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入学一週間前

お姉ちゃんの役割とは。

 あの逆ハーエンドは悪い意味で衝撃的過ぎた。妹には沢山じゃなくていいから、たった一人の好きな人を見つけるような恋をして欲しい。

 だから、私は小春が生まれた時より、いじめなどのトラブルから彼女を守り、事あるごとに切々と女子の貞節さを説いたつもりだ。それが原因だったかははっきりしないが、これから高校生になろうとする小春は未だに誰とも男女交際した事の無いままだ。


「葵ちゃん以上に素敵な人が見つかったらお付き合いする!」

「小春はまず、お姉ちゃん離れからしないとねー」


 母の蝶子の一言にぷくっと白い頬を膨らませる妹は可愛らしいが笑えない。

 葵が守りすぎてしまったお陰なのか、純粋培養させ過ぎたせいなのか、中学まで可愛らしい彼女に好意を寄せる者は後を絶たなかった。だが、気付ずにスルーしてしまったり、告白されてもあっさりお断りしてしまう。

 好きな人はいないの、と訊いてみたらさっきのような調子だ。きっと私は至る所で小春へ思いを寄せる男子の恨みを買っているに違いない。恨まれても痛くも痒くもないが。

 

「理想の人が私でどうするのよ」


 片方のこぶしで小春のこめかみをぐりぐりとやると、へへ~、と気の抜けた嬉しそうな笑い声が下から聞こえてきて、つられて笑ってしまった。こちらの世界の父さんに似て黒髪直毛眼鏡で背の大きい威圧感たっぷりの私とは違う、母さんと同じふわふわとした明るい色の髪の毛をボブカットにして、その下には大きな焦げ茶色の瞳や小さくて果実みたいにぷるんとしている唇が輝いている美少女の小春。ちょっと天然で、シスコン気味のうちの妹は顔の造作を別にしてもにくめない性格で可愛いのだ。


 入学式を一週間後にひかえた我が家は女ばかりで賑わっていた。

 父さんは、今年海外に転勤が決まってしまい、一足先にアメリカに渡っている。本当は家族全員を連れて行きたかったらしいが、私は通う高校を今更離れるのはごめんだったし、小春も断固として日本にいる事を主張した為に渋々と母さんだけを連れて行く事にしたらしく、小春の入学式に出た後暫くしてアメリカの父の元へ行く手筈になっていた。

 

 母さんもはじめの内は子供達だけを残す訳にはいかないと離れるのをためらっていたのだが、私はそもそも自宅から通えない遠方の高校に通っていた為寮生活だったし、自宅で一人暮らししながら高校へ通う予定の小春については、私が月一回の自宅への帰省日(日付は任意で届け出る事が出来る)に毎月の小テストや期毎の成績他を確認して、あまり成績が落ちたり生活態度が宜しくないと判断した場合は両親に連絡して相談の上アメリカの高校に通わせる、という話になっている。


 この部分がゲームのシステムの私の役割と言っても良い。

 毎月姉である私の審査するパラメータをクリアしないと、アメリカに渡って両親と暮らさねばならずゲームオーバー。赤点を数回取ると非常にやばい事になる。


 ちなみに私自身はといえば、こちらの世界では心機一転、勉強や習い事を頑張っていたお陰で、非常に偏差値の高い高校に特待生で通わせて貰っている(ちなみにこの高校は小春の通う高校の姉妹校であったりする)。基礎からやり直していけば勉強も読書もこんなに楽しくなるんだと気付けた事は嬉しかった。

 その為か、私への両親の覚えは非常にめでたく、この役を仰せ付かった訳だ。



 予測した事への対策は立てた。こっそりと独自で行った下調べでは、同級生は不明だったがやはりゲームに出てきたような綺羅綺羅しい男達が妹の通う高校には存在しているらしい。あれが現実で起こるのか……と記憶の隅に残っているゲームでの攻略キャラの甘ったるい台詞や、とんでも展開を思い出して遠い目になった。……頑張れ、小春。


  後は学校での小春の様子を教えてくれる予定の後輩や友人、小春と私との共通の幼馴染である悟君達が教えてくれる情報を頼りに妹の事を見守っていきたいと思う。妹に中途半端に手を出す馬鹿がいたら、穏便な方法でお姉ちゃんが返り討ちにするからね。

 

 この子のこれからの高校生活がより良いものでありますように、と私はそっと祈るのだった。

パラメータのチェック役です。

勿論物語のいくつかには関わってきます。

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