第十話 プール
じめじめとした梅雨の真っ只中、
「千鶴! ちょっと来なさい」
「はあい」
半袖の水玉模様のワンピースを着ている俺は千鶴の母に呼ばれた。母はスクール水着を出して来て
「千鶴、ちょっと着てみて」
去年、千鶴が着ていたやつだ。俺はその場で着替えようと水玉のワンピースを脱ごうとしたら
「ちょっと千鶴! もう自分の部屋で着替えてちょうだい」
俺はスクール水着を自分の部屋に持っていた。
去年のスクール水着は小さくて窮屈だった。胸ははみ出して股の所は「ワレメちゃんがありますよ」と学校で着られもんじゃない。
「ママ、小さいよ」
小さな水着を着たままダイニングで
「あら、本当! 千佳いるう?」
「はあい」
「千佳ちゃん! 小学校の時の水着ある?」
「あるわ!」
「持って来てちょうだい! 千鶴の水着小さいのよ」
千佳の部屋から姉ちゃんの水着を持ってきて着てみた今度は丁度よかった。
「ピッタリじゃないの! これお姉ちゃんのだけど、今度のプール開きの時、持って行って」
日曜日
千鶴の家は父と母に姉は出掛けていて一夫だけが留守番していた。千鶴がやってきた。
「おじゃまします」
「何、遠慮しているんだ。お前ん家だろ入れよ」
一夫はタンクトップにピンクのサッカーパンツを穿いている。千鶴をダイニングに連れていった。
「食えよ! お前のお袋が作ったヤツだ」
千鶴の母が作ったおにぎりを見て
「ママ、うっうう グズン」
「そうか、ここに帰りたいのか」
「うっうう うっうう」
一夫は姉ちゃんの水着を広げソファーに横になった。「これ、姉ちゃんの水着! 去年あたしの水着小さかったのね」
「そうだ! お前も俺の海パン穿いてみろよ。まだ大きくなってないから丁度いいと思う」
水着をマジマジと眺めながら
「ねえ、ちゃんとパンツ穿き替えてる?」
「ああ! 穿き替えてるよ」
梅雨が明け、夏の日差しが照りつける中、緑ヶ丘小学校のプール開き
俺は水着入れに姉ちゃんの水着を入れ学校に行った。俺は水着に着替えプールサイドに並んだが、千鶴は去年穿いていた海パン姿で胸を両腕で隠し背中を丸め内股でプールサイドを歩いていた。なんか可哀想だった。