第16話:夜を駆ける銀の風
いつもお読みいただきありがとうございます! 禁忌の像を破壊し、第一王子の私邸を脱出したスカーレットとレオン。 王都全体を敵に回した二人の、決死の逃走劇が始まります。 スカーレットの「審美眼」が、追っ手の装備の「裏」を突く!? 手に汗握る展開をどうぞ!
夜の王都に、けたたましい鐘の音が響き渡る。 「反逆者を逃がすな!」という怒声と、馬の蹄の音が背後に迫っていた。
「 ……レオン、降ろして! 私の足でも走れますわ!」
レオンの腕に抱えられたまま、私は叫んだ。 彼は屋根から屋根へと軽やかに跳躍しているが、その呼吸は僅かに乱れている。
「 馬鹿を言うな。君のドレスじゃ三歩で転ぶ。……それに、客人はまだ増える予定だ」
レオンが地上へ着地した瞬間、路地の先から重装騎士の一団が姿を現した。 第一王子直属の精鋭部隊だ。
「 スカーレット・ヴァランティーヌ! 殿下の秘蔵品を破壊した大罪、その命で償え!」
騎士団長が剣を抜く。 だが、その時。私の「審美眼」が、月光に照らされた騎士たちの鎧に違和感を捉えた。
「 ……レオン! あの鎧、左胸の合わせ目が甘いわ! 予算を削って、強度の低い錫を混ぜた合金を使っています!」
「 ……ははっ、こんな状況でまで鑑定か! だが、助かるよ!」
レオンが指先で銀色の魔力を練り上げる。 私の指摘通り、彼が騎士団長の左胸に一撃を見舞うと、最高級を謳っていたはずの鎧は「安物」のようにあっけなく砕け散った。
「 な……っ、馬鹿な!? 我が団の装備が、こうも容易く……!」
「 安物には裏がある……王室の騎士団も、中身は腐敗しているようですわね」
私が冷然と言い放つと、騎士たちは屈辱に顔を歪めた。 だが、多勢に無勢。さらなる追っ手が路地を埋め尽くそうとした、その時。
暗闇から一台の、見覚えのある馬車が猛スピードで突っ込んできた。 扉が開かれ、聞き覚えのある凛とした声が響く。
「 ――乗りなさい! さっさとしないと、置いていくわよ!」
「 大公妃様……!?」
そこには、豪華な扇子を握りしめたカトリーヌ大公妃が座っていた。
最後までお読みいただきありがとうございます! 窮地の二人を救ったのは、なんとカトリーヌ大公妃でした。 王都の審美界の頂点に立つ彼女が、なぜ反逆者を助けるのか? 次回、第17話。「大公妃の真意と、地下の秘密」。 物語の「裏」が、また一つ明かされます!




