




