そんなこんなで異世界へ
女神様が来てから4日が過ぎた。今日は待ちに待った転移する日だ。今日から一週間は有給を使って休みを取ってある。4日間は海なし県の人が海に行くかのごとくわくわくしながら仕事をしていたのだが楽しみすぎて仕事が手につかず普段はしないミスなどを多々やってしまった。会社が終わってからはホームセンターに行ったりして準備を整えている。ホームセンターに行って何の準備をしているかって言うとさすがに丸腰では行けないのである程度の武器を買いにいったりもしていた。
「とりあえずこれだけ揃えれば大丈夫だと思いたいもんだ。後は女神が来るのを待つだけだけど」
という呟きと同時にドアホンが鳴った。俺は玄関に向かいドアを開けるとそこには毛皮のロングコートを着て$サングラスを掛けた女性がいた。まるでどこかの夫人のようだ。それに夏なのに毛皮のロングを着ているせいか物凄く汗をかいている。
「芸人の勧誘なら間に合っています。他をあたってください。それか東南アジアに帰っていただけませんか?警察呼びますよ。」
と俺は目を伏せながらドアを閉めようとすると物凄い勢いでドアの縁をつかまれて物凄い力でドアを開かれた。あれ?これデジャブ?つい最近も同じ事あったよね。
「ちょっとそれは酷いんじゃない?」
「もしかして女神様ですか?何ですかその格好?かもられたんですか?今日日この日本でそんな格好して歩いてる人はいませんよ?」
「えっ!嘘でしょ?今流行の装いって言うから買ったのに。」
「確かに流行ってるかもしれませんね。でも季節を考えてください今は夏ですよ!誰がそんな暑苦しい格好をするんですか!しかもパッと見ただけで解かるこの光沢のない毛皮。この明るい時間なのに光沢のない毛皮って何ですか?あれですか?野良猫の毛皮ですか?ノミがたくさんいますよ。とりあえず脱いでから部屋に入ってください。後そのふざけたサングラスも取ってください。」
しぶしぶと言われたとおりにコートと$グラスを外して部屋の中に入ってくる。やっぱり暑かったんだろう涼しそうにしている。炎天下の中あんな格好で来たんだからのども渇いているだろうから俺はアイスティーを出してから女神様にファッション雑誌を何冊か渡してこれを読んで貰う事にした。こういう服が流行りなのねーとかいいながら女神様は渡されたファッション誌を読んでいる。俺がファッション雑誌を持ってい
る理由は営業で使うトーク術の幅を広げるために読んでいるものだ。結構役に立ったりもしている。
「その雑誌は差し上げますから後で読んでください。本題に入りましょうか。」
そういうと女神様は空間からあるものを取り出した。取り出したのは見るも懐かしい引き出しのついた机だ。
「これが今回ニルバースに行くための転移補助の机です。初回は私が魔力を通しますので次回からは自分で行ってください。そしてこれはサービスです。」
といって渡してくれた物は肩掛けバックだった。どうやら女神様が空間から取り出したような事をこのバックでも出来るように細工してくれた物らしい。しかし机の引き出しを見るとそこから21世紀のドラム缶ボディーが出てきそうな気がする。
「一応無制限で入れることが出来ますがあちらの世界では国宝級のアイテムになりますので使い方は気をつけてください。その中にこの机の使用法とニルバースからこっちに戻ってくる際に使う魔法陣の使い方を書いた用紙が入ってますからなくさないようにお願いしますね。」
「おお!ありがとうございます。それではこれが残りです」
と自室から残りのお金を持ってくると女神様はお金ーといって飛びついている。ひとしきり戯れるとせっせと空間にしまいこみ何事もなかったように取り繕っている。俺は女神がお金に飛びついて戯れている間に貰ったバックの中に持っていくものを入れて準備万端にして待っていた。
「おほん。それでは魔力を流しますね。それではニルバースの旅を楽しんできてください。」
と女神が魔力を流すと机には何も変化が見られなかったが引き出しはまばゆく輝きだした。俺は勇気を出して引き出しに飛び込んでいった。
「さて。仕事も終わったしこれから雑誌に書いてあるお店に洋服でも買いにいきましょう!」
と何処までものんきな女神様だった。
薄暗い森に俺は立っていた。つい先ほどまで自分の部屋にいたのにだ。
「おー・・・本当に転移したのか?いやまだ地球のどこかの秘境という事もないわけじゃないな。それでも十分に凄いけどな。とりあえずここが異世界なら自分の強さを確認しておかないと。王道にステータスって言えば見えたりするのか?」
と頭の中に自分の強さが流れてきた。
HP 10 MP 0/0
力 3 体力 7/7 速さ 4 器用さ 5 運 6
うん。平均5だね。一般人だね。でもこれでここはニルバースの世界という事がはっきりと確認できた。
「さて確認できたわけだけれどもMP0って間違いなく帰れないよね。詰んじゃった?」
と呟きながら考えてみるとモンスターからMP上限を引き上げる珠が出るとか本に書いてなかったかな?という事を思い出してバックから取り出して確認見ると確かに書いてあった。
「それじゃあ当面の目標として帰還できるまでのMPを引っ張り上げるために魔物を刈るってことか。まさか早速殺生をする羽目になるとは・・・。まあしょうがないね。とにかく移動するか。」
と森の中をしばらく歩いていると遠くに黒い何かが動いているのがわかる。
「あれひょっとしてモンスターだったりするのか?もう少し近づいてみよう。」
そう呟いて慎重に黒い何かに近づいていく。黒い何かの全形が見えるようになってわかった。アレは蟻だった。
「にしてもでかいよなー・・・あんなの地球にいたら大騒ぎだろうな。やっぱり異世界だな。とりあえずアレをどうやって倒すかだよなー・・・見た目蟻だけどあの顎でもしかしなくても楽勝に身体切断されそうだし。」
等と呟いていたら蟻の化け物はその顎で木を切断した。
「やばいってあれは。」
しばらくデカイ蟻の観察をしていると身体の割りに足が細いためか動きがとてもゆっくりな事に観察して気づいた。
「あれ?このスピードなら戦えそうな気がする。もしだめだったら逃げるという方向で行こう。作戦名は命を大事に!だな」
俺はバックからホームセンターで買ってきた物の中から鉈と斧を取り出した。鉈は基本的には近接で使おうと思って購入しているいわばメイン武器で斧はやっぱり投げてみたいという衝動から購入したものだ。あこがれるよね地獄の村にパンツ一枚で戦いに行く騎士に。両手に持ってデカイ蟻に気づかれないように近づいていく。どうやらデカイ蟻の索敵能力はそんなに高くないようだ。斧を蟻の頭にめがけて投擲をする。するとガキン!という音とともに頭に向けて投げつけた斧が弾かれてしまった。この世界の蟻の甲殻は硬いようだ。今の投擲で蟻がこっちに気づき向かって来る。俺は鉈を握り締めて作戦を考える。
「甲殻が硬くて刃が通らないとすればやっぱりあの細い足を切り飛ばして動けなくするのが安全かな?」
と作戦を口に出しながら向かって来る蟻の足に向かって鉈を振りかぶる。
「ギギッ」
という悲鳴に似た音を出す蟻。足のほうは甲殻よりは硬くないのかすんなり切り落とせた。
「この調子でどんどん切っていこう」
と俺は次の脚に向かおうとするがそうはさせないとばかりに蟻の顎が俺に向かって来るがやっぱり思ったとおりそんなに早くはなかったため危なげなくかわす事が出来た。そして次々に脚を切って行く。そのたびにギギっという音を出す。そしてついに全ての脚を切り離す事に成功した。
「何とかなるもんだな。しかし緑色の体液とかちょっときもちわるいな。」
と脚を切り離されて動けなくなった蟻をみながら呟き止めを刺すために頭と胴体の接合部分に投擲用に買った斧を拾ってきてから思いっきり振り下ろした。頭と胴体を無事に切り離す事に成功して巨大蟻はうごかなくなった。
「それにしても初戦でいきなり硬い相手になるとは思わなかった。てっきり定番のゴブリンとかが出てくるもんだと思ってたからなー。」
と俺は改めて倒した巨大蟻を眺めていた。
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