第三話 俺になった千鶴
俺は何か何だかわからなっくなった。とにかく俺の体がおかしくなったのは確かだ。あるモノがない、ないモノがある。千鶴だって同じ事である。
「コラ! 危なえじゃないか!」
歩行者の怒鳴り声も聞こえず、千鶴の家へ一目散に自転車を飛ばした。
小川と書いてある表札の門に自転車を置いた。ここが小川千鶴の家か、幼稚園の時から変わってなあと思ってる場合ではない。
玄関に近づくと
うわあああん うわあああん
気持ち悪い男の子の泣き声が聞こえてくる。
ガラガラ!
うわあああん うわあああん うわあああん
玄関を開けると泣き声がさらに大きくなった。
「こんにちは!」
俺は勝手に上がり込み奥のリビングに入ると
「うわあああん 千鶴よ 千鶴! あたし ママ ママ わからないの? ううっ」
なんと俺になった千鶴が泣きわめいていた。ただ俺は呆然とするだけだった。
(これが俺かよ!)
思わず俺は
「バカヤロウ! 泣くじゃないみっともない!!」
千鶴になった俺を
「あたしだわ! あたし あたし 千鶴よ 千鶴 千鶴だわ」触りまくった。
「気持ち悪い、触るなよ」
俺になった千鶴を突き飛ばした。
「千鶴! 乱暴はおよしなさい!」
「あっ! おばさんこんにちは、千鶴さんの幼なじみで今度同じクラスになった斉藤一夫といいます。幼稚園の頃からおばさん変わっていないあ、それに比べたら家のお袋ったらこんなにデブになっちゃて…」
バシッ!
「千鶴! ふざけるのもいい加減しなさい!」
千鶴のお袋が俺にいきなり平手打ちをくらった。
「ううっ うわあああん」
千鶴はリビングを飛び出していった。
「千鶴! 待てよ!」
俺も千鶴を追いかけ飛び出した
「千 千鶴! お待ちなさい!」
千鶴ん家の門を飛び出し、二人とも歩いていた。
「グズン 一夫君、あたしどうしたらいいの?」
「俺もわかんねえよ、今は誰も信じてはもらえねえ、当分は千鶴は俺ん家で俺は千鶴ん家で暮らすしかねえ」
「あたしのお家へ帰りたいわ うわあああん」
「お前、泣くなよ。俺まで辛くなるよ」
「俺ん家まで送って行くから、後乗れよ」
千鶴が横座りしていると
「跨って乗れよ、手を俺の体に廻すんだ」
千鶴が俺の胸を掴んだ
「痛てててっう! 手を下に廻してくれ、さっき胸を揉んだらヒリヒリして」
「まあ! 一夫のバカバカ! あたしの胸触ったのね? 一夫のエッチ! 痴漢! スケベ! 変態!…」
千鶴が俺の背中をバシバシ叩きやがる
「痛てて、叩くなよ しっかり掴まれよ」
二人が乗った自転車が走り出した。途中で自転車でパトロール中のお巡りさんに呼び止められ
「こらこら! そこの中学生の女の子! 自転車の二人乗りはいけないだろ」
背が高いから中学生に間違いられた。
「俺、小学生です」
「いや、ごめん中学生と間違えて! 小学生の女の子が二人乗りしちゃいけないぞ! 気を付けて帰りなさい」
二人の乗った自転車は団地の敷地内に入り7棟の前に着いた。
「ここが俺の家だ
カツン カツン カツン
四階まで階段を上り、405号室の鉄製のドアを開けると俺のお袋が仁王立ちしていた。
「一夫! どこほっつき歩いての? 早く上がりなさい!」
「グズン ううっ ううっ」
「どうしたの一夫?」
「違うんだ! よく見てくれ、俺は斉藤一夫! あいつが今度同じクラスになった小川千鶴」
「小川さんね、ふざけないでお家に帰りなさい!」
「一夫、早く入りなさい」
「ううっ うわあああん うわあああん」
「何、泣いての一夫? おかしな子だね」
キュウウバタン! ガチャン!
コッツン コッツン コッツン
階段を降りて7棟の前に置いてある自分の自転車を自転車置き場に直し、俺ん家である千鶴の家に帰る事にした。