第1話:凱旋と、銀の秘密
いつも本作をお読みいただきありがとうございます。 王都での博覧会、そして第一王子の失脚という激動の第3章を経て、物語はいよいよ最終章へと突入します!
追放された令嬢スカーレットが、辺境から世界を変える物語。その「真価」の行き着く先を、ぜひ最後まで見届けていただければ幸いです。
王都中を驚愕させた「月光のボレロ」の旋風から数週間。 辺境の街ルミナリエは、かつての静寂が嘘のような熱気に包まれていた。 街の入り口には、王家公認の最高級ブランド「ヴァランティーヌ」の紋章が誇らしげに掲げられている。
豪華な馬車から降り立ったスカーレット・ヴァランティーヌは、ルミナリエの乾いた、けれど澄んだ空気を深く吸い込んだ。
「やはり、ここが私の原点ですわね」
その呟きに応えるように、銀髪の青年レオンが静かに歩み寄る。
「お帰りなさいませ、スカーレット。貴女が王都で示した『真実』は、すでにこの街にも届いています。今や世界中の審美眼が、このルミナリエに向けられている」
スカーレットはふっと微笑み、街のメインストリートを眺めた。 かつては泥にまみれていた通りは美しく舗装され、そこを行き交う人々は、ハンスたちが織り上げた「ルミナリエ織り」を誇らしげに身に纏っている。 かつて彼女を追い出したエドワードたちが「安物」と嘲笑った布は、今や金貨を積んでも手に入らない至高の逸品となっていた。
「レオン、貴方が教えてくれた『古代の布』の知恵がなければ、この景色はあり得ませんでしたわ。王都の連中は、目に見える権威や価格に踊らされるばかり……。真実の価値を育むこの街こそが、私の帝国です」
スカーレットの瞳には、かつての公爵令嬢としての気高さに、一国を支える指導者としての鋭い輝きが加わっていた。
「スカーレット、貴女の審美眼はすでに人の域を超えつつある。……だからこそ、伝えなければならないことがあります」
レオンの声音がわずかに低くなった。 彼は懐から、銀色の糸で編まれた奇妙な小さな布を取り出した。それは月光を反射しているわけでもないのに、自ら淡い光を放っている。
「これは……? 鑑定するまでもありませんわ。この世の物質とは思えないほどの純粋な魔力。レオン、貴方は一体……」
スカーレットがその布に触れようとした瞬間、レオンの手が優しく彼女を制した。
「このルミナリエの工房の奥、誰も立ち入れぬ『原初の機』。そこで貴女にすべてをお見せしましょう。私の正体も、そして、この世界における『美』の真実も」
「ふふ、期待していますわよ。私の審美眼を驚かせてくれるのでしょう?」
スカーレットは臆することなく、レオンの瞳を真っ直ぐに見返した。 その横では、工房から駆けつけてきたハンスが、興奮した様子で声を上げる。
「スカーレット様! お帰りなさい! 王都での大逆転、聞きましたよ! さあ、新しく開発した『星屑のベール』の試作を見てやってください!」
「ええ、ハンス。楽しみですわ。……偽物の時代は終わりました。これからは、私たちの時代ですわね」
スカーレットはレオンを伴い、自らの城とも呼べる工房へと足を踏み入れた。 その背中は、かつて婚約破棄を告げられた時の弱々しさは微塵もなく、真に価値あるものを支配する「女王」の風格に満ちていた。
最終章・第1話をお読みいただきありがとうございました! 凱旋帰国を果たしたスカーレットですが、ついにレオンの隠された秘密に触れる時が来ました。
彼の正体、そして「古代の布」に隠された真実とは……? 没落したエドワードたちの「その後」も、今後徹底的に(!)描いていく予定ですので、引き続きお楽しみください!
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