第七話 油虫
6年2組の教室に戻った一夫と野口はそれぞれの席についた。
一夫は顔に所々絆創膏だらけで
「いやだ! もうあたしの顔傷だらけにして」
ガラッ!
「起立! 礼! 着席!」
ジャージ姿のボーイシュな大場先生が珍しくブラウスとスカート姿で教室に入ってきた。
「今日の朝、見た人は知っていると思いますが、うちのクラスの野口君と小川さんが校庭で大ゲンカしました。原因は野口君が小川さんの胸を触ったいう事です。小学六年生といえばあと一年すれば中学生です。一歩足を踏み入れば大人に近づいてきた感じです。小学六年生でも女子は胸の大きい人もいればまだ低学年の大きさの人もいるし、男子はもう声変わりしている人もいるしまだ低学年みたいな声をしている。男子は特に女子に対し生理でからかったり、胸をさわったりスカートを捲ったり、この時期の女子はデリケートです。ちょっとの事で傷つくことがあります。気を付けてくださいね、さあ授業を始めます」
一時間目は国語の時間
国語の教科書を開き、一夫は股を開き、下敷きでジーンズの股のところをパタパタとそれを見た千鶴は
パシッ!
ものさしで一夫の太ももを叩いた。
「じゃ、斉藤君そこ読んで」
「はい、アンネはいつゲシュタボに見つかりやしないかびくびくしていました。隠れ家に身を潜め、ドイツ軍のユダヤ人護送車が通り過ぎるのを…アンネはいつもいつ戦争が終わるのか…」
「はい、そこまで斉藤君にしては上出来です。斉藤君、予習してきましたね、じゃ次、小川さん読んでもらいましょうね」
(どうしょう…漢字読めないし)
「どうしたの? 早く読みなさい」
「はははい、アンネはは…いいつききょせい…千鶴いや斉藤これなんて読む」
「強制収容所よ」
「強制収容所ににいいれられるかか…」
「はい、そこまでね小川さん予習していませんね、それでは漢字の小テストを行います」
(やべぇ、いきなりテストかよ)
「教科書、ノートしまって」
テスト用紙が行き渡ると
「はい、始め! 時間は10分」
(俺、全然わかんねえよ)
千鶴はスラスラと鉛筆を走らせている。
「はい、終わり! 鉛筆置いて、後ろから集めて」
下校時間
一緒に帰る一夫と千鶴
「あたしの顔に傷つけて、あたしの体大事にしてよ」
絆創膏だらけの一夫
「お前の姉ちゃん、朝真っ赤になったパンツ洗いよったが生理か?」
「一夫のバカッ! 何であなたに聞くのよ? エッチ!」
真っ赤な顔で怒りやがった。
「あたし、男なんていやよ」
「何で嫌なんだ? 男が嫌か?」
「嫌よ! だってトイレやお風呂の時、股のところに変なモノが付いて蛇みたいにニョロニョロして気持ち悪いたらありゃしないわ、病院で切ってもらいたいわ」
「おいおい、俺の体だそ変な事考えるなよ」
それを聞いてたへんな油虫の兄ちゃんが
「ひゅーひゅ 小学生のお二人さん昼間からデートですか?」
「何だと、てめえ」
「威勢のいいお嬢ちゃん」
「お坊ちゃん、ボクと遊ばない?」
油虫が千鶴の手を引こうてすると千鶴が
「いやんやめてよ! もうこっちこないで! やめて! 気持ちわるい!」
油虫を追い払おうすると油虫は面白がって千鶴をからかっている。俺は油虫の背中を叩いた。
「コラ! 貴様なめんなよ」
油虫が俺達を追いかけてくる
「千鶴、早くこい!」
「いやーん、追ってくるわ」
俺は油虫に捕まりそうになり、ついに油虫の急所を蹴った。
「あっ痛たたた!」
油虫は急所を押さえうずくまった。
「よし、今だ逃げろ!」
ハアァ ハアァ ハアァ
もう、油虫は追って来ないだろう。
「うわあああん うわあああん、あたし怖かったわ ううっ」
「泣くな心配するな、もう油虫は追ってこないだろ」
「ううっ ううっ 怖かったよ〜」
千鶴は俺の胸にうずくまって泣いていた。