第八話:王都の門と、静かなる宣戦
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妨害工作を逆手に取り、ついに「本物」の軍服を完成させたスカーレット。第8話では、彼女たちが慣れ親しんだ辺境の街を離れ、因縁の地である王都へと乗り込みます。
かつて自分を「強欲」と呼び追放した人々が待つ場所へ、彼女は卑屈な復讐者としてではなく、至高のブランド『ヴァランティーヌ』の主として帰還します。展示会前夜、王都に流れる不穏な空気と、スカーレットの揺るぎない覚悟にご注目ください。
バレー・ド・ラヴァの街を出立してから数日。スカーレットたちを乗せた馬車は、巨大な城壁に囲まれた王都の正門へと到着した。
今回の護衛を務めるのは、スカーレットが誂えた「礼装用軍服」に身を包んだアリスティア率いる警備隊だ。彼らが馬を並べて進む姿は、すれ違う旅人や商人たちが思わず足を止めるほどの威厳と美しさを放っていた。
馬車の窓から王都の街並みを眺め、スカーレットは小さく息をつく。
レナード 「……気分はどうだい、スカーレット殿。君にとっては、あまりいい思い出のない場所だろうが」
隣に座るレナードが、気遣わしげに声をかける。
スカーレット 「いいえ、レナード様。以前の私なら、ここに来るのを恐れたかもしれません。けれど今の私の目には、この街に溢れる『偽物』がどれほど脆いものか、はっきりと見えていますの」
馬車が門をくぐろうとしたその時、詰所の兵士たちが道を塞いだ。彼らが纏っているのは、王都ギルド製の普及型鎧だ。表面の金メッキが剥げ、継ぎ目が歪んでいるのがスカーレットの目には一瞬で分かった。
門兵 「止まれ! 辺境からの入城者は厳重な荷物検査が必要だ。特に、未認可の魔道具を持ち込もうという不届き者がいるとの情報がある」
明らかに嫌がらせだと分かる物言いに、馬上のアリスティアが鋭い視線を向けた。
アリスティア 「我々は領主代行の正式な使節団だ。これ以上の足止めは、辺境伯への侮辱と見なすが?」
アリスティアが軽く手綱を引くと、その軍服に編み込まれた極純銀糸が、太陽の光を浴びて青白く発光した。その圧倒的な魔力の波動に、門兵たちは気圧されて一歩後退る。
門兵 「な、なんだその装備は……。眩しすぎて、直視できない……!」
スカーレットは馬車の扉をわずかに開き、困惑する兵士たちに静かに告げた。
スカーレット 「ご苦労様。その鎧、左肩の留め具がもうすぐ外れるわよ。命を預ける道具は、もう少し吟味なさることね」
兵士が慌てて自分の肩を確認する間に、馬車は悠然と王都の中心部へと進んでいった。
その夜。王都の一等地に用意された迎賓館で、スカーレットとバーナビーは最終調整を行っていた。 窓の外には、煌びやかにライトアップされた王都の夜景が広がっているが、その光の多くは、魔力を過剰に消費する「効率の悪い」魔道具によるものだ。
バーナビー 「お嬢様、いよいよ明日ですな。ギルドの連中、今頃は裏でどんな汚ねえ手を使うか相談してやがりますよ」
スカーレット 「ええ。でも、どんな策を弄したところで、私の審美眼が捉えた『真実』を覆すことはできないわ。……明日、この街の光がどれほど濁っているか、皆様に教えて差し上げましょう」
彼女の視線は、王宮の最上階……第一王子カイルが住まう部屋に向けられていた。 明日の展示会は、単なる商売の場ではない。 それは、捨てられた令嬢による、腐敗した王国への静かなる宣戦布告だった。
第8話をお読みいただき、ありがとうございました。
王都の門での一幕、スカーレットの「眼」は、もはや相手に触れるまでもなくその弱点を見抜いています。権力で道を塞ごうとしても、圧倒的な品質の差が生む「威圧感」の前には無力であるという描写は、これからの展開を予感させますね。
次回、第9話では、ついに「建国記念祭」の展示会がスタートします。カイル王子やギルドの重鎮たちが、スカーレットの作品を「紛い物」だと決めつけ、公衆の面前で恥をかかせようと画策しますが……。
スカーレットの鮮やかな逆転劇にご期待ください!




