第二一話 黒きものたち
[デボン]
デボンは必死で考える。これは、見逃してもらったのだと。二度と彼に関わってはいけないと。服従の命令を出されなかったことはとても良かったと思う。おかげで情報提供ができそうだ。
[三人称]
……クルトはうっかり魔物に対する心構えで当たっていた。場所が狩場だった上、相手が魔神だったからだ。
おかげで勘違いしたナビさんが強烈な威圧を出しており、デボンの心をぽっきりと折っていた。
ナビさんもまだまだ改善の余地がありそうである。
ーーここは、暗黒界。暗黒神を筆頭とし多くの魔神や黒神が使える。黒神とは、暗黒界での神の呼び名である。
ここに、光はない。ただただ、暗さと瘴気が満ちているだけである。
[ダーガ]
魔神王ダーガは困惑していた。筆頭魔神候補のデボンが大慌てで帰ってきたのだ。まだ偵察任務中のはずなのに何事かと思い会いに行くと、緊張に満ちた表情で『人間にミューが生まれました』と言った。
[三人称]
その瞬間、部屋は騒然とする。「直ちに討伐を!」「いや、出来るものか。友好だ!」「一度様子を見るという手も」「そのうちにさらに強力になってしまう」様々な意見が飛び交う。
「静まれ!」
ダーガの声で一瞬にして静かになる様子はさすがといえよう。が、ここで対応を誤ると手がつけられない事態になることは火を見るよりも明らかである。
ダーガはデボンを上回る筋肉質な体つきと真っ直ぐで長い角が特徴である。肌は赤く、その力は圧倒的であった。
「まずは調査だ。デボン。状況を詳しく話せ!」
「はっ。私が偵察しておりましたところ、向こう側がこちらに気づき、私を捕獲。逃げ出そうとしましたがあっさり捕まりました。どちらかの味方になるつもりはないらしいです。」
「では、まだ大丈夫なのでは?」「馬鹿!そんなこと言ってられるか!ミューだぞ!」「やはり討伐を!」「返り討ちにされたらどうする!」
「静まれ!」
また一喝。
「むう、まだ情報が足りぬな。デボン!ご苦労だった。お主に3週間の休暇をやろう。アーム!お主は絶対に気取られぬように奴を見張るのだ!邪神のババアの手のものが絶対に接触することなきようにするのだぞ!」
「ふふふ。なるほどなるほどそうですか。それは面白い。ぜひ会って見たいものですねぇ。」
「誰だ!」
議場に、黒ずくめの男が現れた。誰も気配を検知できなかったのだから、相当なやり手だ。一瞬で警戒体制に入る。だが、一度そのものを認識した途端、その場にいるほとんどが恐怖に震えた。
ダーガでさえも、冷や汗を浮かべていた。
「いえいえ。名乗るほどのものではありませんよ。ただ面白そうな話を聞いて、ね。」
「その服装……あのイカレポンチの仲間か。奴に手を出すことは許さん。あれは我らの獲物だ。」
「ふふふ。そうですか。ならば皆さんには消えてもらいましょうか。」
「ぬっ!全員迎撃体制!」
「ふふふ。無駄ですよ!喰らいなさい。黒色の影!」
彼の目が赤く光り、黒色の球体が議場中心に向けて放たれる。
そのたった一撃で、議場含めこの城が消滅する。後に残ったのは黒い沼である。全て消え去ったのだ。
「ふふふ。この程度の小手調べで消滅してしまうようではまだまだですね。それではいきましょうか。皆さん。」
「はっ!」
彼は、同じく黒ずくめのものたちを連れて消え去る。どこへゆくのかを知っているものは彼らしかいない。
しばらくして、沼近くの茂みが動く。出てきたのは、魔神デボンであった。
「おのれ、この恨み、いずれ必ず晴らしてくれようぞ!」
そう言って、彼は光の粒となって消えていった。
彼はスパイである。魔神王のところに潜り込んでいただけであり、本体は別のところにいる。それは、黒ずくめの彼らも気が付かなかったのだ。
かくして、最大派閥の魔神王ダーガが率いる魔神たちは消え去った。それにより、暗黒界にはしばらくの混乱が渦巻くのであった。
【次回予告】
受験後の学園内は、とても混乱している。犯人は……
次回 学園紛争(?)
【〜おわりに〜】
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次回更新は1月26日金曜日です。




