表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

[#20-夏休みが終わって]

[#20-夏休みが終わって]



高校──。

お昼休憩。

夏休みが終わった一発目の学校。

いつメンの優衣芽、結波、亜澄歌。

少し遠目に、楓生、紫苑。

おれを含めた6人による弁当タイム。


「と、まぁこんな訳で⋯⋯」

「來智花のお姉さん、今日の学校は?」

「来てない」

「夏休みは來智花と一緒にどっか行ったんでしょ?」

「お前、ちゃんと來智花さん優しく接したのか?」

「当たり前だろ!」

「じゃあなんで今日学校来てないんだよーー」

「それは⋯まだ姉さんも戦ってるんだよ⋯」

「うーん⋯まぁな⋯⋯」

優衣芽の心が曇る。優衣芽には夏休みが終わる前に伝えていた事があった。

「お前言ってたよな?『姉さんに会わせてやるよ』って」

「あー⋯まぁ言ったけどあれはさぁ⋯」

「あれは⋯ってなんだよ!あれはってぇ?えぇ??」

「優衣芽、そんなに怒る事じゃ無いでしょーよ」

「亜澄歌⋯だってコイツよ⋯⋯」

「熾泉花さんは今、心を休ませるタイミングなんだよ。1年間家に籠ってる女の子が、急にいっぱい外出した⋯ってなったら、麻痺でもしちゃったんじゃない?分かんないけど」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

來智花は箸を止める。結波のその言葉を受けて、自分のせいかもしれない⋯と思ったからだ。そんな思い悩んだ姿を見て、結波はフォローする。

「あ!違うよ!もちろん、來智花が悪いって訳じゃないよ!それは違うと思う!」

「いや、おれが悪いんだよ⋯⋯」

「來智花⋯おい!優衣芽、ちょっと言い過ぎなんじゃないの?」

「亜澄歌、俺はな、お前らよりも熾泉花さんの事を前から知ってたんだよ。写真も見せてもらってた、中学生時代の熾泉花さんのな。だけど俺らが入学した頃には、引きこもってしまったみたいでな⋯半憧れ、みたいな感じだったんだよ。そんな人とようやく会える!!ってウキウキして今日を待っていたのに⋯!!」

「もうホントごめん!おれが早とちりし過ぎたんだ⋯姉さん、学校来てくれると思ったら、やっぱりダメだった⋯」

「弟の來智花としか会わなかったからじゃない?」

「亜澄歌、それだな。引きこもりの女が出てこない訳だ」

「優衣芽⋯姉さんを悪くいうような事は許さないぞ」

「⋯⋯悪い。すまない⋯俺が馬鹿だった⋯ごめん」

「うん、分かってくれたらいいんだよ」

一瞬緊張感が走り、他4人の目線が來智花と優衣芽へ向く。優衣芽が自分自身を見つめ直してくれたおかげで、言い合いにならず事は終わった。

「でもなぁ⋯來智花。流石に熾泉花さん、見たいよ〜」

「そうか⋯⋯」

「な、亜澄歌達に、熾泉花さんの姿、見せたことあんのか?」

「いや、ないよ。姉さんがこういう状況だっていうのも初めて明かしたし」

「写真ぐらいは見せてやってもいいんじゃねぇか?」

「あ⋯⋯うーーん⋯⋯」

「見せて!」「見せて!」「見たい!」「見たいよ!」

亜澄歌、結波、楓生、紫苑。

楓生、紫苑に至っては、少し離れていたのに、この話になったら速攻で來智花に急接近。

來智花は悩む。


まぁ⋯⋯別に、見せても悪いもんでも無いしなぁ⋯。


「うんまぁ⋯見せるぐらいなら⋯。良いけど⋯」

「ホント?ありがと〜!來智花!」

亜澄歌が喜ぶ。他の3人もそれぞれの喜びを見せる。


【善知鳥熾泉花が映る写真を見せる來智花】


「⋯⋯めっちゃくちゃに可愛いじゃん⋯」

「うん、私⋯こんな可愛い人見たことない⋯」

「これが⋯1年上にいるの、、、」

「ワッチの知るアイドルよりかわいい⋯」


紫苑の一人称“ワッチ”なのが気になるとこだが⋯4人が喜んでくれて良かった。まぁ当たり前だけど。こんな美人マジでいないし。絶対。マジで。確実。確定。断言。

「こんな可愛い人が、引きこもり⋯⋯何があったの?」

「お、愛美確かに。それは俺も聞いた事ないな」

「それが⋯おれにも教えてくれないんだ⋯」

「⋯ってなると、恐らくは⋯⋯人間関係で色々あったんじゃないの?」

亜澄歌が言う。それは來智花の思考にも当然、あったものだ。

「おれもそうだと思ってる。たぶんだけど⋯姉さん、あまりにも他人を信用してないような目をする時があるんだ」

「それはたまに?」

「結波⋯そんなたまにじゃないんだよ⋯⋯」

「それはちょっと心配だね」

「それなのに、お姉さんは外出してくれたんだね。それって凄い変化じゃん!來智花のことを信用してなきゃ絶対無理だよ」

「亜澄歌、ありがとう」

「だからさ來智花。お姉さんに何があったのかは、こっちから詮索するのはやめといた方がいいと思うよ。吐き出せばお姉さんの気は楽になるだろうと思うけど、もうちょっと他人と関わってからの方がいいのかも」

「ユイもそう思う。てか、もしそうなら、來智花のお姉さんをこんな目にあわせた人達許せないね」

「ああ、俺がぶん殴ってやる」

「僕も」

「ワッチもだなや」

「⋯ありがとうみんな。だからさ、優衣芽。もうちょっと待っててくれない?姉さんが完璧な状態になったら、姉さんに友達を紹介していいか聞いてみるから」

「おう!そん時は頼むぜ」

「私もよ?」

「ユイも!」

「僕も!」

「ワッチも!」

「はいはい。でも姉さんが怖がっちゃうから、一気に5人を会わせるのは無理だからね」



久々、ってわけじゃない。

夏休み中もたまぁに独りの時間はあった。でもその時は、逐一來智花からのメッセージが届く。

『姉さん、今日のランキング勝てた?』

來智花は本当に優しいな。本人からしてみれば、絶対にどうでもいいし、理解も難しいと思うのに⋯わたしの機嫌を損ねないために、わたしに話を合わせながら、それに加えて、わたしを独りにしないようにしている⋯。

わたし、別に独りで良かったのに⋯。

でも、今は⋯來智花の存在が必要不可欠になってしまった⋯。こんな将来全然読めてなかったよ⋯人生ってもう⋯ムズすぎる⋯

弟に惚れてる⋯?

まさか⋯⋯⋯そんなわけ無いって。

でも⋯わたしは、來智花に肉体的接触を図ろうとした。一瞬、いけないことしてる⋯と思い、思いとどまったけど⋯。


今日からまた、学校か⋯。

來智花とは夕方まで会えない⋯。

だけど学校に行ったら、休み時間にでも会える。

それに授業中だって、隠れながらメッセージのやり取りも行える。來智花にその余裕があれば⋯の話だけど。

学校⋯⋯⋯行ったら、來智花といつでも会えるのか⋯⋯⋯

会いたいな⋯⋯⋯⋯⋯⋯会いたい⋯⋯。


【メッセージの通知音】


あ、來智花だ。


『姉さん!今日学校早く終わるんだって!だから今日、早く帰るよ!』



⋯⋯⋯⋯わたしの弟、良い男すぎ。




The END.


Authored by Kanroh Kisari.

虧沙吏歓楼です。当たり前です。じゃなかったら大問題。

ここで終わり。一旦終わり。『Lil'in of raison d'être』本篇に取り掛かります。

楽しかったです。『引きがため』

また、CHAPTER.2をやる機会が出来たら⋯。

続編構想は全然あります。ただ優先順位的に言えば、、、なので。

熾泉花と來智花。この2人を忘れないでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ