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『「安物には裏がある」と婚約破棄された公爵令嬢、その審美眼で辺境の街を最高級ブランドへと変える』  作者: ゆっきー
第2章:波紋を呼ぶ「ヴァランティーヌ」

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第六話:王女の帰還と、白銀の衝撃

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


前回、兄カイル王子が推奨する「安物」のせいで肌を傷めたセシリア王女。スカーレットが渡した極純銀糸のガーゼは、単なる布ではなく、彼女の誠実さが形になった「救い」でした。


第6話では、快復したセシリア王女が王都へと帰還します。彼女が身に纏うのは、スカーレットが密かに誂えた「ある作品」。それが王都の貴族たちの価値観を根底から覆す、鮮やかな一撃となります。

 王都の王宮で行われた、定例の晩餐会。 そこには、第一王子カイルをはじめ、魔道具ギルドの重鎮や有力貴族たちが顔を揃えていた。


「カイル殿下、例の『辺境の紛い物』の件ですが、エドワード副団長が厳重に警告して参りました。じきに消えてなくなるでしょう」


 ギルド長が揉み手しながら報告する。カイルは満足げに頷き、手元のワインを口にした。

「当然だ。私の政策が間違っているはずがない。民も貴族も、安くて便利なものを求めているのだからな」


 その傲慢な空気を切り裂くように、扉が開いた。

「——そのお言葉、聞き捨てなりませんわ、兄上」


 現れたのは、療養から戻ったセシリア王女だった。 彼女の姿を見た瞬間、会場にいた者たちは息を呑んだ。


 かつて肌荒れに悩み、厚いヴェールで顔を覆っていた王女の肌は、今や真珠のような輝きを取り戻している。だが、それ以上に人々を惹きつけたのは、彼女が肩にかけている**『白銀のショール』**だった。


「セシリア……。その肌、どうしたのだ? それにその不気味な光を放つ布は……」


 カイルの問いに、セシリアは凛とした声で答えた。

「不気味? おかしなことを仰るのね。これは、私を苦しめていた『安物の毒』を浄化し、癒してくれた真の至高品……スカーレット・ヴァランティーヌの作品ですわ」


 会場が騒然となる。 セシリアがショールを軽く翻すと、極純銀糸が灯火を反射し、まるで夜空の星を凝縮したような光の粒子が舞った。それは、ギルドが誇る「高級品」のどれよりも気高く、神秘的だった。


「スカーレットの……? 馬鹿な、あんな女にこれほどのものが作れるはずが……」


「兄上。あなたの『安物』は私の肌を焼き、このショールは私の心を救いました。どちらが本物か、この場にいる審美眼をお持ちの皆様なら、一目瞭然ではありませんこと?」


 セシリアの言葉に、周囲の貴族夫人たちが色めき立った。彼女たちの目は、もはやカイルやギルド長ではなく、セシリアの肩にある「白銀」に釘付けだ。


「……セシリア、貴様……!」 カイルが怒りに顔を歪ませたその時、セシリアはさらに追い打ちをかけた。


「スカーレットは言っていました。『本物は、言葉ではなく存在で証明する』と。……ギルド長、来月の建国記念祭で、ヴァランティーヌの展示会を王都で開催する許可をいただきましたわ。レナード領主代行の推薦状も添えてね」


 それは、スカーレットによる王都への宣戦布告だった。


 一方、辺境の工房。 スカーレットは、王都からの報告を待つことなく、次なる制作に没頭していた。


「お嬢様、王女殿下なら上手くやってくれるでしょう。ですが、ギルドも黙っちゃいませんぞ」 バーナビーが研磨したての魔石を差し出す。


 スカーレットはそれを光にかざし、不敵に微笑んだ。 「ええ。だからこそ、次は『見るだけ』の品じゃ足りないわ。……バーナビー、極純銀糸にドラゴンの鱗粉を混ぜなさい。王都の騎士たちが、自分の装備を捨てて跪きたくなるような、最高の『礼装用軍服』を作るわよ」


 彼女の瞳には、かつて自分を捨てた王都が、自らのブランドの前に平伏す未来がはっきりと映っていた。

第6話をお読みいただき、ありがとうございました。


王女セシリアの帰還により、ついにスカーレットの逆襲が王都の表舞台へと引きずり出されました。カイル王子が信奉する「安物政策」の綻びが、最も信頼していた身内から突きつけられる皮肉。そして、次なる目標は「建国記念祭での展示会」です。


次回、第7話では、展示会を阻止しようとする魔道具ギルドの卑劣な妨害工作と、それをスカーレットが「圧倒的な品質の差」でねじ伏せる展開を予定しています。

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