お前を王にする ー前日譚ー
連載のためのアップとして書いています。
連載ではプロローグとなるためタイトル回収はありません
―アンルル国 王都ディートス付近
「クロック軍は逃走し、市街地の方に向かっています!!」
一人の部下から報告が入ってくる。
「バーミヤンはどう見る?」
前王の息子であるフレーク・ベンダーは近くにいる部下に質問をした。バーミヤンはフレークと同い年であるが、昔フレークがバーミヤンを助けた時に部下となり、そこから様々な出来事をともに乗り越え、フレークにとって1番の部下となっている。
「追いましょう!敵は裏切り者です。私が壊滅して見せましょう」
フレークはわずかに目を伏せる。
半年前フレーク・ベンダーの父である前王は突然の病により病死した。後継者は息子のフレーク・ベンダーだと思われていた。しかし当時宰相であったダーマ・クロックはフレークがまだ青二才であることを理由として、自分が一時的に王となることを前王に命令されたことを主張した。ダーマがかなりの権力を持っていたことに加えて、ダーマの他に誰もその遺言を聞いておらず、肯定も否定もできないためとりあえずフレークの代理としてダーマが国を治めていくこととなった。
しかしダーマが就任して数ヶ月経った頃、ダーマの暗殺未遂が起こった。詳しい調査を続けていくとフレークがダーマを殺害し自分を王にするべき旨の書類が見つかり、実行犯の一人が自白をした。
―――もちろんダーマの自作自演である。フレークは冤罪だと主張し、再調査を要求した。しかしダーマがトップになったことで甘い蜜を吸っている者や、大きな権力を待っているダーマに縋りついている者が味方につき、フレークは暗殺未遂の主犯であると烙印を押された。
ダーマとしてはそのまま牢獄にぶち込み、あるいは処刑して自分の権力を確立しようとしたが、前王に恩がある者の手によってなんとかフレークは逃げ込むことに成功した。
そしてダーマがフレークを討とうと兵を挙げ、それにフレークが応戦した形となりこの戦いが始まった。意外にもフレークは前王に恩がある者の他に、良識のある者や誠実な者もフレーク側についたこともあってか両軍の戦力はほとんど同じくらいになっていた。
「罠の可能性はないか?」
フレークは過去のことを思い出し、危惧していた。私に濡れ衣を着せたのは絶対ダーマだ、この戦も何か作戦があるのではないか。
「大丈夫です!敵は演技ではなく本心で逃げていたと報告が届いています!これはチャンスです。行きましょう!!」
フレークは再び思案する。ダーマといえどもあいつらを束ねるのは簡単ではない。あいつらは自分の保身が大事で、戦いには消極的だ。その結果僕らの軍が有利に進めているところはあるだろう。
他に気になるのはフレーク軍の逃走経路だ。市街地に逃げ込むということは民が多くいるため、あまり派手な行動は起こせないだろう。あるとしたら街に溶け込んで隠れることか。だとしたら周囲に警戒をしながら進軍すれば問題ないか・・・
バーミヤンの他にも進軍を主張している臣下は多くいる。士気を保つためにもここは・・・
「―――ダーマを追う 行くぞ!!」
静かだな・・・
ベンダー軍は市街地に到着した。逃走している敵軍はバーミヤンに任せ、フレークは一部の兵を引き連れ市街地を警戒しながら進んでいく。民は隠れているようで家や店の中から出てこない。
ダーマが隠れているとしたら骨が折れるな。そう思いながら部下に指示を出し、自らも民家を訪ねていく。しかしなかなか家から出てくれない。部下に聞いたところによると民が出てきたとしても何も話さなかったり、軍が走っていったこと以外は知らないと答えるだけであるらしい。フレークは考えすぎだったかと思っている時、昔お忍びで訪れたことがあるパン屋を見つけた。
―――元気でやっているのかな。
そんなことを思いながら、パン屋にノックをすると見たことがない顔が出てきた。
「兵士さんどうかしましたか?ここにはあなたが欲しいものなんてなにもないですよ」
フレークは不審に思いながら訪ねた。
「あなたは誰ですか?確かここのパン屋は老夫婦がいたと思うのですが」
「あーえーっと二人は自分に店を譲って田舎に帰ったんです。だから今は自分が継いでるって感じですね」
「なるほど。そういうことでしたか。たしかこの店には看板娘のマヤがいたはずですが元気ですか?」
「元気っすよ。今日は休みなんでいないっすけど」
フレークは息を吐いた。
「この店は老夫婦が二人だけで経営してるんです。マヤなんて人はいません。お前は誰だ?」
フレークは剣の切先をパン屋にいる若い男性に突きつけた。
若い男性は両手を上げながら話し始めた。
「あのさ兵士さん、いやフレークさん。なんで他の民はあなたが訪ねても出てこなかったと思う?なのになぜここにきて出てきたと思う?」
「―――まさか」
「そうだ!ここ一帯の民は全部俺らの兵士であり、お前はちょうど囲んでいる地帯の真ん中だ。お前ら!フレークを殺ったら大手柄だ!全員でかかれ!!」
完全にやられた。
これは死んだかもな・・、
フレークは大量の兵士が近づいている様子をみてぼんやりと考えていた。ここから頑張ったとしても自分に勝ち目はないだろう。敵だとしても我が国の民だ。負けるとわかっているのに家族もいるであろう人を倒すのは正しいのだろうか。ほんとうに俺は青二才だったな。フレークは自嘲しながらもこれからのことについて考える。妻と息子は大丈夫だろうか。一応妻と息子には事前にノイアーさんに頼んでそこで匿ってもらえるよう指示しているが、暮らしていけるのか。息子は自分が16歳の時に生まれた子であり、今は12歳である。妻と息子には辛い思いをさせてしまった。息子に何も教えることができなかった。誠実に生きるように伝えたが、今となってはそれが原因で負けるなんて笑えない。せめて息子に賢くて強くて、信頼できる友ができてくれたらいいな。フレークは近づいてきた兵士を薙ぎ倒していく。しかし完全に囲まれ、兵士達がまとめて切り掛かってくる。
もう、ダメだな・・・
どうか幸せに・・・生きて・・・・・
クロック視点
ダーマ・クロックは障害であったフレークを倒すことができて上機嫌であった。
「よくやった。ハーガン、サグナキオ。お前らのおかげて勝つことができたな」
サグナキオは退屈そうにしながら答える。
「フレークは王となるとしたら優しすぎます。今回も民のことを思いやり、戦いに対して消極的になった彼の行動を予測するのは簡単です。戦いの前に一部の地帯の民を脅して民家や商店を乗っ取り、自分たちの兵を置いておきます。後は捨て駒のやつらにうまく市街地に敗走するよう誘導すれば、民のことが気になる賢い彼は合理的な理由を見つけ市街地で足を止めるでしょう」
「そこを我が軍の兵士が不意打ちで倒すってわけか。まぁリスクのある作戦だが、、、いい性格してるなサグナキオ。それにハーガン、おまえが仕込んでたバーミヤンもいい仕事をしただろう。残念ながらもう命はないがな」
「まぁあいつは、、、いえなんでもありません」
「さっさと残党倒して帰るぞ。トップがいなくなったベンダー軍はもう烏合の衆だ」
こうして後に第一次ディートス戦争と呼ばれることになる、天下分け目の戦いはダーマ・クロックの勝利に終わった。
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