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『「安物には裏がある」と婚約破棄された公爵令嬢、その審美眼で辺境の街を最高級ブランドへと変える』  作者: ゆっきー
第2章:波紋を呼ぶ「ヴァランティーヌ」

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第二話:王都に差す「本物」の影

いつも応援ありがとうございます。


前話では辺境の街でブランド『ヴァランティーヌ』が産声を上げましたが、その噂はついに王都の「あの男」の耳にも届くこととなります。


第2話では、かつてスカーレットを追放した第一王子カイルの焦燥と、王都の巨大な利権勢力との直接対決が描かれます。スカーレットの持つ「審美眼」は、単に物の良し悪しを見抜くだけではありません。高価な服の裏に隠された「嘘」をも暴く彼女の毅然とした態度に、ぜひご注目ください。

 王都の王宮、第一王子カイルの執務室には、苛立ちの入り混じった空気が漂っていた。 カイルの目の前には、数枚の報告書と、見るも無惨にひび割れた魔石のブローチが置かれている。


「……また壊れたというのか。この『普及型』の魔導ブローチが」


「はっ。王都の貴族たちの間で、普及型の耐久性の低さが問題視され始めております。代わりに、ある噂が急速に広まっておりまして……」


 側近の報告に、カイルは不機嫌そうに眉を寄せた。 カイルが進めてきた「魔道具の低価格化と普及」は、王国の近代化を象徴する政策のはずだった。しかし現実は、安価な素材ゆえの暴発や故障が相次ぎ、王都の魔道具ギルドは対応に追われている。


「噂だと? どうせ、どこぞの老舗が贅沢品を吹聴しているだけだろう」


「それが……かつて殿下が追放されたスカーレット様が、辺境で新しいブランドを立ち上げたとのことで。そこで作られる『白銀のストール』は、普及品の十倍以上の魔力伝導率を誇りながら、一切の負荷がないとか」


 カイルの脳裏に、冷徹なまでに「安物」を否定した元婚約者の姿がよぎる。


「馬鹿な。あの女は強欲さゆえに、高価な素材を私物化しようとしていたはずだ。辺境のゴミ溜めで何ができるというのだ」


 カイルは忌々しげに報告書を叩きつけた。だが、彼の不安を煽るように、報告は続く。


「すでに王都の有力な公爵夫人が、その『ヴァランティーヌ』の製品を入手するために、バレー・ド・ラヴァへ密使を送ったとの情報もございます。殿下の推奨する普及品を『肌荒れがする安物』と切り捨てて……」


「……これ以上、あの女に好き勝手させるわけにはいかん」


 カイルの瞳に、焦燥からくる歪んだ決意が宿った。


 一方、その頃。バレー・ド・ラヴァの『ヴァランティーヌ』本店兼工房。 スカーレットは、店を訪れた意外な客を前に、優雅に茶を啜っていた。


「……ほう。まさか『黄金の秤』商会の幹部が、わざわざこんな僻地まで来られるとは」


 目の前に座るのは、恰幅の良い、しかし目つきの鋭い男。ギルバートを裏で操る王都の大手商会、その調査員だ。


「スカーレット様。単刀直入に申し上げましょう。その『極純銀糸』の製法と、職人バーナビーの権利を我が商会へお譲りいただきたい。もちろん、あなたには公爵家時代の生活を保障するだけの金額を提示します」


 男の言葉は丁寧だが、その裏には「断ればどうなるか分かっているな」という脅しが含まれていた。王都の商権を握る彼らにとって、地方の小ブランドを潰すなど造作もないことなのだ。


 スカーレットはゆっくりとカップを置くと、男の目を真っ直ぐに見つめた。その瞳には、男の着ている高価な服の「糸の綻び」までを見抜く、圧倒的な審美眼が宿っている。


「お断りしますわ。あなたの着ているその上着……表は絹ですが、裏地は魔法耐性の低い粗悪な綿でしょう? そんな『裏のある』商売をされる方に、私たちの誇りは売れません」


「……何だと?」


「帰ってカイル殿下にお伝えなさい。本物は、権力や金で屈することはない。そして、あなたたちが広めた『安物』のツケを払う時が来たのだと」


 男が顔を真っ赤にして立ち去った後、影で様子を伺っていたバーナビーが不安そうに声をかけた。


「お嬢様、あんな風に追い返して大丈夫なんですかい? 相手は王都の大物だ……」


 スカーレットは、窓越しに広がる活気ある街並みを見つめ、不敵に微笑んだ。


「いいのよ、バーナビー。相手が『本気』で潰しに来るということは、それだけ私たちの価値を認めたということ。さあ、次の作品に取り掛かりましょう。今度は……王都のギルドがひっくり返るような、最高の『騎士団用魔導マント』を作るわよ」

第2話をお読みいただき、ありがとうございました。


スカーレットが放った「裏地は粗悪な綿でしょう?」という一言。外見だけを繕い、本質を疎かにする王都の現状を象徴するようなシーンとなりました。どれほど金や権力を積まれても、職人の誇りと素材の真実を売らない彼女の姿勢は、バレー・ド・ラヴァの人々にとっても希望の光となっていくはずです。


さて、ラストでは「騎士団用魔導マント」という新たな目標が掲げられました。これは軍事という、王国の根幹に触れる挑戦でもあります。


次話では、スカーレットがどのような魔法回路を組み込み、王都の度肝を抜く「最高級の装備」を作り上げるのか。そして、追い払われた商人がどのような報復を仕掛けてくるのか……物語はさらに加速していきます!

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