第6話:至高の輝きと、ひれ伏す虚栄
いつもお読みいただきありがとうございます! ついに完成した「究極の一着」をお披露目する、最高にスカッとするシーン。 隣国の特使、ベルダ男爵夫人の反応はいかに……? 本物の「美」がもたらす圧倒的な力、どうぞお楽しみください!
翌日。迎賓館のサロンには、落ち着かない様子のベルダ男爵夫人が座っていた。 昨日の「どす黒く変色したドレス」のショックから立ち直りきれていない彼女は、苛立ったように扇子を動かしている。
そこへ、私――スカーレットが静かに入室した。 手には、純白のクロスで覆われた銀のトレイを捧持している。
「 夫人。お待たせいたしました。貴女が持ってきた『古代の布』の解析……その答えをご用意しましたわ」
夫人が顔を上げ、鼻で笑う。
「 あら、たった一晩で? どうせ無理だったという言い訳でしょう? あの布は、我が国の最高の職人たちでも扱えなかったのですから……」
私は答えず、恭しくクロスを取り払った。
その瞬間、サロン内の空気が一変した。 窓から差し込む朝日の光を吸い込み、銀色のボレロが眩いばかりの光を放ったのだ。 ただの白ではない。真珠の輝きと、明け方の空のような淡い青が混ざり合い、布自体が呼吸しているかのような神々しさ。
夫人の扇子が、音を立てて床に落ちた。
「 ……な、何、これ……。これが、あの古びた布切れだというの?」
私は微笑み、夫人の目の前でボレロを掲げた。
「 ええ。貴女が見ていたのは、長い年月で魔力が眠っていた姿。ハンスの技と、私の審美眼……そして、レオンの知恵で、本来の輝きを取り戻させましたわ」
夫人は吸い寄せられるように立ち上がり、震える指先でボレロに触れようとした。 だが、その指が触れる直前、私はすっとトレイを引く。
「 ……スカーレット、それ、私に譲りなさい! いくらでも払うわ。王都の屋敷一つ分? それとも、宝石箱ごと差し上げてもいいわ!」
夫人の瞳には、美しさへの感動よりも、これを持っていれば王宮で誰よりも輝けるという強欲が渦巻いていた。 私は冷ややかな声で告げる。
「 お断りします。これは『安物』ではありませんもの。今の貴女には、これを纏うだけの『格』が足りませんわ」
「 なっ……! 貴女、自分が何を言っているのか分かっているの!?」
「 ええ。偽物のドレスを最高級と信じ込み、本物の価値を理解しようともしなかった。そんな方に、この『精霊の守護』が宿る衣を渡すわけにはいきません。……これは、我が街の宝として、しかるべき場所に飾らせていただきます」
夫人の顔が、屈辱で真っ赤に染まる。 だが、目の前にある圧倒的な「本物」を前にしては、どんな罵倒の言葉も安っぽく響くだけだった。
サロンの影で、レオンが面白そうにその様子を眺め、唇の端を吊り上げた。
「 ……手厳しいね。だが、美しさとは残酷なものだ。君の言う通りだよ、お嬢様」
この日、隣国の特使は敗北を認め、手ぶらで帰路につくこととなった。
最後までお読みいただきありがとうございます! 「格が足りない」――スカーレット様、最高にかっこいいですね。 隣国の夫人は退場しましたが、この「月光のボレロ」の噂が広まれば、もっと大きな勢力が動き出す予感がします……。 次回、ついにあの男が動き出します!




