第五十話 テミス商会復活計画
彼の名はテミス商会商会長のナルガという。貴族の後ろ盾を得た上でテミス商会を大商会に成長させたやり手の商人だ。まだ30代と若いが、その目に宿る光は老練な商人にも負けない。ただかなり、いやとても、黒い噂が絶えないのである。
「何ということだ……」
そんなナルガは、現在頭を抱えていた。理由は簡単。妨害中の新興商会が妨害を仕返してきたのである。普通小さな商会なら何の問題もなく吸収できた。
というか吸収することによって人気商品を生み出してきたと言っても過言ではない。基本的に新しくできた商品には商売の神と法の神の加護が宿る。それによって複製が不可能になるのだが、技術者ごと買収することによってその条件を突破できるのだ。
「ナルガ殿。一体どうしたというのです。あのウィンクル商会とかいう奴らのせいで我が領地は大打撃なのですぞ!」
そういうのはメルボーン侯爵である。彼は兼任貴族であり、彼の領地は香辛料の産地である。
その香辛料でボロ儲けしていたのだが、醤油、味噌などと言った調味料が売り出されたことで、一般家庭からの香辛料の購入がほぼストップしたのだ。
なにより、カレー粉が問題だった。香辛料を使ってはいるのだが、メルボーン侯爵では作っていない香辛料なのだ。この世界ではあまり使われていない 香辛料と言っても過言ではない。
さらにカレー粉を使えばバラエティ豊富な料理を作れるのだ。おかげで彼の収入は激減である。だからこそ傘下の商会に頼んで潰してもらおうとしているのだが……
「こちらも困っているのです。何やら対策が行われたようで嫌がらせをしようとしても避けてしまうのですよ。さらに向こうからこちらへの嫌がらせが出てきましてね。何故か懇意にしていた取引相手が向こうに鞍替えしたりしているのです。」
そっちの方がサービスがいいだけである。
「絶対にバレないようにした秘匿技術もバレていますし……」
鼠一匹も通さないような防備を固められるところはほとんどない。というか、この世界のテイム技術は実はあまり進んでいない。だから動物をスパイに使うと言う考えが浸透していないのだ。
「こちらも援助はおしまん。何なら虎の子の暗殺部隊も動かそう。何としてでも妨害を止めるのだ。まずはそれからだぞ。最悪あやつに協力を頼むか……いや、奴はこういった面倒な仕事を嫌うからな……」
そうして、値下げをしたり品質を上げたりと様々な対策が急ピッチで進んでいった。彼らにとってよかったのは、【商人】系統の才能を持っている人が多かったからであろう。商売や生産に関する効率が上がるのだ。
だが、それも長くは続かない。崩壊の時は、迫っていた。
【次回予告】
後ろ盾というものは、時に役に立ち時に厄介になるものなのです。
次回 メルボーン侯爵失墜計画
【〜おわりに〜】
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次回更新は5月5日日曜日です。




