第3話:「安物」の末路、偽りの終焉
ついにレオンの正体が「銀の番人」であり、スカーレットの瞳が「神の欠片」であることが判明しました!
二人の信頼関係は、今や誰にも壊せない絶対的なものへと昇華されましたね。
さて、スカーレットたちが真実の美へと突き進む一方で、彼女を裏切った者たちには「現実」という名の残酷な結末が近づいています。
王都の華やかな大通りから数本外れた、陽の当たらない路地裏。
そこには、かつての公爵令嬢と貴公子の面影など微塵もない、薄汚れた男女の姿があった。
エドワードは、泥の跳ね返ったマントを必死に繕おうとしていたが、指先が震えて針を通すことすらままならない。
隣に座るメリンダは、かつて自慢していた「宝石入りのドレス」の成れの果てを纏っている。だが、その宝石は全て魔法による一時的な輝きを失い、ただの色の付いたガラス玉へと成り下がっていた。
「……信じられない。なぜ、私がこんなゴミ捨て場のような場所で……。ねえエドワード、なんとかしてよ! あなたの家にはまだ隠し財産があるんでしょう!?」
メリンダが金切り声を上げるが、エドワードにはそれを撥ね退ける気力も残っていなかった。
「……うるさい! 公爵家はユリウス殿下の失脚と共に、すべての資産を没収されたんだ。この服だって、かつて『スカーレットの持っている安物よりマシだ』と言って買った最高級品のはずなのに……!」
エドワードが自分の袖を掴むと、バサリと乾いた音を立てて布地が崩れ落ちた。
かつてスカーレットが「魔法で無理やり質を誤魔化している、数ヶ月で崩壊する偽物です」と忠告した通りになったのだ。
「ああ、ああ……! 寒い、寒いよメリンダ! なぜこんな、布の形をしたゴミを私は金貨千枚で買ったんだ!」
その時、遠くから華やかなファンファーレの音が聞こえてきた。
路地から這い出した二人の目に飛び込んできたのは、民衆の熱狂的な歓声に包まれて進む、黄金の馬車だった。
「見て! スカーレット・ヴァランティーヌ様よ! 伝説の『月光のボレロ』を織り上げた、真の聖女様だわ!」
沿道の人々が、スカーレットの名を叫んでいる。
馬車の窓から見える彼女は、レオンにエスコートされ、女神のような気高さで微笑んでいた。彼女が身に纏うのは、派手な装飾など一切ない、だが魂が震えるほど美しい「本物」の布地。
「スカーレット……! なぜだ、なぜお前がそこにいる! 安物好きの、価値の分からない女だったはずだろう!」
エドワードが狂ったように叫び、馬車へ駆け寄ろうとする。
だが、その前に一人の青年が立ち塞がった。銀髪をなびかせ、冷徹な瞳で見下ろすレオンである。
「……無様ですね。他人の付けた価格でしか物の価値を測れなかった貴方に、彼女の隣に立つ資格はない」
レオンの手が微かに動くと、エドワードの足元に銀の粒子が舞った。
スカーレットの「審美眼」をレオンが魔法で共有した瞬間、エドワードの視界に、今の自分たちがどう見えているかが映し出された。
二人の姿は、スカーレットの瞳には「価値:ゼロ」という無慈悲な数字と共に、ただの汚物として映っていたのだ。
「ひっ……あああああ!」
自分が切り捨てた「安物」の中にこそ、世界を支配する真理があった。
そして自分が選んだ「高級品」こそが、中身のない空虚なゴミだった。
その事実を、スカーレットの圧倒的な輝きの前で突きつけられ、エドワードとメリンダはその場に崩れ落ちた。
「さようなら、価値なき方々。貴方たちの物語は、ここで終わりです」
レオンの冷ややかな言葉を残し、馬車は光の中へと消えていく。
後に残されたのは、偽りの服が完全に崩壊し、裸同然で泥の中にうずくまる、かつての勝者たちの無惨な姿だけだった。
第3話、いかがでしたでしょうか。
スカーレットに忠告されていたにも関わらず、見栄を張って「偽物の高級品」を選び続けた結果、最後は着るものすら失うという、まさに自業自得な結末となりました。
さて、邪魔者が完全に消えたところで、物語は最終局面へと向かいます。
次回、第4話。
「至高の一着『真理のドレス』」
レオンの協力のもと、スカーレットがこの世界の歴史に刻まれる究極の作品を制作します。お楽しみに!




