第九話:白銀の審判
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ついに建国記念祭が幕を開けました。王都中が華やかな熱気に包まれる中、スカーレットの展示ブースには、セシリア王女の噂を聞きつけた貴族たちが詰めかけます。
王都の中央広場。建国記念祭の目玉である「魔道具品評会」の会場は、着飾った貴族や裕福な商人たちで埋め尽くされていた。 その中央、最も目立つ場所に陣取ったのは魔道具ギルドの巨大なブースだ。しかし、人々の視線はその隣、質素ながらも気品漂う『ヴァランティーヌ』のブースへと注がれていた。
そこへ、第一王子カイルが、ギルド長を従えて現れた。
カイル 「……ふん、相変わらず大層な人だかりだな。だが、見た目だけの紛い物が、王家の認定を受けた品に勝てるはずがない」
カイルは嘲笑いながら、ギルドが用意した一本の宝剣を壇上に置いた。
ギルド長 「皆様、ご覧ください! これぞ我がギルドの総力を挙げた傑作『暁光の聖剣』です。最高級の魔金鋼を惜しみなく使い、出力は従来の三倍! これこそが、この国を守る『本物』です!」
会場から感嘆の声が上がる。しかし、スカーレットは冷ややかな目でその剣を見つめていた。 彼女がその場に歩み出ると、周囲の空気が一変する。
スカーレット 「三倍の出力、ですわね。……けれど、その負荷に耐えきれず、持ち主の手首を焼き切ってしまう設計については、どのようにお考えかしら?」
会場が静まり返る。カイルが顔を真っ赤にして叫んだ。
カイル 「何を馬鹿なことを! これは最高の名匠が打ったものだ。スカーレット、貴様の嫉妬もそこまで来ると見苦しいぞ!」
スカーレット 「嫉妬? 私は事実を述べているだけですわ。その剣、中心核に使うべき魔石の質を落とした分、無理な魔法回路を組んで出力を底上げしている。……あと数分、その展示台の魔力供給を受け続ければ、内部から崩壊しますわよ?」
ギルド長 「で、出鱈目だ! 証拠でもあるのか!」
スカーレット 「証拠なら、そちらの剣より、こちらの軍服をご覧になればよろしいわ」
スカーレットが合図を送ると、軍服を纏ったアリスティアが静かに前へ出た。 彼が軽く魔力を解放した瞬間、軍服に織り込まれた極純銀糸が、周囲の魔力を吸収し、柔らかな、しかし鉄壁の防御結界を自動的に展開した。
スカーレット 「『本物』の道具とは、持ち主の力を奪うものではなく、寄り添い、守るものです。……あぁ、そろそろお時間が来たようですわね」
スカーレットが指差した瞬間、壇上の『暁光の聖剣』が不気味な音を立てて震え出した。 次の瞬間、カキィンという高い音と共に、剣の身に幾筋もの亀裂が入り、魔力の暴発による黒い煙が上がった。
会場に悲鳴と動揺が広がる。ギルド長は腰を抜かし、カイルは呆然とその光景を見つめていた。
スカーレット 「……これが、あなたたちが『安物』で塗り潰そうとした結果です。道具の魂を無視した者に、最高級を名乗る資格はありませんわ」
観衆の目は、今や完全に『ヴァランティーヌ』へと向けられていた。 かつて追放された令嬢の「審美眼」が、王都の偽りの栄華を粉々に砕いた瞬間だった。
第9話をお読みいただき、ありがとうございました。
王都ギルドの「傑作」が自壊し、スカーレットの「本物」がその圧倒的な輝きを証明しました。公衆の面前でこれ以上ない恥をかかされたカイル王子とギルドの失墜は、もはや避けられないものとなるでしょう。
そして次はいよいよ、第2章の最終話(第10話)です。 敗北を認められないカイルによる最後の暴走、そしてスカーレットが王都に残す「真の置き土産」とは……。
第2章の完結に向けて、物語は最高の盛り上がりを見せます。第3章への【引継ぎ資料】も次回のラストで作成いたしますので、最後までお見逃しなく!




