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dreadnought/ドレッドノート  作者: 有角弾正
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dreadnought/ドレッドノート

 第六話 dreadnought/ドレッドノート




 ムラマサは2秒ほど固まり、拳銃をサッとズボンの後ろポケットに押し込むと、無言で再びドアに近付き、解錠した。



 「あっ!何で開けんだよ?!」

俺は叫んだが、既に遅かった。



 冷たい外気。



 少し屈んだ、背の高いスーツ姿の外国人男性が入って来た。


 その後に続いて、サングラスが二人。


 やはり背の高い男達、三名とも揃いの黒いスーツだ。



 先頭で入って来た、高そうなコートにマフラー、オールバックの金髪紳士。

四十代半ば位かな?


 後ろの二人は若いな。



 三人ともスゲースタイル良い。

何か映画俳優みたいだ……。


 う~む、この狭い安アパートにはめちゃくちゃ場違いだ。



 リーダーっぽい先頭の金髪がムラマサの顔を見て、ニッと笑い

「ふむ、開けてくれた君、話が分かるようだな、助かるよ。


 さて、急な話で驚くかも知れんが、私はこの惑星から遠く離れた星の将軍だ。


 少し前、我が軍の兵器開発の最高責任者が、全宇宙史始まって以来の、最強の兵器と噂される物を独自に開発し、

それを持ってこの星に逃亡したので追い掛けて来たのだ。


 あぁこれ、君達宛の物かな?」


 革手袋の片手を拡げると、後ろの部下みたいなスキンヘッドのサングラスが平べったい箱を差し出す。


 オールバックの将軍は受け取り、そして俺に差し出した。



 「えっ?!あっ!はっ、はぁ……」



 他の星から?

将軍って何する人だっけ?!


 えっ?この人達エイリアン?!

普通にカッコいい外国人さん達なんだけど?


 最強の兵器?!

何だそれ?つか、なんつー不吉な言葉だよ!



 俺はいきなりの展開に頭が付いていかず、将軍と名乗る、渋いハンサム男の顔、

そして眼前に突き出されたピザの箱を代わる代わる見、オロオロするばかりだ。



 そんな取り乱した俺を、チラリと見たムラマサが、いつもの調子で

「へー、そりゃ遠いとこまで御苦労なこったな。

で、将軍様、ご用件は?」


 ポケットに両手を突っ込み、

華奢な両肩をすくめた。



 う~む、なんでこいつ落ち着いてられんのかなー。


 つーかそこは敬語にしといた方が良くねぇか?


 俺はいい加減、色々と驚くのに疲れ、

手の上、美味そうな匂いのするピザの箱をぼんやりと眺め、

やっぱり出来立てピザって熱いなー、とか思いながら、現実味のない感覚で将軍を見た。



 ハリウッド俳優みたいな将軍は眉をひそめ、ちょっと不満そうな顔

「ああ。情けない話だが、我々軍はその最強にして最凶の兵器、一体それがどんなものか全く解らんのだ。


 とてつもなく危険な物に間違いはないらしい。


 博士の助手達からは漠然とした情報しか聞けなくてね。


 異口同音に「最近の博士は、恐ろしい物を造ってしまった、と狼狽し、取り乱していました。」


 これだけだ。


 で、我々軍は博士を追い詰め、1度は首尾よく拘束した。

が、博士は高性能な戒めを完全に破壊、しかる後、見事に脱走されてしまってね。


 勿論、我々は全軍をもって更に追走したのだが、博士から兵器、その情報を奪う前に誤って彼に深傷を負わせてしまったんだ。


 で、我々が次に博士を見付けた時には死亡していた、という訳だ。


 今朝の事だな。」


 将軍はここまで話すと、ソファーの背を撫で、優雅に腰掛けた。


 信じられない程長い足を組み、俺の手元、紙のケースを見る。


 靴は脱いで欲しかった……。


 「大まかな経緯はそんなところだ。


 それは食品だな?

不躾で悪いが、少し頂いても良いかね?


 我々の星の文明はこの星より遥かに先を行っていてね。

特にエネルギーの経口摂取は完全に効率化されていて、我々が口にするものといえば、

生まれて、125歳で死ぬまで、味のないペーストだけなんだ。」


 革手袋を置き、勝手にピザのケースを開けた。


 「この星に来て我々は驚いたよ。


 販売されている食品に含まれる、多種多様な生体に有害な添加物の豊富さ。


 またそれにも増して、輝くばかりの美しい味の数々にね。


 フム、こいつも美味いな!」


 ウインクし、ビヨーンとチーズの伸びる、ピザの二切れ目をムシャムシャとやりだした。



 ホントにエイリアンか?この人……。


 どう反応して良いものか考え付かず、俺は呆然とし、将軍と、その背後で姿勢を正した、その部下らしき二人を見ていた。



 ムラマサ「ふーん。ところでグルメ将軍さんよー、ちょっと聞いていいか?


 ここにそれ持ってきた人間が居ただろ、そいつどした?」

床を指差しながら聞いた。



 そ、そーだ!ピザの配達員はどこに行ったんだ?


 金払わないと、ピザを渡すわけないし。



      ま、正か?……。



 将軍はピザのケースに貼り付けてあったウェットティッシュを取り、上品に口を拭い

「あぁここだ。」


 コートのポケットから何か出し、テーブルに無造作に放る。



         ん?



 転がる様はまるで大きなサイコロ……。


 俺達、地球の三人はそのキューブに近付き、食い入る様にソレを眺める。



 それは半透明のグリーンで、冷凍庫で作る四角い氷みたいな、ガラスのような、小さな立方体だった。



 その中央に小さな人間が居る?!



 その深海に沈んだような小人は、体育座りみたいに膝を抱えて動かない。


 被ったヘルメットと服装、手の辺りに漂う黒いケースからすると、どう見てもピザの配達員にしか見えない。



 「なっ?!なななな、何だよこれ?!」

勿論ただのフィギュアなんかじゃないだろう。


 俺はこの物体の放つ、何とも言えない不気味さに、吐き気がするほど恐怖した。



 将軍「あぁ、心配は要らん。これは生きている。

まだ、な。


 フフフ、これで撃つとこうなるんだ。

原始的な君達には少々驚異かな? 


 ま、もっとも、博士には全く効かなかったがね……。」


 右掌を開き、手の甲をこっちに向け、金の指毛の生えた中指に光る、飾りのない、漆黒の指環のような物を見せた。



 ムラマサが鋭い目で

「まだ、だと?じゃそのうち死んじまうのかコイツ?」

低い声で将軍を睨む。



 将軍「ん?あぁ、かなり不自然な空間固定だからな。

ま、そのうち、な。


 フフン、原始生物一匹、今はどうでも良いじゃないか。


 そんな事より君、我々が機能停止させた博士の体を調べた後に現れたね?


 騒ぎになると面倒だから、我々はひとまず近くの物陰にいたのだよ。


 どうやら博士には僅かに息があったようだな。


 で、何か受け取っていないかね?

そう、兵器の様なものなどを、な。」


 将軍の青い瞳が爛々と輝き、容赦なく俺を威圧してきた。


 先程までの、熱々ピザをかじり、軽口を叩いていた雰囲気は消失し、西洋ハンサムは急速に軍人になった。



 俺は腹の真ん中がドーンと重く、冷たくなり、情けなくもガタガタと震え出した。



 「い、い、い、いえ、お、俺は、な、何も……」

俺は将軍の猛禽類を思わせる瞳から目を伏せた。



 将軍は目を閉じ、何度かうなずいた

「そうか。うん、何も、か。うんうん、

フフ、フフフ……、フフフフフフ……フフッ……アハハハハ!アハハ、アーッハッハー!!」



        ピッ!!



 将軍は笑顔でのけぞったまま、

ろくに狙いもつけず、スーツの懐から抜いた黄金の拳銃でキッチン方向へ射撃した!


 黄金の銃口から飛び出した蒼白い、短い光線の様なものが虎南の胸元に当たり、火花を散らし、目も眩むような光が弾けた。



 声もなく、食器棚をめちゃくちゃにしながら倒れる虎南。



 ムラマサが見たこともないような形相で

「てめぇ!何しやがる?!!」

叫ぶと、虎南に駆け寄った。



 撃った!撃ちやがった?!

レーザー?!ビーム?!

はっ!虎南!!!



 「動くな!」



 付き人?部下?の一人、黒髪ショートボブの外国人が、将軍と同じ黄金の拳銃を抜き、ムラマサに向ける。


 「くっ!」

立ち止まるムラマサ。



 将軍は明後日の方向を見ながら、さも面倒臭そうに

「我々は君達と姿形は似ている。

が、決定的に異なる所がある。


 我々は君達よりも嗅覚が特別優れているのだ。

知能の高いものは、例外なく嗅覚も高い。

単純に、嗅覚は生命を護るセンサーだからだろうな。


 そうだな。

うん、君らの数億倍、か。


 だから君達が分泌するアドレナリン、その他のホルモンの匂いを嗅ぎ、嘘をついているか、攻撃的姿勢にあるか、等、正に手に取るように分かるのだよ。


 という訳で君、次は真面目に答えたまえ。


 博士から何を受け取った?

武器か?それとも計算式か何かか?

正しく、そう、正確に答えたまえ。


 さぁ、早く。」


 もう一人、スキンヘッドの外国人風エイリアンも、黄金拳銃をムラマサに向けた。


 ムラマサは自分に向いたショートボブとスキンヘッドの銃口を見つめ、青ざめた顔で俺を見る。



 人質って訳か!!

くっ!!もうだめだ!!



 コイツらの言っている最凶の兵器とは多分、何でも造り、消してしまう能力、俺の両手首の事だろう。



 こんな簡単に人を撃っちまう奴等に渡してしまって良いのだろうか?


 あぁ、エイリアンの武器で撃たれた虎南は大丈夫だろうか?!


 今度はムラマサがやられてしまう!


 やはり俺の腕は切断されてしまうのか?


       

       イヤだー!!



 十中八九、兵器の秘密を知ってしまった俺は始末されるだろう……。


 し、死にたくない!!

でも、ムラマサが!!



 「わっ、分かりました!言います!

これです!この手です!この掌から頭で考えた物が出ます!」

俺は必死で左手を将軍に突き出した。



 将軍はそれを斜に見るとつまらなそうな顔、そして鼻息。


 「最強の兵器はそんなものじゃない。


 それは我々の星では、ごくごく当たり前のユニットだ。


 任務先での生活必需品、また、その星の文明の発達に合わせ、必要ならば金銭等を造る為のものだ。


 単純な分子組み換えで水、その他の物質を異なる物質に変換する物で、軍人なら標準の基本装備品だ。


 そんな物ではない!我々が欲しいのは博士の遺産、最凶の兵器だ!


 そのユニット以外に何を受け取った?!さぁ言え!!」


 俺の額に黄金の輝きが上がって来た。



 えっ?!この左手はこいつらからしたら、ありふれた道具、誰でも持ってる珍しくもない物だったのか?!



 俺は死の銃口を見つめ、喉を鳴らした。



 やはり右手か?!右掌の全てを無にする能力の方だったのか?!



 将軍「早く言いたまえ!!他に何を受け取った?!


 最低限の受け答えの出来る程度まで、加減しながら、君の身体を破壊しても構わんのだよ?!


 我々は博士の兵器で、全宇宙の敵対勢力に討って出る。

 

 この星も含め、全てを支配するのだ!」


 いよいよ銃口が俺の額に強く押し付けられた。



 「痛っ!」



 俺は怯えながらも必死に考えた。


 ん?もしかしたらこの右掌で戦えないか?ひょっとしたら拳銃の光線も無に出来ないか?



 イヤ、ダメだ!

万が一、首尾よく将軍1人倒せたとしても、残る部下二人に撃ち殺される!



 第一、ろくに喧嘩もしたことのない俺が、エイリアン、しかもそのバリバリの軍人とやり合う、そんな度胸、俺にはない!!


 あぁー、もうだめだぁーー!!!


 俺の中での俺首脳会議にて、満場一致で無条件の全面降伏が採択された……。


 その時だ。



 「ヌハハハハ!」

ムラマサが突然笑い出した。



 何だよ?ムラマサ、お前、恐怖でおかしくなったのか?

俺は絶望で目眩がしてきた。



 将軍「ん?何がおかしい?精神が崩壊したか?


 ふむ、原始生物を少々追い詰め過ぎたかな?


 ふん、この銀毛は役に立たなくなったな。


 おい、やれ。」

首を振り、部下に指示した。



 「ムラマサ!!」

俺は叫んだ。



 ムラマサはタバコを出し、ライターを鳴らし

「河村、まぁ落ち着け。」


 紫煙を昇らせた。



 将軍「何だこいつは?


 ん?

こいつ、全く恐れていない。何だ?本格的に壊れたか?」


 自分の金髪オールバック頭を指差し、高い鼻をひくつかせる。



 ムラマサは腕を組んで

「うるせー犬野郎。今から良いこと教えてやる。

さっき地球人は原始的、とか言いやがったな。確かにそうかも知れん。

だがな?地球には恐ろしい兵器があるんだよ!」



 ん?意味不明だ。



 そりゃ、どっかの軍隊とかには、銃とか、ミサイル、核兵器だってあるだろう。

でもこの状況で何を言ってるんだ?



 もしかして、俺に掌サイズの武器でも出せと言ってるのか?



 ムラマサ、俺には闘うなんて無理だぞ?!


 俺はムラマサに夢中で首を振った。



 将軍と部下達が笑い出す。


 将軍「やっぱり壊れたな。何を言い出すかと思えば、兵器?地球の兵器だと?


 馬鹿馬鹿しい!そんなものどこにある?


 もしや、お前のポケットの火薬式の武器の事か?」



 そうだ!デリンジャーがあったな!



 ん?でもデリンジャーは単発銃だぞ?!

一発撃ったら、また弾を込めなきゃなんないんだぞ?!

三人相手は無理だ!!



 ムラマサ「ヌハハハハ!バカ犬め!

これじゃねーよ。


 地球の最凶兵器はなぁ、銃なんかじゃねー!

生物(バイオ)兵器だ!もうすぐここへ来る!」



 はっ?!何だそれ?!



 ここに来る?!



 その時、馴染みのある、どぎつい香りがした!


 この部屋はエレベーターから直ぐだ!



      き、来やがった!!


        奴だ!!



 部下の二人達が怪訝な顔で、鼻で息を吸う。


 直後。


 「グガッ!!!」

いきなりショートボブが鼻血を噴いた!



 「ど、どうし、たはぁっ!!あぐはぁっ?!!」

スキンヘッドも盛大に鼻血を噴く!



 二人の部下達は痙攣し、膝から崩れ、床に両手をつき、将軍を見上げた。



 「うっ、あ、」スキンヘッドが最期にうめき、二人はうつ伏せに倒れた。



 将軍「おい?!どうした?なんだ?うっ!グガッ!!!な、何だこの香りは?!!」

慌てて鼻を押さえた。



 ここでインターホンが鳴る。



 ムラマサが笑う

「ヌハハハハ!どうだ参ったか?これが地球産の最凶生物兵器だぜ!」



 将軍「な、何という臭いだ!!き、き、貴様らはなぜ、立っていられる?」

脂汗の必死な形相で聞いた。



 ムラマサ「俺達は少しづつこのバイオハザードに慣らしてきているからな!


 言っておくが、夏場はこんなもんじゃないぜ?ヌハハハハ!」


 玄関を開けた。



 そこには、黒い三つ編みの小柄なメガネ美人が、白のダウンジャケットを着て立っていた。


 色白で瞳が大きく、ほんの少しだけタレ目の25歳、俺達三人のバイト先の雇われ女店長、その名も腋テロ長(ワキガテロリズム店長)


 腕元(かいなもと) (かおる)である。



 薫「もー!何で君達出勤して来ないのよー!

今お店大変だよー!

河村君いきなり辞めるとか言うしー!コラーぷんぷん!」

ハスキーな声でまくしたて、小さな頬を膨らませる。


 台詞だけ見るとアレだが、実際の本人は俺より四つも年上だが、めちゃくちゃ可愛い。


 ただし!

このゴリゴリと脳髄を焼く、速効性の両腋のバイオハザードがなければ、だ!



 しかも、本人は重度のチクノウらしく、自分の猛毒に全く気付いていない。



 神は彼女に最凶の矛、最強の盾という二物を与え、天然の殺戮兵器を造りたもうたのだった。



 将軍は、ふらつきながら部屋の奥へ逃げる。



 ムラマサ「おー腋ハザード!遅かったな。ま、上がったら?」



 薫「えー。村田くん、また変な名前で呼ぶー。それーゲームかなんかの名前でしょー?


 それってあたしに似たキャラクターか何か出てくるのー?


 あっ!虎南君も寝てるー!

あれーっ?お酒飲んでるー?酷いぞー!お店休んで盛り上がってたな~!ぷんぷん!」


 部屋に入ってくる。



 「あー!外国人さんだー!寝てるー?何でー?


 あっ!奥の人カッコいいー!」

将軍が鼻を押さえたまま、奥の壁に背中をぶつけた。


 ムラマサ「んー、まぁホームステイみてーなもんかな?


 ホラ、腋ハザード。挨拶挨拶!


 外国人だから握手、いや待てよ、そーだ!ハグだハグ!


 早く早く!日本人女が常識ないと思われちゃうぜ?!」

最高にニヤニヤしながら将軍を指差した。



 将軍の脚は毒が回ったか、痙攣している。


 黄金拳銃などは、とうに床に落とし、右手で鼻、左手で薫を遠ざけるように振っている。



 薫「あーそっかー!あたし1人のせいで日本人のイメージが悪くなると良くないねー。


 じゃあちょっと恥ずかしいけど薫、頑張っちゃうぞ~!」両手をガッツポーズのようにし、気合いを入れた。


 ウム、台詞だけ見るとかなりアレだが、ハッキリ言って可愛い!


 しかし(略)



 いつの間にか虎南が腕を組み、ムラマサの後方に立っている。


 「店長、こんばんは。」


 後で聞いたが、虎南は暴力は嫌いらしく、寝転がって、どう対処すべきか考えていたらしい。



 ムラマサ「おースーパーヒーロー、大丈夫だったみてーだな。


 あ、腋ハザード!ちょい待て!

お前、挨拶ハグしようってのにダウンジャケットはねーだろーよ?


 相手さんに失礼にあたるだろ?

ホレ、脱いで脱いで!」


 痩せた手で手招きする。



 薫「えー!村田君達が居なかったから、仕込みとか大変で、汗ベタベタだよー?」


 ダウンジャケットの前を庇うように握り、

赤くなる。



 将軍はいよいよ朦朧とし、虚ろな目で天を仰いでいる。


 ハハハ、今頃息を止めたところで無駄なんだよな、コレ。

初弾で脚に来たら終わりだぜ!



 ムラマサ「バカ、挨拶だろ?挨拶!

大体、外国人は少々汗臭い方が好きだからな、心配すんなって。


 つか、むしろその程度は御褒美っつーやつだよ!!


 さっ!大和撫子代表!行け!地球の恐ろしさを教えてやれ!!」


 ダウンジャケットを脱がせ、小さな肩を叩く。



 薫は両腋が茶に変色した白いシャツ姿で、

もじもじしながら将軍ににじりよる。


 うえっ!今日は忙しかったせいか、茶染みが、溶けたキャラメルかハチミツみたいにヌラヌラと光ってやがる!!


 見る分には非常に愛らしい最臭兵器は、

コクン、と小さくうなずき、意を決したようだ。



 「よーし!薫行っきまーす!

hello!Nice to meet you!!

マイネームイズ ka o ru!!」



 悪魔はエイリアンに万歳で体当たりした。



 将軍の絶叫!




 全宇宙は救われたのだった。




 

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