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第11話 エルフの里~捜索

投稿方法が変わるということで出来上がった話を投稿してみます。

「改めて名乗ろう。儂はエルフの里長をしておるアポールという」

「えっ!? 長老そんな名前だったんですか!?」

「……なぜあなたが驚くのですか?」

「生まれた時から長老と呼ばれていたからそういう存在なのだと思ってました」

「嘆かわしいのう。じゃから儂らエルフは衰退していくんじゃ。引き籠ってからどれほどの時間が経ったか……? 一週間ぐらいかの?」

「そんなわけないでしょう」

「長老は最近ボケが始まっている。まあ、問題はないから気にしないでくれ。話は普通に通じる」

「……それは呆けているのかボケなのかわからないところですね」


「まあなんでもよいわ。それでおぬし等の目的については……おおよその見当はつく。其方の父、魔王の捜索だな?」

「……捜索?」

「エボル様の御父君は現在行方不明となっております。御母上それに私の先達であるほかのメイド達も連れて手がかりもありません。もう十年近くになります」

「十年!? そんなに長くですか!?」

「私は当時まだ見習いでしたのでエボル様のお世話を仰せつかって残りました。ですが、魔王様は姿を隠される少し前にここを訪れ世界樹の枝を持ち帰りました」

「枝を持ち帰っただと!? そんな話、聞いたこともないぞ!」

「ああ、儂が分けた。知っておるのは……ほぼおらんの。これは内緒じゃぞ? 怒られとうないからの」

「ちょ、長老……」


「言っておくが、儂もその時を最後に会っておらんぞ? そういう意味ではおぬしが最後に会った時よりも前じゃな」

「……そうですか。では、少し調べても?」

「本当はいかんのじゃが、約定もあるからの。じゃが、ちっくと待ってくれよ。ある程度情報操作をしておかねば大騒ぎになる。ここの主に見つかりたくはないからの」


「主? あなたが長老なんじゃ?」

「儂はエルフの長じゃが、ここの王ではないよ」

「……? そういえばここってどういう場所なんですか?」


 ミルフィーの疑問に対し、長老ことアポールは呆れたような視線を若いエルフへと向けた。

「なんじゃいパイナルそんなことも説明せずに連れて来たのか?」

「……必要ないと思いましたので。それにそちらのメイドが強引にでも連れて来いと煩かったもので」

「私のせいだと?」

「知っている者がいれば他の者も知っていると思っても仕方あるまい?」

 その言い草は拗ねているようにも聞こえるが、若干バツが悪そうでもある。

 そして、ここでいうことではないと思ったので言わなかったが、この人の名前も今知ったなと思うミルフィーだった。


「簡潔に言うとここは腹の中なんじゃよ」

「はら?」

「うむ。つまりは胃袋の中じゃ」


「えっ、えぇ~~~~!?」


「つ、つまり私達っていつの間にか食べられてたってことですか!?」

「そうとも言えるし、そうでないとも言えるの」

「……胃袋、そういったが、正確には胃袋の中にある異空間だからな。雨が降っても胃酸で溶けることはない」

「……? どういうことです?」

「そもそも、といいますが。ミルフィーあなたも自分のお腹に入れたものを取り出したりは出来ないでしょう?」

 よくわからないが、食べたものをそのまま取り出すことは出来ないということぐらいはわかる。


「あとは、ミルフィー好きな食べ物ってある?」

「えっと……プリンですかね?」

「プリンをさ、お腹いっぱいでもう食べられないって時に出されたとする。そうしたらどうする? 諦める? プリンなら食べれるって食べたりしない?」

「そうですね! プリンだったらお腹が張り裂けても食べちゃいそうです!」

 それはやめておいた方がいいと言われながらもミルフィーは言いたいことは分かってきた気がする。

「つまりここって別腹ってことですか?」

「そうだね。入る場所が違うって意味ではそうかも」


「ここな、竜魔王シッテルペルンの眷属が一体バリヴァオールの魔法で世界から切り取られた空間なのじゃ」

「……バリヴァオールって?」

「竜魔王も外の世界では脅威が薄れていっておるの」

「最近は暴れていませんからね。眷属までは記憶にないという者もいるでしょう」


「まあ、あやつについては儂も姿を見たわけではない。いきなりここを切り取って声でそれを伝えて来たんじゃ。それを証明するように一定の場所まで行くと元の場所に戻るようになってしもうた」

「ですが、長老はさすがですよ。外の世界に出る術を見つけたんですから」

「……まあそこは先人の意地でもあるな。ついでにいうとそんなに難しいわけではなかった。バリヴァオールの目的は儂らエルフではなかったからの」

「えっ? じゃあ、なんでそんなことを?」

「君も見たじゃろう? あの偉大なる姿を。奴のいやもしかしたら竜魔王の目的かもしれぬがそれは世界樹を世界から隔離することだったんじゃ」


「つまり、エルフはついでってこと。だからエルフだけならここから逃げることも可能……」

「――ですが、エルフにとって世界樹とはどこにいても存在を感じられる存在。まさしく神に等しいことからエルフで世界樹を見捨てると考えるものはまずいません」

「左様。逃げる時は世界樹とともに。出来ぬのなら世界樹とともに朽ち果てるもの儂らの運命じゃ」


 覚悟を決めたアポール、そして生意気そうなパイナルもその言葉には従っているようだった。


「エルフが消えるのは別にどうでもいいですが、世界樹は財産として重要です。エボル様、如何いたしますか?」

 その覚悟に待ったをかけたのはマティサだった。

 彼女はあくまで世界樹が大事と言っていたが、ここを放棄されることを避けようとしているようにも感じられた。

 普段と違う必死さを。……付き合いの短いミルフィーがそう感じただけなのかもしれないけど。だけど、いつもならエボルを唆すような言い方はしない気がする。


「そうだね。今の話を聞いてたら試したいことが出来たし。それに手がかりだけを求めて来たけど、それで父さんの故郷が滅ぶのを黙ってみているのも違うからね」





「――本当に可能なのか?」

「エボル様を信じなさい。……と、言いたいところですが、こればっかりはどうなるかやってみないとわかりません」

 相手は何といっても、魔王の眷属。

 エボルも魔王の息子とはいえ、血筋だけでは超えられない壁はある。竜魔王の眷属についてはほぼ子供のような存在でもあるのだから。


「パイナル、ぬしも戦士ならば覚悟に水を差すではない。ダメだったらその時はこれまでの覚悟に殉ずるのみじゃ」

「……そうですね。世界樹の誇りとともに!」


「大丈夫です! エボル様なら絶対にやってくれますって!!」


「それじゃあ、始めるよ~」

「……さあ、竜が出るか出ないかの賭けを始めましょう!」


 エボルの提案はシンプルだった。

 ここが異空間だというのならば同じく空間系の魔法を使うエボルの魔法で対処できるのではないか?

 もちろん、その方法はエルフも試している。だからこそパイナルのように戦士をもとの世界に派遣することが出来ているのだ。

 ただし、先程長老も言っていたようにそれ自体は里を元に戻すことに比べれば容易いことだった。それでも里の優秀な空間系の魔法使いが必要だった。


 それに正確に言うとエボルは空間系ではなく、の魔法使い。親戚のような関係であり、一部は似ている魔法も存在するがそれでどこまで行けるかは未知数。


「空間そのものの時間を操作するのはさすがに難しい」

 世界樹を使った進化のおかけで最大魔力量は格段に増加している。以前までの魔法を使うのなら問題はない。

 なら、一点集中するとどうだろうか?


 エボルの目的はこの切り取られた異空間のどこか、それこそ針の穴でも開けること。


「……おそらくとしか言えないけど、世界樹だけじゃないと思うんだ」

 切り取られた世界が本当にここだけなのか?

 こんな大規模なことをわざわざエルフにだけ行う意味があるのか?

 そう考えた時、エボルは否と考えた。きっと他にも被害に遭っている場所があるはずだと。

 規模は分からない。

 ただ、長老が胃袋と言っていた。これはもしかしたらバリヴァオールが言っていたのかもしれないが、そうなってくると容量があるはず。


 容量があるのなら当然使用者の限界も……!


「世界なんて収めるには役者不足なんじゃない?」

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