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[#5-來智花と愉快な仲間たち]

[#5-來智花と愉快な仲間たち]


時たま夢見る、姉さんとの甘々なモーニング。これが現実だったら、どんだけ最高か。

おれ達姉弟は、小中と物凄く仲が良かった。姉さんが高一の時までそうだったんだけど、次第に姉さんの方から避けられるようになってしまい、現在に至る。おれが何か、姉さんの逆鱗に触れるような事をしたとは思えない。姉さんの気が触れるような事は絶対していない⋯と誓える。

好きだから。好きな人が悲しんだり、怒ったりする所をなるべく見たくは無い。それで姉さんの感情が整理されるのなら仕方無い⋯とはなるけど、やっぱり姉さんには笑っていてほしいんだ。ただ笑顔でいてくれたらそれでいい。

姉さんの顔を、もっと近くで見たい。



翌日。

今日は夏休み突入直前。最後の高校。今日を乗り切れば、明日からは夏休みが始まる。おれとしては今年の夏は、思う存分友達と色んなところに行こうかなぁと思っている。たぶん、姉さんはこのおれの夏休みをよく思っていないと思うから。だってそうだろ?だいたいは予想出来るよ。おれや父さん母さんがいない昼間とかに、姉さんは1階のリビングへ降りてきたりしているんだろう。もし、夏休みにおれが家に入り浸ったりしてしまえば、姉さんの活動範囲を劇的に減少させてしまう事になる。それは受け取り方によったら、物凄く好都合な事かもしれない。

姉さんとコンタクト出来る可能性が、飛躍的に拡大するんだから。

でも、それって、姉さんは望んでいないことだと思う。だからなるべく、おれは学校とほぼ同じような時間に外出して、学校から帰ってくる時と同じような時間に帰宅。それを出来る限り、遂行していこうかな⋯と思った。

こういう事もあろうかと、沢山の交流を紡いでいて良かったな。おれが今、在学してる高校以外にも友達は多く存在。それは友達の友達を通して通じ合えた仲。やっぱ人と人との繋がりって凄く大事な事だよなぁ⋯と強く思う。姉さんにも気づいて欲しい⋯。

そんな交流関係の親密さと分母の多さで、夏休みの予定は真っ黒。携帯でスケジュールを見ると、もうビッシリ!この日もこの日もこの日もこの日も⋯あららら、おれってほんと、色んな人間と友達になってるようなぁ。そして忘れちゃいけないのは、母さんとのデート。母さんが『來智花と行ってみたい所があるのよ』とか言って、用意してくれた高級ビュッフェ。そういうのも楽しみだよ。


そんなこんなで夏休み突入直前の高校がスタート。おれ以外のクラスメイトもヤル気は皆無に近い。あと7時間経てば、放課後。そのまま夏休みの始まりだ。

あーーーーーーーーーーー、なんか誰かが問題起こして授業潰れねぇかなぁーー。



昼休憩。12時50分~13時25分。

この35分間。通常高校生活に於いて、一番に楽しみな時間と言える。この時間が用意されてるから、おれの今は楽しいし、充実度が半端ない。せっかくならもっと伸ばしてくれよ⋯と生徒会に言ってやりたいよ。こんな願い通じんのかな。ま、そんな勇気おれには無いから、たぶん誰かに頼む事になるんだろう。おれはそういうスポットライトがガシーンとぶち当たる場面があまり好みでは無い。『やれ』と言われればやるかもしれないが、自発的に実行に移そうとは思わないな。

まぁ、今日も自分だけの世界に浸った所で、友達との和気あいあいトークに思いを馳せる事にしましょうや。


「俺はもうダメだ⋯」

「どうしたのよ優衣芽、明日から夏休みだよ?」

「俺はもうヤル気にならん。あと数時間で夏休み!って考えたら、もう無理。眠気も襲ってくるし⋯」

「愛美は勉強出来るからねー。ワタシも出来るから、優衣芽の感情は分かり兼ねる」

「おい亜澄歌、俺も出来るってぇの!」

「ええええ?優衣芽なんてバカの極みでしょー?」

「亜澄歌お前⋯⋯」


如月優衣芽、結波愛美、片山亜澄歌。この3人に加えて、千桜楓生、紫苑彩斗。おれをプラスした6人で、よくグループを作り集まっている。放課後はもちろんの事、学校のイベント事になると、必ずこの6人で行動。まぁとは言っても、まだ高校一年だから特筆すべきイベントは無いんだけどね。ただ、夏休みよ。夏休み!ここでおれ達は沢山のイベントを計画しているのだ。でも中々全員が集合する天使っていうのはかなり限られてるのが現実。なので、個々だったり、3人ぐらいの小規模で集まったりがメイン。おれ的にはそれでもまったく問題無い。ただ夏休みエンド直前に、横浜みなとみらいで大規模な夏祭りがあるから、そこには『みんなで一緒に行こー!』と計画中だ。みんなにもそれぞれの事情がある。単純にそれは他の友達との約束、家庭内旅行だったりと様々。

おれも姉さんと2人っきりでどっか行きたい。めっちゃくちゃ楽しいだろうなぁー。あんな可愛い人と一緒に歩けるんだから、カップルって思われるかも⋯!

そうなれば、おれは姉さんとの時間を最優先事項として全ての予定を排除し、無条件に繰り上げる。

やば⋯行きたいなぁ。

行きたいなぁ⋯。マジで行きたいなぁ。


『來智花ー!』

『來智花ー、これ買って?』

『來智花に似合うと思うんだよねー』

『來智花オイし?』

『來智花大好きだよ♡』


「ンへ⋯ンへ⋯ンへ⋯ンへ⋯⋯ンへンへ⋯」

「おい⋯⋯來智花⋯⋯」

「⋯ん、、、、!!!」

5人全員の視線がおれに集まっている。少し向こうの席でだべっていた千桜と紫苑ですらも、おれに怪訝な視線を差し向けていた。5人の視線は刃先が非常に尖った新品ピカピカのナイフに思え、全身にゾワリ⋯と震えが走る。

「ラチどうしたの?」

「大丈夫!愛美大丈夫だから!ごめんゴメン⋯!あははは」

「何その乾いた笑い⋯あんたの事だから、きっとへんぴな心にでもなっていたんでしょ」

「亜澄歌なぁ⋯⋯」

めちゃくちゃにどストライクな予測に、おれは亜澄歌の視線が一気に怖くなる。他の4人と比べても、亜澄歌から向けられる視線は特に尖っていた。

「なんか面白い事おもいついたんか?」

「優衣芽、お前には後で伝えておくよ」

「マジか!?やったぜ」

「え僕は」

「千桜にももちろん伝えるよ」

「いや來智花やめとけ」

「え、なんで?」

優衣芽はおれに聞こえるだけの声量となり、ボソボソと耳元で囁く。


「お前どうせ、可愛い可愛いお姉さんの事考えてたんだろ?」

「ちょ!ちょっと⋯!やめろって!」

優衣芽の的を射た発言に慄く。そのリアクションがぶち刺さり、公開的な声音として4人に伝わってしまった。ちなみに、少し向こうでだべっている千桜と紫苑は、もうあまり興味が無い雰囲気を出している。いや、千桜⋯お前ぐらいはおれ達の会話に耳を傾けてもいい気がするぞ⋯。

「やっぱそうなんだろ?」

「優衣芽⋯お前誰にも言ってねぇよな?」

「言ってない言ってなーい。お前が熾泉花さんラブな事なんて言ってねぇって」

「はぁ⋯⋯別に言ってもいいけどさぁ⋯」

「いやいいのかよ」

「うん、別に、姉さんのこと好きな事がみんなに伝わるだけだから」

「ああ⋯まぁそうか。まぁ気が向いたらそれは、

來智花から言うとして⋯。千桜には熾泉花さんの刺激はまだ早え」

「は?」

「お前は分かって無いかもしんないが、熾泉花さんの可愛さは異次元級だ」

「そんなん分かってるよ」

「いやお前は分かってない。麻痺しちゃってんだよ」

「そうは言っても⋯おれ、最近姉さんの顔すら見れてないから⋯」

「まだなのか?」

「うん⋯中々降りてきてくれなくて⋯⋯」


「お二人さん?何話してんのさっ」

「あーごめん亜澄歌。ちょっと俺と來智花の秘密の会議だ」

「何話してたの?」

「そりゃあ愛美には言えないな。亜澄歌には言える」

「え、ずる〜」

「なんでワタシには言えんのさ」

「下ネタだから」

「アッハハハ!」

愛美が笑う。高らかに、笑う。

「優衣芽!!お前ェ⋯⋯」

亜澄歌の表情が激高を帯びた感情を併せ持ち、優衣芽に襲い掛かる。その様子を見守るおれと愛美。それを少し遠目で横目にする千桜と紫苑。少々、自分達が思っていた以上の取っ組み合いとなり、千桜紫苑の優雅コンビの意識が完全にこちらに向く。笑っていた。

男と女の戦い。

これは、ほぼほぼ毎日訪れる恒例行事的なものだ。もはや、レアな現象とは言えない。ただ、やっぱり面白い。笑ってしまう。

こんな空間が大好きだ。なんでもない⋯今後の社会何の役にも立つはずがない世界観。しかしこの時間は有限。恒久的なものでは無い。明日からは夏休み。

高校で、制服を着ての会合は1ヶ月半無くなるが、新たな楽しみが始まる⋯!と思いながら、また制服でなんでもない時間を過ごす事を気長に待とう。



「死ね⋯⋯死ね⋯⋯死ね⋯⋯死ね⋯⋯死ね⋯よっしゃぁあぁぁぁ!!やった!やった!嬉しスギ!やば!気分ソーカイだわぁ。ああ、爽快爽快」


7月の⋯⋯⋯いつだ?知らん⋯。マジでわからん。ああ、そうか⋯今日って7月の29日なんだ。

夏休みが始まってもうこんなに経ったんだね。まぁわたしからしてみればどうでもいいことなんだけど⋯。って、、、そうだ。どうでもよく無かったんだ。最初は。本来、わたしは夏休みが始まる⋯となって、非常に憂いていた。それは、家族が在宅する時間が長くなるから。パパは夏休みもテレビ局にて仕事するらしいから、(グループチャットで知らされた。ついでに個人チャットにてメッセージが来ていた。返信して無いけど)昼間にいることはほぼ無い。ママは在宅ワークが多くなる。そして特に、來智花だ。高校生は問答無用で長期休暇となり、家にいる時間が何倍にも膨れ上がる。

トイレに行く⋯風呂に入る⋯洗濯物を取りに行く⋯歯を磨く⋯。人間として清潔な格好を形作る上で、この4つは欠かせない。そして、その全てを遂行するためには1階まで階段で降りなければならない。トイレはまぁ、2階にもあるけど、それでも他の3つだ。

もう⋯どうしようかな⋯と、苦悩していた中で始まった夏休み。


⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?居ない。

居ない。

居ない。居ない居ない!居ないぞ?居ない!居ない。

夏休みに突入しても、弟が帰ってくるのは16時以降。これって⋯いつもの高校から帰ってくる時間とほぼ同じだよな。ええ⋯?今の高校生って夏休み減ってる感じ?


【カタカタ⋯パソコンで調べてみる熾泉花】


いや⋯7月の⋯19日から⋯⋯夏休みじゃん。バチバチに夏休み入ってんじゃん。え、、まさか⋯來智花、補講とか入ってる系?いやいや⋯そんなはずは無い。來智花はそんな低能な人間じゃない。補講に該当する人間にまで成り下がっているとは思えない。⋯⋯んん、でも、今の來智花を知らないワケだし⋯もしかしたら、勉強が疎かになって急激に学習能力の低下が現れたのかもしれない。それとも、來智花に女が出来て、それで⋯⋯。

今の來智花をわたしは知らない。全ては予測でしか無い。


「⋯あ」

殺された。オープンワールドには危険が伴う。“野良”と呼ばれるプレイヤーが現れ、無操作状態のわたしをアバターを狙い、攻撃を開始してきた。このオンラインゲームは無法地帯。何をしても許される⋯ルール無用のゲームなのだ。しかし、まったく知らないプレイヤーに殺されてしまうと⋯わたしはわたしでプライドがある。

「フン、やってくれやがったなコイツ⋯殺してやるよ」

もちろん、オンラインゲームの中で、だ。



飽きた。

今日もやり切ったなぁ。時間を忘れ、気づいたら8時間が経過していた。時刻は日付を回って午前1時。

「はぁ⋯疲れた」

ここ来て、ようやく『疲れた⋯』との言葉が出てきた。ノンストップ8時間。わたしを殺しに来た野良プレイヤーとの戦争は思わぬ方向へと転び、そのセッション内にいる他のプレイヤーをも巻き込む戦いへと発展。結果的に、ここまで引き伸びるまでに戦争が進んでいき⋯。最後はオープンワールドから抜け、招待制のデスマッチへと突入。限られたライフ数で、殺し合うサバイバルシステムだ。最初からこれで雌雄を決すれば良かったのに⋯と、デスマッチを開始した時に思ったのは情けなかった。なんだか7時間という莫大な時間が無駄となったみたいだ。

もっといい解決方法ねぇのかなぁ。なんか、すっげぇ心が複雑だわ。この時間⋯もっと有意義に使えたはずだろ⋯。オナニーとか。3回できたな。

そういや、この前、わたしの性癖にどストライクなアダルトビデオを発見・購入したのだ。

⋯⋯⋯⋯

⋯⋯⋯⋯⋯⋯

フン、18禁だァ??知るかぁ!ボケェ!簡単に未成年が覗けちゃうセキュリティ甘々設定なのがいけないんだよ!それにわたしはちゃんとお金払ってるし!タダで見てるよう激イタなユーザーじゃありませんのでえーーーー。ご了承くださーあーい。


【未成年者の成人動画へのアクセスは固く禁じられております。】


うるせええええええええええええ!!!エッチしたいの!わたしも!綺麗で可愛い女の子の裸体見て、一人エッチしたいんだ!いいじゃん別にぃ!お金払ってんだからァ!!許してよー!


【未成年者の成人動画へのアクセスは固く禁じられております。】


ゲートまで来て、『いいえ』を押すバカがいるかってんだ。

てな訳で、ゲームいっぱいやり過ぎたし、デスマッチでの最終戦争にも敗北したし(そうなの、わたし負けたの。負けたの⋯まけたの⋯⋯⋯なぐさめてえええ)、オナニーしよおっと。


「気持ちぃ⋯⋯やば⋯何この子⋯めっちゃエロいじゃん⋯」

やっぱ女の子の身体って最高だ⋯。アダルトビデオ見ながらのオナニーがわたしの一日で至高かも。これ以上の幸せってあんのかな⋯って、シテる時は思っちゃう。あんだけどさ。オナニー以上に幸せなことって。

“ゲーム上で”プレイヤーをなぶり殺しにした時とかね。

わたしの快楽の最上級は常に変わる。そのシチュエーションによって。

「わたしも、こんな感じの女の子になりたかった⋯」

こんなわたしでも胸のサイズはFカップある。なぁんにもして無いのにFカップ。このままだと劣化するよね。運動もぜんっぜんして無いし、垂れ乳になっちゃうまでの時間がかなりショートカットされちゃう。3.歳ぐらいになったら、胸ってしっかりケアされていないと劣化していくんだって。

なんか女性用アダルトビデオの授業パートでやってた。教壇にグラマラスなボディーを兼ね備えた美人講師の方がいて、その前には4人の人気AV女優が着席。普通にエロ目線とかじゃなくて、単純に女性の身体の秘密を紐解くような内容でとても興味深い知見があった。

「この胸、ちょっとは武器になるかな⋯」

オナニーの時にしか使わないんだよなぁ。わたしの胸。

高一の時、彼氏がいた。

わたしなんかにも、輝かしい高校生活があったんだ。その時に付き合っていた男と初めてセックスして、わたしは処女を卒業。男の方は、童貞じゃなかった。中々のプレイボーイで、女の噂が絶えない男。そんな男にわたしは惚れてしまった。今、思い返してみるとほんと簡単な女だなぁ⋯と猛省する。

でも幸せだった。彼とのセックスは、彼と付き合う前迄のオナニー以上の快楽を齎してくれたんだ。今では嫌な思い出として記憶しているけど⋯。出来うるならば、海馬から削除したい。抹殺したい。

わたしの裸を見るとみるみるギンギンになっていく彼のアソコ。セックス重ねていくにつれて、ソコが可愛いく見えてきたのは、単にわたしが変態だからだろうか。


「んフゥ⋯⋯アァん⋯やばぃ⋯⋯イク⋯イク⋯!」

気づいたらわたしは、アダルトビデオでは無く、その時の彼とのセックスを思い出してオナニーしていた。それって何?未練とかあんの?⋯⋯⋯⋯答えんのわたしじゃん。わたししか知らないじゃん⋯じゃあ無理だよ。わたしが分かんないんだもん。

あの人とのセックス。

もう二度とそれをオカズにしたくない。わたしの今の生活を自分で否定しているだけだ。そんなの。


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