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第三話:守るための輝き、真実の外套

お読みいただきありがとうございます。


前回、王都からの不当な買収工作を撥ねのけたスカーレット。彼女が次に見据えたのは、自身のブランド『ヴァランティーヌ』の信頼を揺るぎないものにするための「実用性の証明」でした。


第3話では、新作『魔導マント』の開発秘話と、ある一人の騎士との出会いが描かれます。美しさだけでなく、命を預けるに足る「本物」とは何か。王都の安物が招いた悲劇を、スカーレットの審美眼が塗り替えていく爽快感をお楽しみください。

「……これは、ひどいわね」


 工房の机に広げられた、ボロボロの布切れ。それは王都の近衛騎士団に配備されているはずの「正規採用」の魔導マントだった。 スカーレットがその布に触れると、指先に嫌な摩擦と、澱んだ魔力の残滓が伝わってくる。


「お嬢様、そいつはひどいもんです。表面だけは立派な刺繍をしてやがるが、中の魔導回路は継ぎはぎだらけ。これじゃあ、いざという時に魔力が詰まって暴発するか、防護壁が展開されねえ」


 バーナビーが忌々しげに吐き捨てた。 そこへ、一人の男がレナードに連れられて工房を訪れた。 泥に汚れ、肩に深い傷を負った騎士——この辺境の警備隊長を務めるアリスティアだ。


「スカーレット様……無理を承知でお願いに参りました。私の部下たちが、王都から支給されたこの『安物』のせいで、魔物の襲撃を防ぎきれず負傷しました。……彼らの命を守れる装備が、どうしても必要なのです」


 アリスティアの言葉には、部下を思う切実な響きがあった。 カイル王子が進める「低コスト化」のしわ寄せは、最前線で戦う騎士たちの命に直結していたのだ。


 スカーレットは静かに立ち上がり、工房の奥から一反の布を取り出した。 それは、月の雫を糸にして織り上げたような、透き通るような白銀の布——『極純銀糸』を贅沢に使用した最新作だ。


「アリスティア様。あなたの誇りに、私の審美眼で応えましょう」


 製作は数日に及んだ。 バーナビーが極細の銀糸で、一点の淀みもない完璧な幾何学模様の回路を織り込み、スカーレットがその中心に、持ち主の魔力効率を最大化する「調律」を施していく。


 完成したのは、夜の森でも淡く光り輝く、深い紺青と白銀が混ざり合うマントだった。


「……軽い。まるで羽織っていないようだ」


 試着したアリスティアが驚愕の声を上げる。彼が軽く魔力を流すと、マントから溢れ出した柔らかな光が、工房全体を包み込むほど強固な防護障壁を形成した。


「これが『ヴァランティーヌ』の仕事です。無駄な装飾を削ぎ落とし、ただ『命を守る』という一点において、この国で右に出るものはありません」


 スカーレットの言葉に、アリスティアは深く頭を下げた。


 その数日後、辺境に再び強力な魔物の群れが迫った。 だが、アリスティア率いる警備隊は、以前とは別人のような動きを見せた。王都の装備なら貫かれていたはずの爪を、白銀の光が軽々と弾き返す。


 その光景は、避難していた商人や旅人たちの目に焼き付いた。 「辺境に、王都の最高級品を凌駕する装備を作るブランドがある」 その噂は、もはや誰にも止められない濁流となって、王都へと流れ込み始めていた。

第3話をお読みいただきありがとうございました。


今回は、ブランドの価値を「軍事・実用性」の面から証明するエピソードとなりました。スカーレットの審美眼は、単なる贅沢のためではなく、誠実に生きる人々の命を救うために振るわれます。


アリスティアという強力な味方(そしてヴァランティーヌの熱烈な宣伝塔)を得たことで、いよいよ王都側も黙っていられなくなるでしょう。


次話では、この「魔導マント」の噂を聞きつけた王都の騎士団関係者が、調査という名目で辺境に乗り込んでくる展開を予定しています。スカーレットの容赦ない「本質への指摘」が再び炸裂する予感です。どうぞご期待ください!

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