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2.「異世界に転移した直後のパターンとしてはハードモードだと思う」

いきなり戦闘。

なんてこったい。

 神様のミスで死んだ人間が異世界に転生した後のパターンは有る程度決まっている。


 一、何処かの国の貴族に生まれる、若しくは平民の家に生まれるパターン


 一、前者のパターンと同一だが、その後転生者の持つチート能力を恐れ、捨てられる。若しくは後天的なチートの場合、当初の才能の無さに家から捨てられるというパターン


 一、転生直後に気を失い、目を覚ませばそこは草原だったパターン


 以上の例はテンプレ要素が満載なパターンだろうが、その後の人生はどれもこれも茨の道ばかりである。まあ先程の例はあくまで例なのでこれが典型的という訳では無い。


 何れにせよテンプレ要素の有るスタートには先程の例の様に有る程度決まっている方向性が有るが、その後の物語となるとその方向性は大きく変わって来る。


 主人公最強要素は、その後の展開が険しければ険しい程、より濃い味を占める。特筆すべきなのは成り上がり系だろう。この物語の作者はそれがとても好みらしい。


 話が脱線してしまったが、異世界に転生或いは転移した後の展開とはそう多種多様に分岐していない。


 つまり、こう言う展開もテンプレ要素の一つであろうーーー






 *






「ドジっちったぜ(笑)」

「そうですね。ってそんな悠長な事言ってる場合ですかあああああああっ!!」



 ゼウスがロリ神ちゃんーーーレミカちゃんに課した修行により、同伴として異世界に転移する事になった俺。


 しかし、転移して早々問題が発生した。あれ? デジャヴな感じがする。


 その問題とは何か? それは既に目の前に映っている。




「ケケケケケケッ」

「クヒヒヒヒヒッ」

「ギャッギャッギャッ!」

「ゲッゲッゲッゲッゲッ!」

「チョリチョリーン」




 ーーーそう、目の前というか周りを魔物の大群によって完全に包囲されている訳だ。


 数としては1000匹以上は居るだろう。異世界での初戦闘がいきなり二人対超多数と来た。いやはや、数の暴力とは恐ろしいね。



「しゅ、修行とゼウス様は言ってましたけど異世界に来ていきなりこの展開は無いですよおぉ!」

「分かる分かる。もし、チート能力を貰った転生者でもこの状況はバッドエンドだよね。いや、ゲームオーバーと言えば良いかな?」

「どちらも同じですうぅ!」



 異世界に来てこの展開は最悪の状況だろう。例えチート能力を持っている転生者だとしてもそれを理解し、使い熟せなければ意味が無い。転生する前に天界で修行して行くというパターンであれば、それ程脅威では無いだろうが。



「まあ何時までパニクっても仕方が無いし、ぶっ潰しちゃおうぜ」

「そ、そうですね! しゅ、修行なんですからこの展開もアリですよね。大丈夫、大丈夫……」



 何時までもこのペースだと相手が痺れを切らして襲い掛かりかねない。俺はレミカちゃんに促し、右足をぷらぷらと揺らしながら調子を確認する様にトントンと地面へつま先をぶつける。レミカちゃんは自分に言い聞かせながら『神鳴の鉄槌(トールハンマー)』を取り出し、身構えた。



「じゃ、まず俺から。そぉいっ」



 間抜けな合図と共に、俺は右脚を光速の速さを持って横に蹴り抜く。






 ーーー刹那、蹴り抜いた方向の魔物達が一瞬にて切り刻まれた。






 別に難しい事をした訳では無い。ただ、右脚を光速の速さを持って横に蹴り抜いただけだ。


 そしてそれが斬撃となって魔物達を切り刻んだだけに過ぎない。先程の攻撃で軽く三分の一は減らせただろう。見たところ、300匹以上は切り刻まれている。


 しかし、手加減とは難しいものだ。魔物だけでなく、蹴り抜いた先に有った地形や森林までもが切り刻まれ、抉れ、破壊されている。


 直後、爆発的な風圧が辺りに襲い掛かり、魔物達を吹き飛ばし、更に地形を変化させる。その風圧に対して、俺とレミカちゃんは平気だが、レミカちゃんは先程の攻撃の規模に呆然としていた。が、直ぐにはっと我に返り、驚愕した。



「……え? 何ですかこの攻撃?!」

「ん? ただ普通に蹴り抜いただけだぜ?」

「普通じゃないですよ!? 明らかに異常なんですけど!?」

「何を言うか。『神鳴の鉄槌』を床に落としただけの方が十分威力が有るだろうに」

「さっきの攻撃と殆ど威力は変わりませんけど!? どっこいどっこいです!」

「上手い事を言うねぇ」



 今、こうやってレミカちゃんと普通に会話している訳だが、俺は内心迂闊だったと思っていた。


 これはレミカちゃんに課した修行だ。にも関わらず俺が殲滅しては意味が無い。


 この修行の趣旨を全く説明していなかったし、言ってもいなかったので此処で説明しよう。


 まず、この修行の趣旨はレミカちゃん自身が持つ神力を使い熟す事が主だ。基本的に、神が自らの神力を制御していればうっかりミスをしても人間を殺す事は無い。『神鳴の鉄槌』を床に落としても普通は地上界に神鳴()が落ちる事も無いのだ。


 だが、こうしてレミカちゃんが実際に神鳴を落としてしまっていると言う事は神力を完全に扱い切れていない証拠となる。


 レミカちゃんは神へと昇華してまだ20年も経っていない新米の中の新米だ。だが、神力を使い熟すにはまだ時期が足りていない訳では無い。寧ろ逆だ。


 神へと昇華した者は普通3年もすれば普通に神力を扱い切れる様になる。それが謙虚な神であろうと高慢な神であろうと同じだ。


 そこで10年以上経っても神力を扱い切れていないレミカちゃんは明らかに異常だ。この子は初めは超生意気な小娘だったが、その後(フルボッコ後)は真面目に神としての仕事をこなしていてる。


 しかし、この子の持つドジッ娘属性によってミスを連発。その扱い切れていない神力の所為で悪意は無いものの、人間を殺してしまっている。天界で自らの仕事をこなしている同僚達からすれば危険極まりないと思われていても可笑しくは無い。


 そこでゼウスが課したのが、異世界で自らの神力を使い熟す修行と言う訳だ。


 非常識、出鱈目、規格外と三拍子揃った人外である俺からすれば些細な事だが、レミカちゃんからすれば重大な問題だ。所謂、生きるか死ぬかの分岐点と言った所だ。前回の『俺のワンパン★』か『槍でグサリ♡』以上の究極の選択となっている。


 攻撃をする前までは失念していたが、俺が普通に攻撃しては修行の意味が無くなってしまう。自重は一切しないのが俺だが、俺自身も手加減の方法を考えなければならない、と言う事が判明した。


 つまり、今後からの戦闘の役割はレミカちゃんをメインにしなければならないと言う事だ。かく言う俺はサブに徹しないといけないだろう。



「さて、レミカちゃん。後はお前が殲滅するんだ。俺が殲滅したら修行の意味が無くなるからね」

「は、はい!」



 俺はそう言うとレミカちゃんの後方へと下がる。後は何もしない。メインディッシュは譲らないとね。あくまで俺はサブだし。


 後方へと下がった俺を見て、レミカちゃんは少々慌てながらもキリッとした良い表情に変わり、右手を天に高く掲げた。



「この程度の魔物なら……『サンダー』!」



「ギャアアアアァァァッ!?」

「グゲエエェェェェッ!」

「ガアアアアァァァッ!!」


 レミカちゃんの詠唱により初級魔法の一つ、『サンダー』が放たれ、天から一筋の落雷が迸り、魔物達を駆逐する。


 神という種族は魔法と非常に相性が良い。その為、初級魔法であっても威力は上級魔法クラスに匹敵する。


 もしも中級魔法であれば最上級魔法クラスの威力に匹敵する、という具合に、神が放つ魔法の威力は同じ魔法であっても二回り以上、上回る。


 だが何故、神が放つ魔法は人や魔物達が放つ魔法よりも二回り以上も威力が上回っているのか? それには理由がある。


 元々、人が魔法を得た切っ掛けは神が人類に『(ベース)』を与えた事から始まる。『火』を得た人類はそれを更に発展させて行き、新たな発見と改良を積み重ね、最終的に魔法へと昇華させて行ったのだ。


 つまり、人が得た魔法とは元を辿れば、神が扱う魔法の劣化版という訳だ。劣化版と言っても人類の魔法は神の魔法を真似た『複製物(オリジナル)』では無く、人類が神から得た『火』を独自に発展させ昇華させて行った『創作物(オリジナル)』であるので劣化版とは言い難いが。


 そういう事も有るが、魔法を行使するにあたって根本的に違うのは、消費する『モノ』の違いだ。


 人類が魔法を行使するには『魔力』を必要とする。それに比べて神が魔法を行使するのに必要なのは魔力では無く『神力』だと言う事。


 魔力とは文字通り『魔』の『力』。魔物や魔獣、人類の生命エネルギーの様なもので、『原罪』を背負っている全生物が持ち得ている。簡単に例えると、魔力とは濁っている水だと認識すれば良い。


 対して神力とは『神』の『力』。魔力と違い、神が持つ神聖なる力。また、『原罪』を背負っていない者や神格を得た者も持つ事が出来る。聖母マリアやその子供であるイエス・キリストがその類だ。こちらの場合、神力とは無色透明の水と言う事になる。


 濁っている水と無色透明の水。何方が良質かなんてたかが知れている。言うまでも無いだろう。


 人や魔物、魔獣が行使する魔法よりも神が行使する魔法の方が二回り以上も威力が高いのは、魔法との抜群の相性、行使するにあたって使用するものが神力だという事が要因となるのだ。


 お陰で、たかが初級魔法で残り三分の二の魔物達が全滅したという有様になった訳だが。



「ふぃー、やりました」

「お疲れ様レミカちゃん。初級魔法程度は神力の配分もしっかり出来てたよ。85点と言った所かな」

「それでも満点じゃ無いんですね……手厳しいです」

「わははは、完全に神力を使い熟しているには程遠いね。神力操作ぐらいは完璧にしておかないと」

「むぅ……」



 俺のそこそこの評価に頬を膨らませるレミカちゃん。それを苦笑しながらレミカちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でた。



「ま、頑張っている事に越した事は無いよ。偉い偉い」

「……えへへ」

「さて、目の前の軽い障害は軽く乗り越えた事だし、街へ向けて旅を始めますか」

「はい!」



 初戦闘がいきなり超多数だったというハプニングが有ったが、良いだろう。これから旅が始まる事を俺が告げるとレミカちゃんは子ども特有の元気な返事をしてくれた。うん、良い返事だ。


 人外である俺とロリ神様であるレミカちゃんの修行も兼ねての異世界ぶらり旅が今、始まる。


以上、異世界での初戦闘、初蹂躙でした。


これからも自重一切無しの最強が有ります。これはただの片鱗という事で……


では、また次回。

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