落ちる惑星
母さんへ
ついに夢が叶ったよ宇宙にいけるんだ!
宇宙で撮った写真をあとで宇宙からおくるよ。
夜、空を見上げて。そこに俺がいるはずだから。
母さんのいるところよりも
もっともっと高いところに、
行けてるはずだから。
宇宙に行く!そんなことを話した16歳の俺。
アメリカ行く!そんなことを話した26の俺。
俺1人でいく。そんなことを話した36の俺。
とても後悔した決断。仲間には家族がいた。
俺にだっているんだよ。今からじゃ遅い。
後悔してる。
「こんな星にひとりぼっちなんて。」
地球から遠くも近くも離れた星、ファルーン。
36年前には太陽系の一つ先の場所にあったと
考えられるのこの星が、太陽系に属する星となった。
ただの石ころならまだしも、この星はれっきとした
惑星で、わかっていないことが多い。
地球型惑星ではないのが確かで、この星に
地面はない。ガスでできた星だ。俺のこれまでの
生活を考えると、この星は地球にはない気体でできたガスであることがわかっている。宇宙船内で
暮らしつつ、たまに外に出る。地球が青く美しく
輝いて、月は裏側が見えて、人類の月での初めての
建設物であるナイトシティが見える。
「おーい!助けてくれ!」俺の悲痛な叫びは
届かない。一方通行、これはいつもの日課。
気にしない。黒く白く濁った宇宙船は心の拠り所だ。
俺と人類を繋ぐ唯一の希望であり、
毎日絶望を与えてくれる代物。ーーー
そんな星に宇宙飛行士の調査チームが作られ、
太陽系外の調査より比較的安易なものだったので、
経験を積ませれるよう若い実践経験のない人間が
抜擢された。俺の他には25とか29とか、
機関の中でも若いヤツらに任務が課せられた。
36でも若い方なのに、新卒に毛が生えたやつとか
大学を19で卒業した天才とか、多様な仲間6人が
調査チームになった。隊長は経験豊富な42の
気さくなおっさん。副隊長はおれ。
チームは月への旅も無事に終え、
最終チェックに入った。ーーー
隊員たちは俺を置いてファルーンをでたが、
その後どうなったかは知らない。救援が来ないので
彼らも満身創痍、ましてや地球にたどり着けてるの
かもわからない。とりあえず自分のことしか
考えられないのは仕方がないことだろう。
明日にはこんな状況も変わっているのかもしれない。
けど、自分でも気づいている。地球がずっと遠くに
なっていってることに。砂の嵐がだんだん
濃くなって、宇宙の深い闇も日本海の土ぐらい
暗い色の砂でコントラストになっている。
あと2週間分ほどしかない宇宙食を食べながら思う。
「最後の晩餐はハタハタがよかったな。」
呟くと宇宙服でこもった声に聞こえて、
俺の声ってこんなんだっけと、
ちょっぴり違和感を感じる。
しかしまあ、落ちている。高い空から
スカイダイビングするほどじゃないが、
ゆっくりとただ確実に落下している。
だんだんとこの星に飲み込まれてるような感じだ。
宇宙船はこの星のガスをエンジンに取り込んで
しまったのか動かなくなった。なら俺もこの星に
食われるしか選択肢はない。
あ、松は俺が死んだらどうなるんだろうか、いや、
松は元野良猫だから勝手に逃げ出してうまくやるさ。
ーーー宇宙服の空気はなくなる。呼吸も荒くなる。
そして、静まる。
大星優希は、この不可思議な落ちる惑星、ファルーンに最初に辿り着き、最初に落ちた、初めての人類となった。ファルーンは今なお膨らみ続ける。地球に、影を落として。
調査チームは地球にたどり着き、隊員一名の死亡を
報告した。またファルーンの生命的事象を報告し、
国際宇宙機関はこの星が広がり続けて地球を
飲み込むことを報告。しかしそれは
ざっと200年後であることもわかり、
人類は英知を集結させ議論し続けたが、
具体的な対策案はでない。
人類は未来の自分達に全てを任せて、
新たな星を調査しに向かう。調査団は6人で、
今回も1人、天涯孤独の技術者を含めてーーーー




