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SFショートショート

酔いどれキューピット

 タイムマシンを完成させた私は、その実証実験として過去の世界でもを見てこようと思い立つ。

 さてなにを見てこようかと考えていると、ふと部屋の隅に置いてあった家族写真が目に留まる。幼い私と両親が写っている写真だ。

 そういえば前に母が言っていた。両親の馴れ初めは、妙な格好をした酔っ払いに絡まれていた母のことを父が助けたことであるらしい。

 いわばその酔っ払いが両親にとってのキューピットであり、ある意味では私の生まれたきっかけだ。

 その人物を見てこよう。



 かつて両親が住んでいた土地に降りた私は、母に聞いていた時間に母が酔っ払いに絡まれたという場所へと向かってみる。その途中で何人かが私のことを怪訝そうな表情で見ているのを感じた私は首を傾げるが、すぐにその理由に気が付いた。いまの私の格好はこの時代から数十年後の服装なのだ。そのせいで妙な印象を与えてしまうらしい。

 過去に行くならその時代の服装を用意することを忘れないようにしなければ。そう考えながら私は足早に現場へと向かった。

 しかし時間は合っているはずであるのに両親らしき姿は見えない。しばらくそのあたりを見回っていた私はやがて顔を青くする。

 ひょっとしたら私が来たことでなにかがズレて両親が出会わなくなってしまったのではないのか?

 もしそうであるなら私はどうなるのだ? 消えてしまうのだろうか?

 そんな強い恐怖を感じた私は思わず近くにある酒場へと入ると強い酒を注文した。そしてどんどんそれを喉へと流し込む。


 そうしていると「あの」と誰かが私に話しかけてくる声が聞こえてきた。

 そちらへと顔を向けてみるとどこかで見たことのあるような女性が心配そうな表情で私のことを見ていた。


「そんなに飲むと身体に悪いですよ」

「うるせえな、もう死ぬかもしれないんだよ、勝手にさせろよ」


 そんなこんなしていると今度は男性の声が割り込んでくる。


「ちょっと、その人困ってるじゃないですか」


 その男性の方へと向いた私は、やはりどこか見覚えのある男性へと食ってかかる。

 そうしてなにがどうなったのか、いつの間にか私は酒場を叩き出されていた。ズキズキと痛む頭を振りながらタイムマシンのある場所へと戻り、そしてもともといた時代へと戻った私は、とりあえず叩き出されたときに付いた泥を落とそうとして洗面所へと向かった。

 そしてそこの鏡に映る泥の付いた顔を見て呟く。


「ふうん、これが両親のキューピットの顔か」


 そうしてなんたかおかしくなってきた私は大きく笑った。

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