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『「安物には裏がある」と婚約破棄された公爵令嬢、その審美眼で辺境の街を最高級ブランドへと変える』  作者: ゆっきー
第3章:境界を越える審美眼と失われた遺産

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第5話:職人の意地と、古の鼓動

前回のレオン登場に、たくさんの反応をいただき感謝です! 今回は、現代の天才職人ハンスと、古の知識を持つレオンの共作。 スカーレットの指揮の下、伝説の衣が形作られていきます。 ものづくりの熱気を感じていただければ幸いです!

 翌朝。工房には、不機嫌そうなハンスの怒鳴り声が響いていた。


「 ざけんな! なんだその角度は! そんな風に糸を通したら、布が歪んじまうだろうが!」


「 だから言っただろう? これは『布』を織っているんじゃない。『理』を編んでいるんだ。君の古い常識は、この糸には通用しないよ」


 ハンスとレオンが、図面を挟んで火花を散らしている。 現代の技術の極致を誇るハンスにとって、レオンの指摘は理解しがたい「魔法」に近いものだった。


「 ……二人とも、そこまでになさい」


 私は冷ややかな声を響かせ、作業台の上に広げられた「月光蚕」の糸を指差した。


「 ハンス、貴方の技術は世界一ですわ。レオン、貴方の知識は唯一無二。……なら、答えは一つでしょう? ハンスがその指先で糸の声を聴き、レオンがその流れを導く。……そして私が、その全てを『鑑定』して、一点の曇りもない完璧な形へと繋ぐ」


 私の言葉に、二人は顔を見合わせ、同時にはあ、と溜息をついた。


「 ……お嬢様にそう言われちゃ、やるしかねえな」


「 ……やれやれ。君の審美眼には逆らえないらしい」


 ようやく製作が始まった。 ハンスの魔法のような手捌きで糸が紡がれ、レオンがその旋律を整えるように呪文を編む。 私はその中心で、一瞬たりとも目を離さず、魔力の流れが乱れる場所を指摘し続けた。


「 そこ、三ミリ左よ。……ええ、完璧ですわ」


 昼夜を忘れた作業。 やがて、工房の中に柔らかな、それでいて神々しい銀色の光が満ち溢れた。


 完成したのは、一枚のボレロ。 「月光のボレロ」と名付けられたその一着は、置かれているだけで周囲の空気を浄化するような、圧倒的な存在感を放っていた。


「 ……できた。……俺たちの、最高傑作だ」


 ハンスが震える声で呟く。 私は完成したボレロを手に取り、その輝きを瞳に映した。


「 ええ。これこそが、本物の価値。……さあ、ベルダ男爵夫人にお見せしましょう。彼女の持ってきた『遺産』が、何に変わったのかを」

最後までお読みいただきありがとうございます! ついに完成、「月光のボレロ」。 職人の魂と古代の知恵が融合した一着は、世界をどう変えるのか。 次回、特使夫人との決戦(?)です!

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