グループ発表 #7
まずは、基本方針を確認し、予定を立てていかなければならない。
さっそく奏良はミーティング用のホワイトボードを手配し、その前に立つ。
「全員で 会議→ 決定→ 上層部へ報告→ 実行→ 結果を報告→ 修正すべき点について再度 会議―――基本的に、この繰り返しです。今後は このやり方でいきます。これはDHEとしての方針だから」
ボードにペンで書きながら、メンバー四人に対して説明をしていく。幾度となく行ってきたことだから、慣れたものだ。
「全国行脚に行くために、まずはオリジナル曲を仕上げながら、並行してレッスンも続けて 個人のレベル上げをする。ただ、時間に余裕は無いから、スケジュールを逆算して 予定を決めていかなくちゃいけないの」
①オリジナル曲→レコーディング→曲の配信
②レッスン→レベル上げ→リハーサル→公演
最終目標は、会社が認めるレベルに達し、デビューすることだ。
デビューの合格基準や日付などの具体的な事は、決まっていなかった。もしかしたら、候補生たちの仕上がりによって、急に決まることもあるかもしれない。
「多分、例年通りだと、全国行脚の期間は 一ヶ月か二ヶ月弱……くらいだと思う。お客様の入り方によって日数は前後してくるだろうけど、だいたい そんな感じだと覚えておいて」
会場を確保するには、それなりのお金と人手が必要だ。いくら候補生のためとはいえ、予算は避けられない問題なのだ。
「………正直、短く終わってしまうのだけは避けたいんだよね」
「短いって、どれくらい?」
「……私が知っている限り、最短で二回」
「に、二回? 二公演てこと!?」
「………うん、それで終ったこともあったよ」
今 思い出しても、あれは可哀想だった。
「何でそんなことに?」
「………まぁ、一方的な《会社都合》。候補生たちは、何も悪くなかったのに」
当時、奏良は高校生アルバイトだった。
会場の設営スタッフとして同行していたが、今でも悔しいと思う。
「あの時、私がサポートスタッフだったら、絶対にあんなふうには させなかった」
たとえ、社長と対立しようとも。
何かのカタチで、彼らのために戦ったはずだ。
「奏良さん……」
あの経験があるからこそ、奏良はサポートスタッフの存在が重要だと思って、これまで仕事をしてきたのだ。
訓練生や候補生が、大人の都合に振り回されないように。
彼らを できる限り守ってきたつもりだ。
今の自分なら――――戦える。
次はSTELLAのメンバーとして、そのチカラを発揮する番だ。
「とにかく、急に終ることもあり得るから、毎回 《これが最後》だと思ってステージを作っていこう」
「初回公演は………十一月 二十二日か」
「今日が 九月十五日。……一ヶ月は練習期間が欲しいから、十月 半ばに入ったら 《仕上げ》をして、レコーディングかな」
「オリジナル曲以外にも、あと二曲 用意するんでしたっけ?」
「そうだね、ステージで披露する曲を 二つ増やさないといけないし」
せっかく見に来てもらうのに、一曲歌ってサヨウナラ、とはできない。
約三十分の公演として、ステージでは三曲の披露が慣例だ。
「他の二曲を何にするか、それも選ばなくちゃいけないのか……」
「そうなんだけど、私からの提案があります」
二曲を決めるのは、あと少し待った方がいい。
「え、どうしてですか?」
「これは私の経験談なんだけど――――」
メインとなる曲を練習していると、自分たちのグループとしての《カラー》が出来上がってくる。
「自分たちが思う以上に、グループとして《自分たちって、こうだよね!》っていうのが出てくるのよ、不思議と」
強みも 弱みも見えてきてから、それから 残りの二曲を決めても遅くはない。
「むしろ、そうしたほうが、より自分たちに合った曲を選択できるってワケか」
「そうなの。………どう?」
「俺は賛成」
「オレも賛成。オリジナル曲に全力を注ぐ、ってしてたら、しばらく 余裕無いと思うし」
「優先すべきは、オリジナル曲ですよね!」
「僕も賛成です」
とにかく、オリジナル曲を完璧にすること。
「STELLAはヴォーカルグループだからね。歌で魅せられなきゃ、恥ずかしいでしょ?」
「………あんまり歌上手くないね、とか 間違っても言われたくありません」
「おぉ〜、春音は珍しく強気だな」
「僕だって、やるときはやる男です!」
「………お前、マジで 今言ったこと忘れるなよ?」
「な、なんですか」
「ほら、今のカメラにばっちり撮られてる」
「!」
唯織が指さした先に、空気に徹しているカメラマンスタッフが見えた。
「マジか……」
「有言実行しないと恥ずかしいぞ〜?」
「お前もだぞ、唯織」
「オレは大丈夫。デキる男だから♪」
「かっこいいッス、アニキ〜」
このプロジェクトが発足した当初、候補生たちの歩みをカメラに収め、ネット配信をする予定だった。
実は、この大型企画は《第三期》となる。
第一期、第二期、それぞれ一組がデビューを勝ち取って巣立っていき、その様子は すべてネット配信されて 大反響を呼んだ。
ルーカスは第一期からの参加者であり、春音は第二期の参加者―――敗者復活組の代表格である。
今回の第三期、落とすオーディションではなく、デビューを目的として《方向転換》したのは、前回までの反省も考慮しての会社の決定だった。
奏良自身も、夢破れて 泣き崩れる候補生たちを これ以上見たくはない。
そうして始まった第三期は、第二期からの継続メンバーが多いため、最初から 候補生一人一人の世間の《認知度》が高い。
つまり《視聴率》が取れるとテレビ局は判断したのか、『DHEドリームNEXT』という番組名を付け、毎週土曜 二十二時から全国テレビ放送が 二ヶ月前―――七月より開始となっていたのだ。
第二期までの経緯や 候補生たちのレッスン、合宿の様子まで、すでに放送済みである。ネット世代の若者だけではなく、テレビで知った年配の方や、親子で見てます、など―――幅広い世代の方々が 番組を見てくれているのだ。
DHEの公式サイトには、連日 応援のメッセージが多数寄せられており、スタッフであった時は 純粋に喜んだのだが。
まさか、自分が その見られる側になるなんて………。
本日のグループ発表の様子や、奏良が電撃加入したあたりも、順次 放送されていくのだろう。
うかつに発言できないが、カメラに気を取られ過ぎても本末転倒だ。
幸い、我が社のカメラチームは気配を消すのに長けている。黒子に徹して映像を撮り続けてくれる 素晴らしいスタッフたちに感謝して、意識せずに自然に振る舞うべきなのだ。
動物園のパンダと同じ。常に《見られている》ということは忘れて、腹を括るしかない。
「レコーディングしたら、SNSでアピールして、曲の配信を盛り上げる。曲の期待が高まったところで、初回公演を迎える。SNSをやりながら、同時にステージに向けて作り込んでいくのは、けっこう時間的に厳しいよ」
十一月 五日→ 曲のレコーディング
十一月 十五日→ SNS解禁
二十日→ オリジナル曲配信
二十二日→ 初回公演
テレビ放送だけではなく、オリジナル曲の配信、そしてSNSを使ったアピール合戦。
やることは、山積みだ。
「SNSで、何をどういうふうに発信していくかは、グループの自由だからね。STELLAとして、どういうのがいいか、それぞれアイデアを考えてきて」
「はーい」
「尊くんたちは、すでに 《Little Crown》としてインスタとかやってるから、アイデアとか浮かびやすそう」
「………まぁ、やってはいたけど」
「なんていうか、オレたちは《新入り》だったから」
先輩を差し置いて、派手なことはできない。
それに、プロの歌手として、ついていくのが精一杯だった……というのが正直なところだ。
「……じゃあ今回は、やりたいと思ったこと、派手にやろうか?」
奏良の太っ腹な発言に、唯織は驚いた。
「……いいの?」
「当たり前でしょう? アピール合戦だよ? イケメン二人が率先して カマしてくれなきゃね♪」
笑顔プラス、キュートなウインク付き。
「!」
「………」
前置きのなく飛んでくる手榴弾をくらい、年長組は片手で顔を覆った。心臓に悪い。
「………これ、無意識でやってんだよな?」
「だめだ、深く考えたら負けな気がする」
男二人は 身震いした。――――無自覚って、恐ろしい!
「?」
「ま、まぁまぁ、ボクたちは仲良しですよね! そこは他のグループに負けないところだと思います!」
キラキラ光線を垂れ流しにしている奏良に、ルーカスは抱きつく。
「なんていうかな………そうだ、家族! 家族みたいな感じ!」
「家族?」
「そう! ほら……ボクたち 年齢的にも、ちょうどいい感じに並んでいるじゃないですか」
仲間とか、そういう感じよりも もっと強い結びつき。
家族感を出していったほうが、確かに印象もいいだろう。
「見て下さい、こんな感じ?」
ルーカスが 素早くボードに書き込む。
長女:奏良
長男:唯織
次男:尊
三男:ルーカス
末っ子:春音
ホワイトボードに書かれると、本当に それが《自然》な気がしてきた。
「仲間でもあり、先輩後輩でもあるんだけど……なんか、そういう雰囲気とは違う感じするよね」
「まんま、いつもの俺たちっぽいわ」
「奏良さんは、前から ボクらみんなのお姉ちゃんだし!」
「………お姉ちゃん。そうですね、そんな感じ」
「お姉チャーン」
「………唯織くん。絶対、その言い方 馬鹿にしてるでしょ?」
思わぬ家族設定で盛り上がり、ひとしきり 騒ぎながら。
これこそが、STELLA独自の《カラー》かもしれない―――― メンバー全員が そう感じていたのである。
* * * * * * * *
歌のパート分けをする前に、まず やるべきことがある。
「自分たちの《分析表》ですか?」
配られた説明用紙を手に、ルーカスは興味津々だ。
「本来、プロデューサーがやってくれることなんだけど、私達はセルフプロデュースだからね」
自分たちで、自分たちの評価を 客観的に行わなければならない。
「長所も短所も 厳しく評価してこそ、必要な場所に配置できる。今の状態でいいから、簡単に一人ずつ 評価していこう」
それぞれの名前と、評価する《項目名》のマグネットを、順番にボードへ貼り付けていく。
あまりにも無駄のない進行の様子に、尊が ふと疑問に思う。
「奏良さん、それって いつ用意したの?」
「え? さっきだけど」
ほんの少し前。
一旦、ちょっと待ってて、と部屋を出ていった時のことだ。
過去に使用した《必要な道具》を持って来るまでに、さほど時間はかからなかった。
目的を定めた奏良は、行動に迷いがない。
「今更だけど………奏良さんて、とんでもない人だったんだ」
全力でやる。
その言葉の通り、次から次へと 休みなく《武器》を取り出してくる。
時間に余裕がないからこそ、効率重視。短時間で 話がどんどん進んでいく。
「単に 慣れてるだけだよ」
次に何がくるか 知っているから、何をすべきかもわかる。
「スタッフ歴が長いから、尊くん達よりは 裏方を知ってるだけ」
特別な事ではない。
本人は言い切るが、わかっているからとはいえ、なかなかできないことだ。
本気で覚悟を決めた。
その思いは、そのまま 行動で示される。
「リューイチさんが、奏良さんに《絶対的な信頼》を置いているのが わかった気がする」
サポートスタッフとして、それぞれが とても世話になり、頼りにしていた存在。
今後はメンバーとして――― 心強い味方となるだろう。
尊と唯織は、改めて 奏良という人物を 見直していた。
「はい、じゃあ配った紙の、項目を見ながら考えてね」
一人ずつ項目ごとに、十個を満点として 星の数で評価をしていく。数字で表すよりも★マークの方が 見た目がわかりやすい利点がある。
「じゃあ、誰からいこうかな」
「ここはデキる長男からでしょ〜」
「いいぜ、どうせ 全員やるんだし」
●唯織
ビジュアル:★★★★★★★★★★
音程:★★★★★★★★
声質:★★★★
声量:★★★★
聴かせ方:★★★★★★★★★
ハーモニー:★★★★★★★★
器用さ:★★★★★★★★
ラップ:★★★★★
バラード:★★★★★★★★★
「さすが、全般的にレベル高い」
「でも、オレは 春音みたいに 声じたいが良くないからな。声量も足りんし」
「歌うと セクシーだけど?」
「………そりゃあ、どうも」
唯織の場合、このままの状態で、全体的に精度を上げていくのがいいだろう。強いていうなら、ラップの強化だろうか。
「じゃあ順番に、次男いこう」
●尊
ビジュアル:★★★★★★★★★★
音程:★★★★★★★★
声質:★★★★★★★★
声量:★★★★★★
聴かせ方:★★★★★★
ハーモニー:★★★★★★
器用さ:★★★
ラップ:★★★★★★★★★
バラード:★★★★★★
「やるな、次男」
「当然♪ まぁ……不器用ってとこが、俺のネックだけどな。習得までに時間がかかる」
「柔軟な唯織くんに比べて、尊くんは剛っていうか、カタイ感じですよね」
その個性が 魅力的ではあるのだが、欠点にもつながる。
個性を尊重しつつ、彼もハーモニーの強化など、さらなるレベルアップが必要だといえる。
「次はルーくんね」
●ルーカス 円
ビジュアル:★★★★★★★★★★
音程:★★★★
声質:★★★★★★★
声量:★★★★★★★★★
聴かせ方:★★★★
ハーモニー:★★★★
器用さ:★★★★★★
ラップ:★★★★★★★★★
バラード:★★★★★
「ボクは、もっと歌の基礎練習を頑張ります!」
「ルーカスは 潜在能力はダントツだと思うぞ」
「声量とかヤバいですよね。日本人離れしてる」
「磨けば光る。まだ原石って感じ」
グループのハーモニーの精度を上げていくには、ルーカスを鍛える必要がありそうだ。
ステージで披露する歌い方を、魅せ方の上手な長男から学ぶといいだろう。
「はい、次は末っ子 春くん」
●春音
ビジュアル:★★★★★★★★★★
音程:★★★★★★★★
声質:★★★★★★★★★★
声量:★★★★★★
聴かせ方:★★★★
ハーモニー:★★★★
器用さ:★★★★
ラップ:★★★★
バラード:★★★★★★★★★
「偏りがあるなー」
「声質と音程はバッチリなんだけどな」
「他には無い 響く声、ですもんね」
「ただ、ルーカスと同じで、魅せる歌い方は 伸ばしていかないと。あとハーモニーか」
「大丈夫、絶対に伸びていくから」
「はい、頑張ります!」
年少組の成長が、グループにとって必要不可欠なのは明らかだ。
「………じゃあ、最後はお姉ちゃん?」
「………あ~、コレを自らやるとは……」
●奏良
ビジュアル:★★★★★★★★★★
音程:★★★★★★★★★★
声質:★★★★★★★★★
声量:★★★★★★★
聴かせ方:★★★★★★★★★★
ハーモニー:★★★★★★★★★
器用さ:★★★
ラップ:★★★★★
バラード:★★★★★★★★★
「……ウケる」
「そんなに不器用だった?」
「え!? 奏良さん器用でしょ?」
「違う、違う、めちゃくちゃ不器用よ?」
そもそも、何でも簡単にやっているわけではない。
できるようになるまで、人の倍も時間もかかる。
「仮歌の仕事をするまでに、結構しごかれたんだから」
伝説のヴォイストレーナー。
できることなら、もう一度 教わりたい。
「………★マークで見てみると、確かにわかりやすいな」
「この星を、デビューまでに増やしていかないと」
「お互い、苦手な部分をカバーし合うのも必要だよな」
さて、これをふまえて。
オリジナル曲のパート分けを、どうするのか。
「………曲のサンプルは、みんなの携帯に入ったよね?」
「入った」
「問題なし」
歌詞は、プリントして すでに配られている。
「じゃあ、ここから先は《宿題》にしよう」
「明後日に、持ち越し?」
「うん、考える時間が必要だと思うの」
いつの間にか、他のグループもミーティングを終えようとしていた。
候補生の中には 未成年者も多い。
会社として、遅い時間まで拘束して 活動させることはできなかった。
「もう、そんな時間か」
「そういえば、腹減ったわ」
ちょうど、明日は一日 休みとなる。
まずは、全員が曲の全部を 通し(フルコーラス)で歌ってくること。
「すでに、希望のパートがあるかもしれないけど」
実際の歌を見てから 決めたほうがいい。
「それから、SNSの企画も徐々に考えていこう」
「了解でーす」
「じゃあ、これで解散?」
「リーダー、何かあるかな?」
「…………みんな、お疲れ!」
「何、テキトウ過ぎない?」
「………明後日も ヨロシク!」
「………………唯織がリーダーって、大丈夫か?」
「うるせぇ、オレは腹が減った!」
「こーゆうとこがさぁ―――――」
長男と次男がもめだしたところに、三男が割って入る。
「あ、じゃあじゃあ、《決起集会》でもやりませんか!?」
決起集会という名の、食事会。
「ね、ね、そうしましょうよ!」
「グループ誕生の、記念すべき初日ですしね」
「奏良さんも! もう 行けますよね!?」
スタッフでいる場合、候補生たちとの《社外での接触》は、特定の子だけが有利になることを防止するために、DHEでは禁じられている。
節度をもって接すること。
社内で、仕事として接することを徹底されていたから、彼らと 仕事終わりにご飯を食べに行くということは、一度もしたことがない。
「これからは、できますよね!?」
「あー……そっか。うん、そうなるのかな?」
「唯織くんも、もちろん行きますよね!?」
年少組二人の、期待に満ちた目を見て。
「……さすがに、断れないよな?」
尊もニッコリ圧をかける。
ここで断ったら、人としてどうなのか―――など、面倒な説教が始まってしまうことを、唯織はよく知っていた。
怖くはないが、正直 面倒くさい。尊とは そういうヤツなのだ。
たとえ仲間といえど、仕事時間以外の付き合い―――プライベート時間を侵食されるのを、唯織は嫌う。自分の中での予定が狂うことは、彼にとってストレスでしかないのだ。
けれど、可愛い後輩を持った身として、ここで無視をすることは さすがに躊躇われる。
「………わかった、わかった。メシ行こう!」
「やったー!」
「ごーはーんー!」
「奏良さん、すぐ出れる?」
問われて、しばし考えて。
「……十分だけ、時間ほしいかな」
リューイチに簡単に報告を上げて、他のスタッフに任せることもある。
「あ、じゃあアニキたち 先に行っててくださいよ。ボク、後で 奏良さんと行きます」
「え、いいって、みんな先に行ってて」
「ダメですよ! もう外も暗いし!」
外国の血が入っている三男は、ナチュラルに紳士だ。自然にこういう事ができてしまう。
「あ……僕も残ります」
「だめ、春ぴょんは。メニュー決めるまでに時間がかかるんだから、先に行ってないと!」
「確かに。春音は決めるのおっそいよなー」
「………店、どうする? 何系 食いたい?」
「奏良さん、何食べたいですか?」
「うーん、何でもいいよ。みんなに合わせる」
「じゃあ、店着いたら 場所メールするわ」
このあと、奏良はルーカスの気遣いに感謝することになる。
一人で、夜に 社外に出る―――その意味を。
最近 平和だったからとはいえ、すっかり忘れていたのだ。