星野洸の朝
洗面台の前で身だしなみを整える俺。鏡に映るのは、黒髪の短髪に、整えられた少し太めの眉、髭の剃り残しなし、29年間、見慣れた地味で垢抜けない顔をした俺。これでも、生徒にはそこそこ人気なんだぞ。一応まだ20代だし…。
身だしなみを整えた俺は、居間にいる王子君のもとへ…って、王子君、座布団を枕にして寝てるし!しかも髪はまた黒髪に戻ってる…。ジャンケンするために早起きして、飯食ってお腹いっぱいになって寝るとか…自由すぎるだろ!
「ほら、王子君。起きて!出かけるよ。」
「…眠い。」
「こら、起きないとお家に帰れないよ!俺、朝は『お●よう日本』だから、俺ん家じゃ『め●ましジャンケン』できないよ!来週のプレゼントは確か、秋田産あきたこまちだよ。」
あ、起きた!王子君はきっと日本で一番、お米が好きな幼稚園児だね…。
交番へ向かう俺と俺におんぶされた王子君。靴がないんだから仕方ない…。
「ねえ…お巡りさんは…本当に噛みつかない?」
「だから、お巡りさんは犬じゃないから大丈夫だよ…。」
王子君は、黒髪になると見た目の年相応の話し方になる。銀髪になると大人びた話し方になる…何でだろ?
「ねえ、王子君はいくつなの?」
「14歳…。」
「嘘ついちゃだめだよ…。どう見ても、5~6歳くらいでしょ…。」
そして、交番についた。これで、王子君ともお別れだね…。
「おはようございます。すみません、迷子の子どもを見つけたんですが…。」
「おはよう、お兄さん。昨晩は世話に成ったな…。」
え?お巡りさん…何言ってんの?
そのお巡りさんは、綺麗に整えられたオールバックの髪型に、顔は俺よりイケメン(自分で言ってて悲しい…)で色つきメガネをしていて…お巡りさんの格好をしているけど…。あんた…まさか…!
「昨日の怖そうなお兄さんじゃないですか!…あれ、もしかして転職したの?」
「そんな訳あるか!お前らをここで待ち伏せしていたに決まってるだろ!!」
「あんた、昨日、王子君のバ●ス受けてやられたはずじゃ…。」
俺の左の頬を弾丸がかすめて行く…!いきなり発砲したよこの人!バ●ボンの本官さんかよ!
「つべこべ、言ってないでとっとと、その子をこちらに渡せ!」
「王子君、昨日みたいにこの怖そうなお兄さんにバ●スを!…王子君?」
俺におんぶされている王子君は、すやすやと寝ていた…。
「王子くーん!起きてー!!俺、殺されちゃうー!!」