はじまり
初投稿です。不定期更新。
あたし、神前 葵はグレてた時期がある。ある事がきっかけで学校に行くのがつまらなくなってしまったあたしは、髪を染めて入った高校へ行くのもそこそこに毎日のように喧嘩に明け暮れた。そうして、気付いた頃にはいつの間にかレディースの頭を張るようになっていた。チームの子達はそんな喧嘩しかできないアホなあたしを『姉さん』って呼んで慕ってくれた。気安く話せるメンバーばかりのチームは居心地が良くて、何も考えず誰より先に単車で風を切って走るのが好きだった。
だけど、母さんが倒れたり、妹みたいに思っている幼馴染が敵チームに攫われたりしてから、それが大事な人達に迷惑のかかる事をつくづく思い知らされてしまった。
だから、このまま続けることは出来ないとチームを抜けた。抜けたというよりはあたしが頭だったので解散になったんだけれど、理由を告げたチームの子らは泣きながらも納得してくれて、あたしも泣きながら土下座して謝った。もっとヤキを入れられたり、揉めるかと心配していたが、あっさり受け入れられて拍子抜けする程だった。チームのみんなもここらで普通の生活に戻ろうと思った子が多かったらしく、その後も何人かとはそのまま気のいいダチとして付き合う事になった。
母さんが入院した時、あたしは高校をやめて働く事を考えたが、そのことを告げると、当の母さん本人に烈火のごとく怒られた。話を聞きつけた隣の幼馴染とその父さん母さんらも巻き込んでみんなで説得されてしまった。いつの間にかあたしは囲まれて説教されながら、床に正座させられていた。高校だけでもちゃんと出なさい、じゃないと仕事も見つからないよと言われてその通りだと思った。
それから、昼間はバイトを詰め込んで、夜はちゃんと高校に通う道を選んだ。突然学校に真面目に通うようになったあたしを担任は驚いていたが、今までの事情を話したら喜んでくれたようだった。どうやら、中退するかもと心配されていたらしい。
数ヶ月経ち、そんな生活に漸く慣れてきたある日、久々にバイトが休みだった土曜の夜の事だった。ダチの何人かに誘われて単車を走らせた。夜の街で久々に風を切る感覚は心地よくて、あたしは目の前に突然現れた大型トラックの光に咄嗟に対応する事が出来なかった。
まさか、それがあたしの人生最後の瞬間だったなんて、誰が思っただろう……。