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『「安物には裏がある」と婚約破棄された公爵令嬢、その審美眼で辺境の街を最高級ブランドへと変える』  作者: ゆっきー
第3章:境界を越える審美眼と失われた遺産

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第7話:広がる噂と、卑屈な足音

いつもお読みいただきありがとうございます! 「月光のボレロ」の噂は、風に乗って瞬く間に王都へと届きました。 自分たちが捨てた「石ころ」が、実は「ダイヤモンド」だったと気づき始めた人々。 スカーレットを追放した人々が、焦燥と共に動き出します。

 ベルダ男爵夫人が命からがら隣国へ逃げ帰ってから数日。 辺境の街「ルミナリエ」の名は、かつての「吹き溜まり」という汚名を上書きし、商人の間で「奇跡のブランドが眠る街」として囁かれるようになっていた。


 私は工房のテラスで、レオンが淹れたハーブティーを楽しみながら、一通の手紙に目を通していた。


「……あら、随分と必死ですこと」


 私が手紙をテーブルに放り出すと、隣で椅子に寄りかかっていたレオンが覗き込んできた。


「 王都からのラブレターかい? それとも、果たし状かな」


「 もっと退屈なものですわ。元婚約者の、エドワード公爵令息から」


 その名を聞いた瞬間、ハンスが作業台で嫌そうな声を出す。 エドワード。私を「安物ばかり好む女だ」と罵り、婚約を破棄して追放した張本人だ。


 手紙の内容は、こうだ。 『君が辺境で新しい布を発明したと聞いた。王室への献上品としてふさわしいか私が直々に検品してやるから、至急、王都に持参せよ。君の非を認めるなら、婚約の再検討も考えてやらんではない』


 私は溜息を通り越し、少しだけ笑ってしまった。


「 ……本当、この方は何も分かっていらっしゃらないのね」


「 全くだ。その男、自分の価値が暴落していることにすら気づいていないらしい」


 レオンが皮肉げに笑う。 私の「審美眼」は、手紙の行間から滲み出るエドワードの現状を正確に読み取っていた。 鑑定士としての私の不在が、彼の家を内側から腐らせ始めているのだ。


「 ハンス。返事はいりませんわ。その手紙、暖炉の焚き付けにでもしておいて」


「 へい、喜んで! お嬢様!」


 ハンスが意気揚々と手紙を丸めて立ち去ろうとした、その時。 工房の入り口から、慌ただしい足音が聞こえてきた。


「 スカーレット様! 大変です! 王都の紋章をつけた馬車が、検問を強引に突破してこちらに向かっていると連絡が!」


 報告に来た自警団員の顔は青ざめていた。 どうやら、返事を待つまでもなく、エドワード自らが乗り込んできたらしい。


 私は紅茶を飲み干し、立ち上がる。


「 ……レオン。最高級の『おもてなし』の準備をしましょう。本物の価値を知らない方に、辺境の洗礼を差し上げなくては」

最後までお読みいただきありがとうございます! ついに元凶の一人、エドワードが登場しました。 相変わらずの傲慢さですが、今のスカーレットとルミナリエの街には、彼を圧倒する準備ができています。 次回、直接対決です!

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