第2話:黒ずむ虚栄と、謎の断片
前回の開幕からたくさんの反応をいただき、ありがとうございます! スカーレットの言葉が、さっそく形になって現れます。 「安物には裏がある」――その真実、どうぞご覧ください。
ベルダ男爵夫人が滞在する迎賓館。 そこには、ヒステリックな叫び声が響き渡っていた。
「な、何よこれ! どういうこと!? スカーレットの言った通りじゃない!」
夫人が鏡の前で絶叫している。 つい数時間前まで黄金の輝きを放っていた彼女のドレスは、今や煤でも被ったかのように、どす黒い斑点が浮かび上がっていた。
この街の「辺境織り」の定着剤に使われる特殊な鉱石成分。 それが、夫人のドレスの粗悪なメッキと反応を起こしたのだ。
私は、メイドが差し出した紅茶をゆっくりと口に含み、平然と告げる。
「ですから申し上げたでしょう? その金糸は、この街の空気には耐えられませんわ」
夫人は顔を真っ赤にしながら、私の元へ詰め寄ってきた。
「貴女、何か細工をしたんでしょう! 恥をかかせるために!」
私は静かに首を振る。
「滅相もございません。ただ、そのドレスを作った職人が、材料費をケチって利益を上げようとした……それだけの話です。裏がある品を選んだのは、夫人、貴女自身ですわ」
夫人は絶句し、その場にへたり込んだ。 隣国の特使として、この街を見下しに来た彼女にとって、自国の「最高級」が否定されることは最大の屈辱だ。
私は、項垂れる彼女にそっと一枚の布を差し出した。 我が街で織られた、深い群青色のシルクだ。
「……何よ、これ」
「当座の着替えです。我が街の職人が織ったものですが、メッキのような紛い物ではありません。真珠の粉を練り込んだ糸で織り上げておりますので、何年経ってもその輝きは失われませんわ」
夫人が恐る恐るその布に触れる。その圧倒的な本物の質感に、彼女の目が見開かれた。
「……なんて滑らか。これが、あの『吹き溜まり』で作られたというの?」
「ええ。ですが、夫人がここへ来た目的は、私のドレスの講評ではありませんわね?」
夫人はハッとした表情を浮かべると、懐から小さな木箱を取り出した。 中には、古びた布の切れ端が入っていた。
「……我が国の王家に伝わる遺産の一部よ。でも、今の職人の誰にも、これがどうやって織られたのか分からないの」
私はその布を凝視した。 途端、私の視界に、これまで見たこともないような複雑な「理」が溢れ出す。
「……お預かりしても?」
私の問いに、夫人は力なく頷いた。 この瞬間、物語は失われた歴史の探求へと動き出した。
最後までお読みいただきありがとうございます! ざまぁ展開からの、ミステリー要素。 スカーレットが見つけた「古代の布」には、一体どんな秘密が隠されているのでしょうか。 次回の更新も、どうぞお見逃しなく!




