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地下トイレの鏡

小学2年生の夏、俺は交通事故で奇跡的に打撲や擦り傷で済んでいたのだが、どうやら意識混濁している期間があったとの事で精密検査のできる総合病院に入院した。

親はあまりこだわりが無かったようで何事もなく大部屋に入院させられた。

病室には俺のほか、ユウタとカズにマサト、小学校低学年の4人と、そしてちょっと年上のタケシ兄ちゃん、その向かいにも一人いたがよく夜に5人で話してると怒鳴られていた。

この夜におしゃべりしてると怒鳴る人はお昼は全くと言っていいほど病室に居なかった、なので名前はわからずに過ごしていた。

反してタケシ兄ちゃんは結構重い病気なのか窓際のベッドから動いているのを見た事が無かった。

タケシ兄ちゃんは話し上手で、夜になると怖い話を語って俺たちをビビらせることもあった。

ある夜、タケシ兄ちゃんがいつものように声を潜めて言った。

「この病院の地下に霊安室があるって知ってるか? 夜は幽霊がウロウロしてるらしいぜ。」

ユウタが「マジ!?」と目を輝かせ、カズは「行ってみようぜ!」と強がって言ってるのか声が震えていた。

俺はこうなると残り自分たち次第だとわかっていたのでマサトと二人顔を見合わせてしまっていたが

マサトが「よ、よし、行くか!」と乗っかってしまった。

こうなれば仕方がない、俺も付いていくことになった。

真夜中、ナースステーションが静まり返った頃、俺たち4人は病衣で病室を抜け出した。

階段をコソコソ降りていく。病棟は非常灯以外まるであかりが無い中、各階のナースステーションのあかりにホッとしたのを覚えている。

子供特有のぺたぺたという足音を極力鳴らさないようにしながら、

なぜか先頭を任されていた俺の肩にマサトの手が力強く握られていたのをよく覚えている。

地下に着くと、空気が急に冷たく、病棟の喧騒が嘘みたいに消えた。

病院の中でも静かな所ってあるんだなと思ったものだ。

「ここ、誰もいねえな…」ユウタが囁き、ああそういえばと思った。

廊下は真っ暗で、プレートも見えない。

正直当時の学力で霊安室なんて書かれていたとて読めたとは思えないが

タケシ兄ちゃんが言うには「霊安室は階段を一番下まで降りたら左奥だ」と言っていた。

ここからは先頭を交代してカズがずんずんと先に進んでいく、正直全く勝手がわからなかったので誰かに鉢合わせることもあると思っていたのだが、妙なことに誰ともすれ違わなかった。

病院なのに、看護師も患者も、誰もいない。

一番奥の扉が見えてきたころ、マサトが

「ごめん!先にトイレ行きたい!」

と、今にも漏らしそうなのか股間を抑えていた。

「じゃあ全員でいこう、俺も行きたい。」

と俺も言って全員でトイレに行った。

そこは不思議なトイレだった

病棟のトイレに比べて手洗い場が広く、鏡も大きかった

それに病棟のトイレは夜間でも電気が付いているのに、人の出入りが無いからかここはついていなかった。

自分たちでは電気が付けられないので諦めて薄暗い中で用を足す

全員で手を洗おうとしてた時

カズが「うわぁぁぁ!」と悲鳴を上げた。

言うが早いか、出口にかけていくのをユウタが抑えながら、ユウタもそれを見て顔をどんどん青くする

そして、遅れて俺とマサトもそれに気が付いた。


鏡の奥、黒い影がいる。


うごめいていたと思った次の瞬間

ハッキリ、人の形になり、手が伸びてくる。

恐怖で動けないなか

「走れ!」

と病室でよく聞いた怒鳴り声が響く

それを聞いた自分たちは全員パニックになりながらも病棟に逃げ込んだ。

それだけ騒げば夜勤の人に見つかる。

ナースステーションで怒られながら、戻ってこれたことに安堵していた。




検査入院も終わり数か月後の通院でマサトと出会った。

久しぶりにあったのもあってついでだからと親にあの大部屋に行けないかと聞いてみた。

ユウタやカズは退院しているかもしれないが、窓際に居たタケシ兄ちゃんは退院しているイメージが無かったのでいるだろうと思ってだった。

そうすると、親たちはそろって変な顔をした。

「4人部屋にそんな子いた? あなたたち4人だけでしょ。」

「そうよね~・・・」

という大人たちの言葉がこの時はもう恐怖で聞こえてなかったと思う

今でも鏡を見るたび、あの夜のことを思い出す。

あの影はなんだったんだろう?そしてあの声の主は?

そしてタケシ兄ちゃんたちは一体どこに消えたのだろうか・・・

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