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第2話:辺境のゴミ山に眠る真実

王都を追放され、数日間の過酷な旅を経て辿り着いたのは、王国の最果てにある寂れた街。


全てを失ったはずのスカーレットですが、彼女の「目」だけは失われていませんでした。 逆転の第一歩は、街の片隅にある「ゴミ山」から始まります。

 王都から馬車に揺られること数日。  

私が辿り着いたのは、王国の最果てにある街「バレー・ド・ラヴァ」だった。


 かつては鉱山で栄えたというが、今は見る影もない。  

通りには活気がなく、建物の壁は剥がれ、行き交う人々は皆、疲れ果てた顔をしていた。


「……ひどいものですわね」


 私は最後の一葉となったハンカチで、舞い上がる砂埃を抑えた。  

この街の人々が手にしている道具は、どれも見るに耐えないものばかり。  

すぐに刃こぼれしそうな斧、継ぎ目から魔力が漏れている街灯、そして――。


「おい、そこのネーチャン。そんな立派なドレスでこんな所に来るなんて、場違いだぜ?」


 不意に声をかけてきたのは、薄汚れた革のエプロンを着た男だった。  

軒先に「ジャンク屋」と書かれた看板を掲げた、埃っぽい店の店主らしい。


「ええ、自分でもそう思いますわ。ですが、行く当てがないものですから」


 私が冷静に返すと、店主は意外そうに眉を上げた。  

私は店先のワゴンに山積みにされた「ガラクタ」に目を向ける。


「……店主。このワゴンの中身、すべて『100レアル』均一というのは本当かしら?」


「ああ、そうだ。どれもこれも、まともに動かねえ魔法道具の残骸だ。部品取りにでもする奴しか買わねえよ」


 店主は鼻で笑ったが、私の目はその中の一点に釘付けになっていた。


 泥にまみれ、真っ黒に汚れた一本の「裁縫針」。  

他の客なら見向きもしない、ただの鉄の棒にしか見えないだろう。


 だが、私の目には見えていた。  

泥の下に隠された、緻密な銀の刻印。  

そして、数百年経っても損なわれることのない、極めて安定した魔力の残光が。


「これをいただくわ」


 私が指差したのは、その泥まみれの針だった。  

店主は呆れたように肩をすくめる。


「ハッ、そんなゴミを100レアルで買うのかい? そっちの大きな魔石の方がまだマシだぜ?」


「いいえ。こちらの大きな魔石は、表面にヒビが入っていますわ。あと三回も使えば爆発して、あなたの店ごと吹き飛ぶでしょう。……安物には裏がある、と言ったでしょう?」


「なっ……!?」


 店主が慌てて魔石を確認するのを横目に、私は手持ちの最後の硬貨をカウンターに置いた。    

手に入れた針を、手持ちのハンカチで丁寧に拭う。  

現れたのは、伝説の彫金師が打ったとされる「ミスリルの極細針」だった。


 どんな硬い革でも絹のように通し、縫った箇所に自動で強化魔法を付与する至宝。  

王都のオークションに出れば、少なくとも金貨500枚……500万レアルは下らない代物だ。


「さあ、まずはこの子に相応しい『職人』を探さなくてはなりませんわね」


 私は汚れた針を、まるで宝石のように大切に握りしめた。    

王子たちは、私からすべてを奪ったつもりでしょう。  

けれど、彼らは知らなかったのです。


 私という人間は、ただの贅沢品ではない。  

私自身が、あらゆる価値を生み出す「目」そのものであるということを。


 辺境の風が、私の赤髪を激しく揺らした。

第2話をお読みいただき、ありがとうございました。


100レアル(約100円)で買った泥まみれの針が、実は500万レアル(約5000万円)の至宝だった……。 「安物には裏がある」という彼女の言葉は、本物を見抜く力があってこその自信の表れです。


次回は、スカーレットの右腕となる「伝説の職人」との出会いです。


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