ある夜のこと
世の中には、ひどい親もいたものだな…。
俺、星野洸、29歳独身(絶賛彼女募集中)、中学教師(社会科)は、その夜、男の子を拾ったのだ。
だって、アパートまでの帰り道(徒歩)の公園のベンチに幼稚園生くらいの男の子が一人で座ってるって…。どういうことだよ…。もう、夜中の11時だぞ…!教職員として見過ごすわけにはいかないだろ…。
「君、名前は?」
「…王子。…おじさんは?」
「…おじさんは、やめろ。俺はまだ一応20代だ!お兄さんの名前は、星野洸。」
名前が『王子』って、最近の親は何で普通の名前をつけないんだ…。何で、庶民の子が王子なんだよ。
「ふーん。」
「それで、王子君は、お家どこなの?」
「…お家はあそこ。」
王子君は、満天の星空を指さす。ふざけてんのか…。
「王子君、お兄さんは真面目に聞いてるんだよ。」
それでも、王子君は頭上の星空を指さし続ける…。勘弁してくれよ…。星の王子様ですか…?
「本当だもん…!」
やばい…泣き出しそうだ。とにかく、交番に連れて行こう。この子は、俺じゃ手に負えない。あとは、国家権力様にお任せしよう…。俺、税金ちゃんと払ってるし…。
「ごめんね。そうか、王子君はお星さまの上に住んでるんだね。でも、お兄さん地球人だから空の上のことはわからないんだ。だから、何でも知ってるお巡りさんのところへ一緒に行こう。」
「…でも、知らない人について行っちゃダメなんだよ?」
「…そうだね。でも、お兄さんは悪い人じゃないよ。中学校で先生をしてるんだよ。」
「でも、こないだニュースで、学校の先生が女の子に悪いことをして捕まったって言ってたよ…。」
「…そういう先生もいるけど、お兄さんは、子どもには興味がないから大丈夫だよ…。」
「お巡りさんって犬なんでしょ…?ぼく、犬怖い…。」
「大丈夫だよ。ちゃんと人間のお巡りさんだよ。」
「噛みつかない…?」
「だから、犬じゃないって…。」
はあ…。本当にこの子の親は何やってんだよ…。こんな時間にこんな小さい子ひとり置いて…。