第六話 登校
ジャー ジャー
洗面所で水の音がする。
パシャ パシャ ゴシゴシ
何かを洗っている音、一夫が気になって見ると千佳姉ちゃんがセーラー服姿で洗濯している。顔を真っ赤にしながら、洗面器の水が赤く染まっているのだ。
「お姉ちゃん、何それ?」
俺はびっくりした。
「千鶴、あんたもうすぐあれがくるでしょ? ナプキンしときなさいよ」
「あれって?」
「あんた他人事と思って! 生理が来るんでしょ! あたしナプキンする忘れてあんたも気を付けなさい」
「生理か…」
ダイニングに入ると
「千鶴! 朝ごはん食べなさい、それから朝、あなたの部屋に男の子なんか入れて、入れないちょうだい」
「いただきます」
「あなたの髪、ボサボサで学校行く前に髪といて!」
俺は学校行く前にブラシで長い髪をとき、赤のランドセルを背負って玄関を出た。
近くの広場に千鶴が待ってた。
「ごめんごめん、遅くなって」
「あなた、遅かったのね」
「お前のお袋がうるさくって、うるさくって」
「グズン、あああん あああん」
「お袋思い出したのか? もうメソメソするん。斉藤一夫っていう男の子はな、顔が悪いがちょとやそっとで弱音吐かないヤツだ」
「グズン」
「タッチ!」
「痛てててっう!」
何者かが一夫の胸を鷲掴みにした。
「あっ! 野口の野郎てめえ!」
野口が俺の胸を掴みやがった。緑ヶ丘小学校の校門をくぐり野口の野郎を追いかけた。
「コノヤロウ! 野口待てえ!」
ついに野口を砂場まで追い詰めた。
「野口! コノヤロウてめえ、おっぱい掴みやがって、スケベ野郎が」
二人とも取っ組み合いになり野次馬が取り巻いていた。
「一夫君、やめてよ!」
千鶴が叫んでいる。
野次馬をかき分け、髪の短い大場恵子先生が止めに入った。
「こら! 二人ともやめなさい!」
先生の止めに関わらずまだ取っ組み合いをやっているので二人人を引き剥がした。
「やめなさい!」
職員室
二人とも顔が傷だらけでシュンとしている。
「あたしも先生やって初めだわ、男の子と女の子が取っ組み合いの喧嘩するなんて」
「…」
「野口君、小川さんの胸なんか触って小川さんだって怒るわよ」
「だって、オレ面白い半分さわったら小川がいきなり怒りだし、まさか取っ組み合いになるとは」
「面白い半分でもこの年頃の女の子はデリケートなの、胸を触られたりスカート捲られたら、おとなしい女の子でも怒るのは当たり前でしょ」
「小川さんもそんな女の子とは思わなかったわ、五年生までおとなしい女の子と思ったのに、胸触られて腹立つのわかるけどあんなに男の子と取っ組み合いして、いいわ! あなた何があったか後でゆっくり話し合いましょ」
「…」
「もう授業が始まるから、保健室行って傷の手当てしてきなさい」
「はい!」
「小川、ごめんな。お前がこんな強いとは思わなかったなあ! 空手道場に来たほうがいいぞ」
「おめえもあんがい強いな」
二人とも保健室で傷の手当てしながら仲直りしていた。